スポーツバイクについては圧倒的な海外勢の商品構成に対して、日本メーカーであったブリヂストン、MIYATAやPanasonicといった老舗メーカーは劣勢となっていったのだけれど、それでも、製品、戦略を絞り生き残ってきている。Miyataも高級ロード受注みたいなことをやったけれど、海外ブランドとの販売がガチに競合する場面では活路を見出せず、それでも巨大メーカーGIANTみたいに数出すわけにはいかないから、製品は練られていて、最近はe-bikeのロードまでちゃんと出してる。日本メーカーではKhodaa Bloomといった、おしゃれブランドで高級スポーツを売り出すメーカーさえ現れて久しい。
個人的にはこのモノが売れない中、どこも善戦していると思っている。日本メーカーはホームセンターやネットショップによる中華製のシティサイクルや軽快車が飽和する中、そちら方面でも苦戦を強いられてきたけど、やはりそれなりにコストをかけてきちんとした作りのものは生き残っている。意外とちゃんとしたママチャリ買うとそれなりの値段はするのは結果だし、安くはない値段で販売していても、生き残っている。モーターアシストシティサイクルでは日本メーカーはその信頼性からよく売れているし、ということで、息子(3)の通勤用にグラベルロードを探していて、意外ではあったこのメーカーの商品に当たった。
ミヤタサイクル「フリーダムプラス」 、標準販売価格は77,000円で、ディレーラーはShimanoのSora、シフトはMicroshift社製のADVENT - 1x9 Components(ドロップバーシフター/フラットバー用トレイルトリガーシフター / サムシフター / バーエンドシフターもラインナップとShimanoであればロード系とクロスバイクで分かれているところを統合したある意味、合理的なモデル)とTektro社製のワイヤー式ディスクブレーキ。クロモリフレームで、フレームカラーはグリーンとブラックがある。 クロモリフレームのグラベルロードでこの構成は、多分どこにもないと思う。
クロモリフレーム、タイヤは700Cではなく27.5インチ(650B)のグラベルロード仕様、シングルクランク x 9Sという、今時のクロスバイクやグラベルロードをよく研究している結果みたいな構成。私のTCXは2016年モデルだけれど、翌年からシングルクランクになったので最後のダブルクランクモデル。シングルクランクの方が軽量化できるし、悪路走行前提のシクロクロス(泥道周回の競技名から;今はグラベルロードと言い換えることの方が多くなった)では、トップスピード勝負のターマック(舗装路)仕様にする必要がない。都市の適当整備の凸凹だらけの側溝、コンクリート/アスファルト走行には、純粋ロードはルートハンティングの技量と神経が必要だから、本人のコンディションが良い時だけに走れるとは限らないという意味で、ママチャリ的にラフに走れる仕様の方が通勤向きだと思っている。 MIYATAは通勤用自転車を作ってきた経験からか、チェーンの落下を最小化する二つのギアとそれに噛み合うチェーンも含めて特殊なもの。このMIYATAの特殊チェーンは、「ナローワイドチェーンリング」と呼ばれている。実際に、チャリンコ通勤仲間では、トラブル頻度が一番大きなものはパンクとチェーンの落下なのでここにMIYATAならではのアイデアが入っていることは評価している。毎日の通勤の足となると、外装式のギアチェンジだと、チェーンの落下はごくたまにしか起きないが、ケースに入った内装式のママチャリと違って、必然的に起きて、致命的なロスタイムになる。軍手は常備になる。チェーンガードをつけていたが私もチェーンの落下は数えるほどだが、ゼロではない。交換メンテや私みたいな人間は改造が常に頭にあるから独自仕様はちょっと引っかかったけど、そういう人がちょっと気になるぐらい。大抵はノーマル仕様で最後まで乗るというというこの製品としてはそれで良いのだろう。 45Cサイズのタイヤはクロスバイクの標準よりも太く、悪路用ということではなく、イレギュラーな市街地の路面状況に、ラフに扱っても対応できるということだと思う。パターンは、グラベルのものではなく、あくまでストリートのターマックだ。実は空気圧はそんなに上げなくてもよくて、それでパンクもしにくい仕様だというのはあまり知られていない。ママチャリみたいな長所を持っている。すごいよね、MIYATA。それでオリジナルはちゃんと空気抜けに弱い英式バルブではなく、フレンチバルブ仕様である。比較的低圧で使えて、減圧しにくいフレンチバルブだと、ほとんどメンテナンスフリーだ。これも今まで存在しない仕様の一つ。