あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

10分で人の本質を見抜く方法

就職の面接や、毎年の評価の面接で、その人のいったい何がわかるのか?
そんな疑問を持つ人も多いことでしょう。

私自身多くの面接を担当してきました。
その個人的な結論ではありますが、「10分話せばわかる」と考えています。
もちろん極めてまれに、その後の話で評価が覆る場合もあります。
それでも、「長くても30分でわかる」と結論づけています。

面接否定派の方々には、様々な意見があります。
例えば大学入学に面接を活用する、という毎日新聞の報道がありましたが、否定派の方も多いですね。こんな記事とか。

「面接苦手な人は大学に入れなくなる」 国公立大学入試の「人物重視」に猛反発

http://www.j-cast.com/2013/10/11186128.html?p=1

口下手な人向けに、就職活動での面接対策についての教育やサイトがあります。それこそ星の数ほど。
口下手な人はそんな教育やサイトに頼る必要があるのでしょうか?
そもそも、対策で面接がなんとかなるでしょうか?

無理です。

もちろん、面接官側が間に合わせの人だったり、あるいは、面接の意図を理解していない場合には、対策も有効な場合があります。
(実際にはそういう場合も多いので、対策が機能することが多いのも事実ですが)

でも、ちゃんと面接の意図が明確で、基準がはっきり定まっていれば、対策には意味がありません。

面接の際の質問においては、実はちゃんとした技術があります。
質問をされる側、ではなく、する側の技術です。
代表的なものがBehavioral Event Interview、BEIと略される技法です。
これはとても単純な方法なので、質問がしやすいのです。そして嘘がつきにくい。
だから、様々な場面で用いられます。

簡単に言えば、「なぜそうしたの?」「なぜそうしたの?」「なぜそうしたの?」と延々と繰り返す質問です。
こちらの意見はまったく言いません。
3回この質問を繰り返せば、どんな嘘も馬脚をあらわします。
それでなくても面接の場では誰しもが緊張しています。3段階の嘘は誰も用意できないのです。

この方法を用いた面接には、もう一つ、むしろこちらの方が重要なのですが、大きなメリットがあります。

それは、口下手な人を救えることです。

口下手な人は緊張しやすい人です。そして意見をまとめることに時間がかかる人です。
BEIの質問では、その人が考えをまとめる間、ずっと待ちます。
そして答えたら、「なぜそうしたの?」と尋ねます。
繰り返しの中で、どんどん、本音が出てきます。

BEI、Behavioral Event Interviewと言う手法は、何がが起きたときなぜそうしたのかを聞く方法です。
しつこく繰り返される中で、どうしても本音がでてきます。
その本音は一言で良い。

例えば(ネタばらしになりますが)私が頻繁にする質問があります。

「あなたにとって、今までで一番自慢できる話をしてください。私に自慢してください」
「え?」
「自慢話ですよ。聞かせてほしいんです。この面接で、あなたの素晴らしさを理解するために」

この質問をして、言葉に詰まった人はほとんどいません。
「そうですね……自慢できることなんてないんですが……」といいながら、みんながなんらかのイベントを話してくれます。
私は質問するときに、自慢話の範囲を仕事や学業に限定しません。
恋人との話でもいい。
家族との話でもいい。
若い頃の思い出でもいい(さすがに子供の頃とかだと、『最近の話ではどんな話がありますか?』と再度尋ねますが)。

実際のところ、自慢話の中の話はどうでもいいのです。
大事なことは、なぜその話が自慢話なのか?ということを見極めることです。

あまりネタをばらしすぎるのもまずいので詳細は書ききれませんが、言いたいポイントはひとつです。

面接を担当する側がちゃんと訓練されていれば、面接はとても有効な選抜の方法になる

ということです。
その際には、口がうまいとか下手だとかは関係しません。
どこかで面接の特訓を受けたとしても、意味がありません。

だからこそ、面接をする側の教育こそがとてもとても重要なのです。


ちなみに、同一組織内ではいくら教育しても、最後に「この人には世話になったしな……」という理由で結果が修正される場合もあります。
それならむしろ、訓練された外部の人材を活用した方が良い場合も多いのです。

私自身、4万人規模のとある組織の部長昇任面接を担当していますが、今年で3年目になります。
最初の年は、その組織側も半信半疑でした。
外部面接の結果、昇任すると社内の誰しもが思っていた人たちが20%落ちました。そしてそれ以外の、絶対無理だろうと思われていた人たちが昇任しました。
2年目、その昇任の結果、組織がよくなりました。
再度外部面接が繰り返されました。
組織はさらに改善されました。
そして今年の3年目。
もう一度あるかな?と思っていると、先日、面接を依頼する連絡が来ました。

今年も面接に、真摯に取り組みたいと思います。



平康慶浩(ひらやすよしひろ)