電氣アジール日録

自称売文プロ(レタリアート)葦原骸吉(佐藤賢二)のブログ。過去の仕事の一部は「B級保存版」に再録。

2009-01-01から1年間の記事一覧

列外

0.TV『仮面ライダーディケイド』 0.映画『オールライダー対大ショッカー』 0.映画『仮面ライダーW&ディケイド ムービー大戦2010』 順位とかつけようない、寝転がって画面にポップコーン投げつけながら観るように、正しく娯楽として接した作品。

9.小説『白昼の死角』

高木彬光 著(isbn:4334739261) 今年、仕事で「戦後日本のピカレスク」を振り返ろうと思って最初に手に取った作品。

8.小説『チャイルド44』

トム・ロブ・スミス著(isbn:4102169318) スターリン時代の旧ソ連を舞台に、秘密警察の捜査官が、党の方針に逆らって連続猟奇殺人犯を追うというサスペンス。昨年「このミステリーがすごい!」2009年海外編の1位を取る前から注目していたが、今年春頃にやっ…

7.映画『意志の勝利』

監督:レニ・リーフェンシュタール 1934年のナチス党大会の記録映画。DVDも市販されておらず、ヨーロッパでは今も公式には上映をはばかれる幻の作品である。シアターN渋谷で観賞。

6.映画『ヱヴァンゲリヲン劇場版 破』

総監督:庵野秀明 見終わって劇場を出たあと、あまりの膨大な映像情報密度量のため「俺はいったい何を観たんだ?」としばらく頭の整理がつかなかった。が、自宅に帰り着く少し前「ああ、これは”人を感化する力は相互に伝播する”って話なんだ!」と気づく。

5.映画『グラン・トリノ』

監督:クリント・イーストウッド 劇中のイーストウッド演じるウォルト爺さんは時代錯誤のアウトロー気取りではなく、ちゃんと手仕事を通じて若人を教育しようとする「職人」なのが重要だ。

4.漫画『この世界の片隅に』

原作:こうの史代(asin:4575941468) 実録ではないが、2位に挙げた『二つの全体主義』の不満部分をほぼ補完してくれる作品。 女性の視点で、戦時下なお日々の食い物のことやら亭主との齟齬や嫉妬の感情やらに明け暮れる庶民の感情をただ率直を描いた本作品…

3.ゲーム『うみねこのなく頃に』

製作:07th Expansion 孤島の洋館を舞台とした連続殺人事件を描くノベルゲーム。 前作『ひぐらしのなく頃に』は、基本的には少年少女のお話で、猟奇殺人を扱いつつも、理解し合えば悪人はいないという結論だった。しかし今回は、主要登場人物の大部分は大人…

2.自叙伝『スターリンとヒットラーの軛のもとで 二つの全体主義』

マルガレーテ・ブーバー=ノイマン著(isbn:4623051331) 週刊文春に載ってた鹿島茂の紹介文で存在を知り「断固これは読まねば!」と思った一冊。 なんと、スターリン時代の旧ソ連の強制収容所とナチスの強制収容所の両方を経験して生き延びた女性の体験記。…

1.映画『イングロリアス・バスターズ』

監督:クエンティン・タランティーノ ユダヤ人を殺しまくったナチス将校とそれをあらゆる手段で狩る連合軍特殊部隊の殺し合い。つまり、か弱い女子供がただ一方的に傷つけられるというお話ではなく、いくら残虐でも後味が悪くないバイオレンス映画。

2009年最後の挨拶とか年間ベストとか

というわけで恒例となっている私的年間ベストの2009年度版です。 毎年これやってる仕事仲間の河田拓也氏(id:bakuhatugoro)と奈落一騎氏(mixiに入っている方はこちら)が先に書いてますが、今年も当方は最後に提出か。 あらかじめ述べておくと、今回は馬鹿…

権威への背伸び/スノビズムの善用

本心を言えば、わたしは1990年代以降のアニメだの漫画だのゲームだのの「批評」の文脈は好きではない。 これは以前も述べたが、要は、自分の好きな物をカッコよく小難しげに語ることで「それが好きな自分」もエラいということにしたがっているような雰囲気を…

走り書き(←覚え書きですらない)

前から思っていたこと 納豆に潰した辛子明太子を混ぜて食うとうまい。 英語の"cash"という語句の動詞としての用法には、小切手・手形を含む「現金払い」を意味する場合があるが「借金」という意味はない。事実上の「借金」を「キャッシング」と呼ぶのは和製英…

また普請中

最近すっかり月刊ブログと化しているが、とくにこの一ヵ月はほとんど仕事(と、スーパーに買い物に行ったり料理したり洗濯物を干したりゴミを出したり)しかしていない。と書くと凄く偉そうだが、要は仕事に時間がかかりすぎてるだけである(手も足も内臓も…

「匿名=客観」ではない

例によってわざと時期を外した後出しジャンケンを書く。 8月30日の衆院選での自民党大敗後、ネット世論では一見して麻生内閣支持の保守派が大多数のように見えたが世間一般ではそうではなかった、ということになった(単刀直入に言えば、一部では勝ち馬に乗…