趣味よりも普段通勤の足として自転車を考え、ものすごく通勤として使うべき自転車がわかった人だけが、唸るものが入っている。 改造のベースモデルとしても、この伝統技術のクロモリフレームはとても良くできていて、アルミのような経年劣化破断事故を心配する必要がない。我が家にある1988年製のGIANT USAクロスバイクATX 960のとか未だにしっかりしてる。 比べるべきは、10万円に届かないグラベルロードで、一応、前後ワイヤードのメカニカルディスクブレーキだが、流石にコストダウンでShimanoではないTektro miraで、この辺のコストダウンはシフターも同様でTektroを使っている。シティサイクルメーカーらしい割り切りだけれど、私は、改造、変態バイク作りで、手持ちにあるチャリ、ほとんどオールディスクブレーキ改造を行ったので、中古のTektro miraもよく使ってきた。メカニカルディスクブレーキ自体が、輪行では、Shimanoであろうがどんなに調整した後でも、外して嵌めると、その度毎に調整が狂うので、結局、メンテが面倒で、全部油圧に変えてしまったけれど。このバイクで輪行する人はあまりいないだろうけど、輪行をやる場合の注意点だ。 ワイヤードディスクブレーキレベルだと、最新のTektroもShimanoもそんなレベルの差は感じなかった。自転車用のディスクブレーキにおいては、油圧に比べてワイヤード製の良い点は、ピストンが片減りしにくいこと。シフターもmicroSHIFT社製で、Shimanoではないが、思った以上によくできていた。ディレーラーはグラベルロードの矜持を守ってMTB系ではなくShimano製Soraが使われて9Sになってる。そうなんだ、8Sではなくて9Sなので、ディレーラーはかなり精密に動かないと使用できない。だから、この値段帯では、かなり頑張ったコンポーネントだと思う。これもかっちり動いてる。 こちらのサイトではかなり高評価で、特に販売サイドのプロにはウケたモデルという私の印象と一致している。これを紹介してくださった我がチャリンコマスターも高評価だった故にここにある。 Kakaku.comを見たら、本製品についてはロードバイクとグラベルロードの違いや概念がないレヴューがポツンと一つだけあったけれど、不用意なコンクリの凸凹や不整地や雨天時含めてロードバイクで対応できる自信のある巧者でなければ、クロスバイクかグラベルロードが通勤向きだと思う。通勤コースにもよるけど、ロードに乗り慣れていて対応能力が高くて、別に何も気にしないなら、最初からロードに乗るか、ロードのタイヤを嵌めればいいだけだと思う。私は側溝の蓋の段差もあたかも何も段差がないように並行に走っても登ったり降りたり自在なデュアルパーパス型のタイヤの性能を知ってから、市街地を夜も含めて通勤する場合は、サイドにとっかかりのブロックパターンがあって、真ん中がターマック用みたいなタイヤが大好きになってしまった。それはGiant社製のAnyroadシリーズに使われていたタイヤで知ったのだが、タイヤは、単体販売のものより、完成車の方が先に進んでいたりする。日々状況の変わる路面を夜間もストレスなしで走れるから、ロード乗りのプライドみたいなものとは全く無縁の私は、グラベルロードに乗り始めた頃から、そちら一択になっている。
私のTCXは、当初シクロクロス用のタイヤがついていて、市街地から林道を走るのにものすごく良かったのだけれど、値段がする上に林道ダウンヒルで消耗が激しくて、市街地の凹凸からグラベルまで走れるGIANTのAnyroadのタイヤを履かせている。GIANTのAnyroadは日本のような純粋ロード信奉が強力な市場では、異形過ぎて人気が全く出なかったのだけれど、本国台湾では爆発的にヒットしたと聞いている。まあ、GIANTはTOYOTAのように市場実験的な製品を出す余裕がありすぎて、X-Road(悪路も走れるロードバイクぐらいの意味)の分野が一時期、ニッチが微妙に異なる製品で溢れていたが、さすがに今はかなり整理された。Anyroadも2019年モデルを最後に消滅している。日本経済の低迷の結果なのか、今、私のモデルの後継であるTCX Advance Pro2(2023モデル)は、倍以上の値段になっている。今購入するなら、シクロクロス競技モデルより、さらに悪路走行むきのREVOLTの一番廉価なものしか買えないなと思う。同じくらいの値段なのに、私のTCXのような油圧ではないし、カーボンフレームでもない、Tektroのメカニカルディスク仕様で10kgを切らない性能のモデルだ。こちらについては、すごい値上がり感を感じてしまった。誤解のないように補足すると、今までがある程度のスポーツバイクブームに支えられていたから、安すぎたと言った方が良いだろう。 ちょっとGIANTの系列モデルが違うのだが、今、私のTCXと同じスペックのものを手に入れようとすると、もはや440,000円という販売価格のものになる。手を出せない。なお、今回この製品「Freedom Plus」については、新規開発フォーマットで、パーツの仕様と性能を考えると破格と強調しておいた方が良いと思った。
