ようやくブローニースキャンが元通りできるようになった。 Rolleiflexの眷属はボックス型で軽量、旅カメラにはとても都合が良い。 おじゃました工房の庭の池の水面が、反射しているグラデーションが綺麗にうつりこんだ。 Rolleiflex F, Carl Zeiss Planar 1:3.5/75
手許には、2台のRolleiflex Automatがあった。それぞれZeiss TessarとSchneider Xenarの銘玉がハマっているが、Rolleiflex の銘玉を持つ名機といえば、やはりPlanar 75mm f3.5/Planar 80mm f2.8を持つを持つRolleiflex Fということになっている。実際その写りは、素晴らしい。
Rolleiflex F, Carl Zeiss Planar 1:3.5/75
撮影するときには、控えめなレンズシャッターが稼働するだけで、果たしてどれだけの画が撮れているのだろうかと思うが、毎回それはものすごい形で裏切られる。ISO160のネガフィルムを使ったため、露出計の値を頼りに、室内で適当な暗算補正をしたが、城間紅型の鮮やかな色が見事に写っていた。この場合は、ブローニーネガフィルムも褒めるべきかもしれないが、1/15以下の低速シャッターなので、やっぱりRolleiflexは素晴らしい。Rolleiflex F, Carl Zeiss Planar 1:3.5/75
首里城には久しぶりに訪れたが、首里城・歓会門のシーサーは、ブローニーフィルムの被写体として相応しい。
Rolleiflex F, Carl Zeiss Planar 1:3.5/75
フィルムスキャンは300dpiだが、これだと2G近いAPSデジカメに解像感では抜かれるが、まだ解像度を上げて情報は引き出せるし、これでも十分だなと感じる。Rolleiflex F, Carl Zeiss Planar 1:3.5/75
Rolleiflex Fはフィルムがまだ凋落の崖の手前に居た頃では、あまりにも高額で購入を諦めていた。結果的にRolleiflex Automatの二台持ちになっていた。それぞれにインストールされたレンズは、例えばモデルさんが皆、撮影側の本機カメラだと誰でも知っているPlanarほどの圧倒的なブランド価値と比べると見劣りするが、それでも素晴らしい写りをする。Rolleiflex Fは露出系内臓で、これは古い追針式セレン光電池で、やや横に張り出すのがいまいち邪魔だったり、その光取りの部分が割れやすかったりで、扱いがその分デリケートになったりする。Rolleiflex Automatの小型軽量さはやはりアドバンテージだと思う。 また、Rolleiflex Automatには得がたいアドバンテージがもう一つある。フィルム面の頭出しいわゆるオートマット機構(フィルム装填時フィルムのみの部分の厚さとフィルム&ロール紙の厚さとの僅かな違いを機械的に感知して、フィルムスタート位置を勝手に合わせてくれる)は、コストが嵩むためRolleiflex Fにはあえて搭載されなかった精緻なメカである。それに私はずっと慣れてきたため、フィルムを装填するとき、スタートマークをどこに合わせるか、作法があやふやでちょっと慌てたりした。 そんなことも有って、Rolleiflex Fは私にとってはずっと酸っぱい葡萄だったのだが、撮影してやっぱりPlanarってすげーやって思う。乳剤面に傷が入っているが、これは私が多分装填時ミスったためだと思う。Rolleiflex F, Carl Zeiss Planar 1:3.5/75
もう一台、最近使い出したブローニー版の二眼レフは、二眼レフにあって、レンズ交換が可能な稀有なシステムカメラ、海外でもプロの道具としてかなり使われていた、いや現在も主戦機として使っておられる写真家は結構おられる、Mamiya C330 S、それのリミテッドバージョンである。 正確にはMamiya C330 Special Selection という。 MamiyaレンズはSekorという名称を冠するが、ブローニー判に上手く適合したシャープさと柔らかさが程よいレンズ。使用者が限られるので、そんなに知られてないけど、線も細くて、尖った特性がない故、普通に素晴らしく撮れるレンズ。Mamiya C330 Special Selection, Mamiya SEKOR 55mm f4.5
通常、二眼レフはレンズ交換などできないし、ハマっているレンズも標準レンズの焦点距離が一般的で広角が欲しかったら、それがハマった特別オプションのボディを手に入れるとかしか手がないのだが、広角レンズが使える66判フィルムカメラとしては物凄くCPが高い。ハッセルなどの広角レンズや広角レンズ専用機体など目の玉が飛び出るものしか存在しないし、凄まじくばかでかいものになる。Mamiya C330 Special Selection, Mamiya SEKOR 55mm f4.5