地方の異邦人

先日、じつに小学一年生時の同窓会に呼ばれたので長野県の諏訪まで行った。 わたしは諏訪には小学校二年生の半ばまでしか住んでおらず、当時の同級生とは30年以上会っていない。それで誘いが来たのは、たまたま当時の恩師にだけは毎年、年賀状は出してたから…

某畏友の言葉「けいおん!の影響で楽器始めたアニヲタはいるけどかなめもの影響で新聞販売店住み込みバイトを始めるヤツはいまい」

ところで1989年当時、わたしの労働の現場は新聞配達だった。あ、そういや同年に逮捕された宮崎勤の実家も新聞販売店だったなあ。 そんなわけで、こんな『かなめも』は嫌だ(新聞配達員実話集)。 学生配達員として新聞販売店(専売所)に入店して三ヶ月後、…

自戒用覚え書き

何を今さらな話だが、少し前に友人から「大きな岩を先に入れないかぎり、それが入る余地は、その後二度とない」という話のコピペを教えられ、かなり身にしみた。 (原文はこちら↓) http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asks.jp/users/hiro/62143.html じつは今…

ゼロ年代の本音主義

でも、昨今じゃ日本でも「身内じゃない相手なら何をやっても、何を言ってもOK」って感覚がめっきり普及したなあ、という気がする。いや、単なる右傾化とか保守化とか差別意識の蔓延というレベルの問題ではなく。 『ゼロ年代の想像力』では、決断主義という言…

「敵は殺せ」を生む恐怖心

たまたま仕事で今度は中南米の地理と歴史に関する本をいくつか読んでいたが、マヤ・アステカ文明やインカ文明、イースター島の巨石遺跡などは、初期に入植した白人の徹底した破壊活動により、現地先住民による詳しい資料がほとんど残されていないようである…

日本の表現の自由論議はヌルいのか?

と、泰西の話を書いても、まあ日本人にはぴんと来づらい。 ところで、前回、陵辱ゲーム(レイプ物エロゲー)規制論について書いた。 この件についての佐藤亜紀女史の主張はおおむね「世の中、表現が規制されることはある。そのうえで、本気でやりたい恨性の…

偉人伝ではなく異人伝の哲学史

大和書房『萌える☆哲学入門』(isbn:4479391940)刊行。 今回、当方は「第4章 現代の哲学」の章を担当。 具体的には、科学哲学(ポパー)、現象学(フッサール、メルロ=ポンティ)、実存哲学(ハイデガー)、記号論(ソシュール)、構造主義(レヴィ=スト…

言論の自由と恥の意識再論

例によって出遅れた話だが(←本業が忙しいせいにしておく)、先月、女性をレイプするエロゲーが海外で規制された件について佐藤亜紀がブログで書いたら、案の定「表現の自由」至上主義者から袋叩きに遭ったらしい。 この手のメディア規制論議については当方…

ホモソーシャルは本当に悪か?

まあ、今や躍起になってホモソーシャル批判を言い立ててるのは、女性のフェミニストより、むしろ「僕はああいう汗臭いマッチョDQNと違うんです」って顔をすりゃ女性受けがよいと思ってる男性インテリだけじゃないのぉ? と感じる。 それを言えば『咲-Saki-』…

文系男子より趣味が男らしいかも知れない腐女子

先日、中島梓(栗本薫)の訃報が流れたのち『週刊文春』に竹宮恵子による追悼文が載っていた。論点は無論「BL・腐女子(この言葉が普及してから、やおいって言葉は衰退しつつあるな…)の元祖」世代としての栗本薫の業績だ。 竹宮いわく『私たちは戦後の男女…

関係概念としての人間

とまあ、本日は脈絡もなく書き連ねてしまったが、無理やりオチのようにまとめてみる。 人間を定義するものとしては―― 「裏とか表とか何を知っているか」より「どういう社会的ポジションにいるか」 「どんな趣味ジャンルトライブか」より「他のトライブにどう…

男女不平等

しばし前『SAPIO』が「「女尊男卑」行き過ぎていませんか?」という特集をやっていた。 まあ確かに、痴漢冤罪の横行だの女性専用車両の一方的導入はわたしもムカつく、男だけは隣の人(が女性の場合)に偶然に手が当たっても痴漢扱いなのは男性差別だろ、と…

健全なネットワークビジネス

しばし前、民主党の議員が「健全なネットワークビジネスを育てる議員連盟」とかいう珍妙な議連を作っていた。 「健全なネットワークビジネス」とは「人を殺さない原爆」ぐらいの矛盾かと思う。しかしである、五百歩譲ってそんなものありえるなら、二つの条件…

中二病(厨二病)

「中二病だと思うものを列挙するスレ」というのを見かけた。 オタクっぽい漫画やアニメや不良っぽいJ-POPミュージシャンやら、ありとあらゆる物が中二病扱いされていたが、じゃあ逆に「厨二病(中二病)じゃないもの」は何かという話になり、洋楽だの、高級…

裏

よく「○○の裏を知りつくしている」とエラそうに言いたがる奴がいるが、そーいう奴は大抵じつは「裏しか知らない」。 ネット世論では、マスコミだの政界だの芸能界だの何だのについての「裏事情」「裏情報」とやらが溢れ返っているが、そうした「裏」だけ知っ…