チャリンコいろいろ中古パーツで組んでいたときには、市街地含め想定外のギャップのあるところを走る場合、フロントサスに700Cかナイナーの組み合わせが一番だと思っていたが、グラベルロードの高性能カーボンフレームや、太いタイヤで市街地の段差に対応するGIANT製品の方向性と実際にそういったモデルに乗ってみて、考えが変わった。本気でMTBの不整地ダウンヒルコースを攻めるわけじゃないのなら、フロントサスいらないじゃんって思うようになった。まあ、もともとサスペンションフロントフォークでも何でもないTCXで、不整地から段差の多い市街地を走っていても何の不都合もないことを理解していたのだが。 カーボンフロントサスは、高すぎ、パーツ製品少ないからあきらめた。リジットフォークと街乗りMTB用のさらに太いタイヤ。その方が遥かに軽くなり、取り回しも楽だ。
改めて2016年モデルのTCX Advance Pro2の希少性を感じたので、久しぶりにメンテもやって、通信型のサイクルコンピュータの電池交換をして、息子とライドに出かけた。安い時に大量に購入した2032リチウム電池が手元に残っていて良かった。LEDライトもなんとなく同じ値段でバッテリーが小さくなった気もするが、いくつかストックがあったのに加えて買い足した。通勤となると電池交換ができない今の自転車用LEDライトは素晴らしく明るいけれど、帰宅時間が遅くなることを考えると、複数持ち歩く必要がある。なお、LEDライトが高周波発信をするせいで、このサイコンの通信が乱れることがわかった結果、カルト教団が被っているような「金属の帽子」をLEDライト側に被せる必要が出てくるというのも、まあ、色々やってないと分からなかった事案だ。 重量は12.6kgとあるが、実測したらもう少し重く、エントリーモデルのアルミのクロスバイクと同等ぐらい(ルック車とは違う)。まあアルミ製ロードバイクの廉価版モデルの標準的なスペックを知っている人は、ちょっと引く重さで、これがこのモデルの最大の欠点かもしれない。日本のようなロードバイク原理主義を隠さない人がうようよしている状況だと、この製品をものすごくディスってる人も想像に固くない。「重さ何キロあるの?なにそれ?ルック車?ママチャリ?」とか言って、うん、鼻で笑いそうな人がいるかも知れない。まさかそこまで重くない、良いバイクだ。ミヤタの英断を評価したい。だって、アルミフレームで作っていれば、もっと軽くなるのは子供でもわかるもの。でも多分強度を上げるためにコストは上がる。あえて、何年乗ろうがトラブルが少ないクロモリで作ってくれたことに感謝したい。
ちなみにうちは全てのバイクに、この振動センサーで点滅発光する反射板にギミックしたテールライトをつけてる。装着は研ぎ澄ましたように最低限であることが、バイクにおいては絶対的な美であり必須スタイルであるというのは、自分も理解できるのだが、全く違う目的で自転車に乗る人間も居るということで。
でも重さとセキュリティ耐久性能はトレードオフであり、強度的には、毎日の足として絶対の信頼性があるフレームに仕上がっていると思う。グラベルロードだから、いわゆるかつて出ていた研ぎ澄まされたクロモリロードよりも更に重くなるのは必然。でも、それは、スポーツバイクに比べれば重いUフレームのメーカー製シティサイクル(ママチャリ)の絶対安全性担保と同値。でも、クロモリフレームの剛性と設計のマッチングが悪くないので、乗っている感じでは、重さは感じない。っていうか、これはちょっとアルミフレームでは得られない楽しい体験だった。全然違うよ。実際の実重量がそれなりになってっしまう初級~中級のアルミ製クロスバイクに乗るより何倍もいいと思う。ロード未経験のママチャリ使用者はドロップハンドルは敷居が高そうに見えるけど、ライディングポジションも実は自由度があるというのは乗らないと理解できない。ロードの文化はママチャリを足としてきた人たちとは断絶している。適当に掴んで乗れるし、慣れたら疲れないのだというのをママチャリ乗りの人に伝えるのは難しい。そしてやっぱり巡航速度もヒルクライムも、十分体力のある世代なら何の問題にもならない。下り坂の人は金だしてカーボンの軽いのに乗ればいい。