この時代のリミテッドバージョンのお約束通りトカゲ皮でデコされている。まあ、真っ赤っ赤のとかが有ったりしたから、それから見ればかなり落ち着いている。Rolleiflex Fに比べると二回り以上も大きくて思いが、ヘビー級の35mm版フルサイズ一眼レフよりも、取り回しで困るほどではない。レンズシャッターの入った標準レンズは、Rolleiflexなどと同じように小さいので、ボクシーなボディと合わせて、持ち運びが億劫になるほどではない。
本機にも当然オートマット機構など無いからちゃんとスタートマークに合わせてフィルムを所定のところまで巻けばシャッターがチャージされ、フィルムがセットされる。
二眼レフの長所として、レンズシャッター機であるということから、ストロボはフルシンクロ(全てのシャッター速度でストロボが同調する)だということ。勿論、最高速はレンズシャッター機故、1/500sec.止まりだが、最新鋭のデジタル一眼でも、長時間発光ストロボという飛び道具を使わない限り、1/250sec.止まりだからとても偉いのである。 X接点ケーブルを伸ばして、サイドに有るシューにストロボをはめ込むと、まあ、戦隊物の巨大合体ロボットのような不格好さ。これはサイドから見ているわけだが、Leica CLと比べるとそのなんというか、凄まじさが分かる。スタジオポートレートなら何ら問題ないけど、これをフィールドカメラと使おうとすれば、まあ、変態だなと思う。 お団子型ストロボを着ければここまでひどくないので、これはやり過ぎに見えるが、反射板が使えるストロボの方が、まともな画が欲しい場合、使えるので。
デイライトシンクロの例。天井バウンスだったが、ちょっと光が弱かったか。影は複雑になった。ナッチの毛並みが柔らかそう。Mamiya C330 Special Selection, Mamiya SEKOR 80mm f2.8
レンズは、55mm f4.5, 80mm f2.8, 180mm f4.5。望遠には250mmなんてのも有った。レンズ交換するときには、勿論、フィルム面との間に遮光シールドを下ろせるようになっている。それが降りている時にはシャッターは下りない。弄る場所が多くて、気がついたら三重にロックが掛かって、空打ちシャッターを楽しむのはこのカメラでは、結構難しい。レンズシャッター機は、レンズにレンズシャッターが入っているので、シャッターが不調になれば、レンズごと諦めて交換してしまうという手もある。実際ややこしそうに見えるけれど、機構は単純だから、撮影を生業とする人の道具としてそれなりの歴史を刻んできた。決して趣味のカメラなんてものじゃなかったのが、Mamiyaカメラの歴史だ。
35mm判フィルム一眼レフで、レンズ情報を電子接点を介してカメラボディ側に伝えるエポックもMamiyaが早かった。二眼レフというとコンベンショナルなキャリーオーバー的な頑迷さで売っているように見えて、本機のように本気でシステムカメラを作ろうとするなど、当時にあってそれなりに、技術陣はいろいろチャレンジングなメーカーだった。 デジタル時代になって二眼レフは意味を失ってしまったが、ドイツ有名レンズブランドのSchneider-Kreuznachと提携して、プロ用の中判のデジタル一眼レフを作っていて、依然として、特異な存在感のあるメーカーだ。
このカメラが、今回、手元に来たカメラでは一番苦労した。何しろフランジの開け方がわからなかったのだ。ネットを調べまくったが、側面上部にあるノブをシフトさせるというC330の一般的な機構ではなかった。 ジャバラ式のフォーカシング機構のノブは、ベローズ動かしているみたいだし、気をつけないといけないのは、遠景になるほど蛇腹が繰り出されてレンズのF値が、目盛りより暗くなる独特の特性を持つということ。その場合の露出倍数の目安が、ファインダー右側に目盛となって現れる。 つまり開放f2.8でも、目盛りが2のところにあると、実絞りは5.6になっているので、露光計で測ったEV値からのシャッター速度はそれ相応に遅く設定する必要があるということだ。ヘリコイド繰り出しで、35mm版のフローティング式のレンズなどからは考えられない仕様だし、こういうのにこそTTL測光を着けてくれると助かるなと思いつつ、レンズシャッターだとそれは無理か、ビューレンズに同じ絞りついてないと無理だしそうなるとファインダー暗くなるしやっぱり無理だと分かる。いっそのことデジタルにしちゃえばとか、考えるところまでは一回は行った。 まあ、慣れとネガフィルムで撮影していれば、なんとかなる。 フランジの開け方が分からず、はじめの一歩のフィルム装填すらできず、困り果てたところで、本機周辺も撮影機材とされているクラシックカメラブログの方に、いきなり問い合わせしたら、心よく回答下さり、拙ブロクにも書き込みを頂いた。古き(ほんの数年前だが)良きブログ文化が、この分野まだ生きている。 ちなみに、オークションでも、マニアックなクラシックカメラについては、かなりまとまったまともな知識を必要とするのがハードルになるのか、変な出品者が入りにくく、かつても今も、とても平和だ。