クロモリはアルミとは違うダンシングの楽しさがあるし、ロード乗りの人も、状況次第では、通勤用セカンドバイク、普段の足にどうだろう。勝負バイクの高額ロードやカーボングラベルロードではなく、毎日の通勤で絶対ストレスたまらないと思う。
慣れるまでこんな乗りにくい者って思う段階を過ぎれば、機能的だとわかる。そういうのは通勤ママチャリ=自転車だと、経験する機会がないけれど、これはある意味、ママチャリと今の高性能スポーツバイクをつなげるものになるかもしれない。両方のユーザーは分離していて、テクノロジーも分離している。軽快車だけを自転車だと乗ってきた人たちは、私から見ると、本体重量問題含めてずいぶん自転車というものについてはギャップがある。お子さんの自転車がパンクして迎えに行って、ママチャリのあまりの重さに車の中でずらしたりしていたら、シートバックの生地を破いてしまったみたいな話は時々あるのだけれど、クイックリリースで前輪だけでも外した時の楽さは、そういうときでも全然違う。油圧じゃないから、外したときにスペーサー忘れてもトラブルにならない。ちょっとこじつけっぽいが、実際に油圧ディスクブレーキ車で、前後車輪を外したときにはスペーサーは必須。間違ってブレーキ作動させたら、力技で押し込むしかなくなるが、けっこう大変な目に合う。
追記ー最近、職場で、息子がちょっとした怪我をして、ワイフが迎えに行った。このバイク、今の軽ワゴンだと前輪クイックリバースで外して何も考えずに、乗っけて帰ってこられるし、うんしょって持ち上げてる嵩張るママチャリはどれも20kgに迫るか、超える重量がある。まともなスポーツバイクが半分程度の重さであるということの利点が活かせる場面だった。彼の手で前輪外してまたはめ込んでやっていたけどノートラブルだった。ただ、クイックリリースの締め方が甘かったので、調整はしておいた。
軽ワゴンだと人間三人載せてもこのバイクは、ママチャリではなく「普通の」スポーツバイクの範疇なので、気楽に積んで帰ってこられる。ママチャリはママチャリで利点はたくさんあるのだが、その世界はスポーツバイクの世界と断絶しているので、それを上手く享受できなかったりする。一度、両世界を結ぶチャリンコを作って姉貴分に渡したことがある。その時も車載ということが、リクエストにあって、とても考えたのだ。ルック車は総じて重く、その流れで作られた安いフォールディングバイクはもう少し軽い。それもたくさん販売されているけど、軽くて前輪だけでも外せるママチャリを作ることが、安全性や規格上いかに難しいかという話でもある。
ちなみにこの、「スタッガードじゃ間に合わない」で、ママチャリに改造したGIOSのクロスバイクは、現在、末っ子のサブバイクとして走行距離はFreedom Plusと等しいくらい、立派に実働している。通勤ママチャリに代わるスポーツバイクということなら、通常はそこはクロスバイクが担ってきているわけだが、そこにグラベルロードというカテゴリーが入るとどうなるかという実験でもある。私の勘違いかもしれないが、仕様からそういう意図も感じ取れる。MIYATAの見識と商品開発を私はかなり評価している。自分がフィールドで指導した学生さんの就職先でもあったし、なんとなく縁は感じている。 しかし改めてあちこちのメーカーのチャリンコのモデルの値段を調べたら、エントリーモデル含めて、全体的に40-50%増しぐらいで値段が上がっているのに気がついた。本製品もこのコロナ禍が起きる数年前のデフレ時代なら、6万円台で作り上げたモデルと考えるとなんとなく理解できた。物の値段は上がっている。
安いけど安物ではないし、本モデルの長所の一つはそのスタイルだろう。クロモリのストレートで削ぎ落とされたフレームは、格好良くて、おおって思う。実はこのブラックを息子が選択したことで、CanondaleのBad boyを思い出した。片持ちのアーバンクロスバイクとかで格好良過ぎで、目を引くから、盗難は多そうだ。今どきは目をつけられたバイクは、チェーンカッターと最悪軽トラで短時間で持っていかれてしまうから、それも通勤で使うバイクの性能の一部かもしれない。盗難に合わない見た目、レベルのモデルって難しい。実際に、ママチャリ風に改造したGIOSのクロスバイクの一番の意図は、駅の駐輪場に停めても、ママチャリの群れの中に溶け込んで、それに擬態できる防犯能力だ。誰もクロスバイクだって気が付かない。ママチャリのつもりで持ち上げたら、皆、軽さに驚く。
久しぶりにチャリンコを引っ張り出してメンテしたりして、こういう時、いつもチコが横で私の作業を眺めたり、構えと言ってきたり、佇んでいたのを思い出した。 本当に、自転車いじっていても大して楽しくない。作業は最低限しかする気がなくなった。あんなに作業できたのは、君がそこに居て見守ってくれていたからだったんだな。