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今年の「かわいい」
locust0138.hatenablog.com
はじめに 私はノーテンキな進歩主義者です。人類は少しずつ、一進一退を繰り返しながらも精神面で進歩し続けていると固く信じています。その根拠の一つは、街中で歩きたばこや立小便や痰吐きなどの下品な行為を見かけることが減った、というような日常の些細な感覚です。そして最大の根拠は、「命が大事にされるようになったこと」です。具体的に数値で見ると、日本における殺人事件は減り続けています。 参考:平成12年版 警察白書 平成29年版 犯罪白書 日本人は長い年月を経て、命を大事にするようになりました。言い換えれば、昔の日本人は命を大事にしない蛮族であったということです。平然と殺し合いをしていました。歴史家の言葉を引用します。 光源氏が王朝時代の貴公子の理想像であることについて、これまでのところ、その優れた容姿や豊かな才能などが取り沙汰されるのが普通であった。だが、実のところは、理不尽な暴力事件を起こさないと
はじめに 前回の記事から随分と時間が経ってしまいましたが、連載を再開します。 日本の国土は南北に長いため緯度により気候が大きく異なり、亜寒帯から亜熱帯まで多様な気候帯が存在します。さらに富士山のような高山もあるため、標高でも気候が変わります。また、森林が成立するには十分な気温と降水量が必要となります。そして日本は降水量に恵まれているため、国土のほぼ全てで森林が成立します。つまり、森林の種類を決定する最大の条件は、気温です。 今回は、日本における気候と植生の関係を解説します。 1.日本の植生の分類 日本の植生を地図で示すと、下の図のようになります。 画像出典:環境省 自然環境局 生物多様性センター 植生が緯度や標高の影響を受けていることがよくわかると思います。ここでは、日本は東西で植生が異なることに留意して下さい。以下に、各植生の特徴をごく簡単に述べます。 なお、気候は連続的に変化するため、
1.はじめに 5年前に、「奇跡のリンゴ」という映画が公開されて話題になりました。モデルとなった人物は、木村秋則という農薬も肥料も使わずにリンゴを栽培することに成功したと「自称」している青森県のリンゴ農家です。 農業ルネッサンス(Facebook) NPO法人 木村秋則自然栽培に学ぶ会 私は農業界の片隅で薄禄を食んでおります。「奇跡のリンゴ」という物語、木村氏の主張は日本農業に有害無益であると確信していたため、映画の公開当時にこのブログにて批判記事を執筆しました。木村氏の主張の問題点に関しましては過去記事をご参照ください。 「奇跡のリンゴ」という幻想 −安物の感動はいらない− 「奇跡のリンゴ」という幻想 −感動ではなく数字を− 「奇跡のリンゴ」という幻想 −印象操作− 「奇跡のリンゴ」という幻想 −印象操作(補足)− 「奇跡のリンゴ」という幻想 −無農薬のジレンマ− 「奇跡のリンゴ」という幻
はじめに 心情 私は筋金入りのエセリベラリストです。そして理系大学院博士課程を中退したエセ生物学徒でもあります。 そんな私が嫌いな言説は色々ありますが、特に嫌いなものが、保守派の連中による「デタラメな生物学に基づく性に関する説教」です。具体例を挙げると、 同性愛は自然の摂理に反している 成人した男女が結婚しないのは本能に反している 子供を持たないのは不自然だ 等々。もっとも、幸いにも私の周囲にはこのような余計なご高説を垂れる人間はいません。お陰様で優雅な独身生活を続けられております。 なかなか理解されづらいことですが、人間は類人猿の一種であり、霊長類の一種であり、哺乳類の一種であります。生物学的な存在です。したがい、人間の性の形を考える上で、自然人類学、霊長類学、動物行動学などの生物学の知識は不可欠のはずです。ところが、私は上に述べたような説教を垂れる人間が生物学を修めているという事例を寡
おじいさんは山へはばかりに行きました。野糞。 1.はじめに 今回の記事では、人間による利用と破壊が植生にどのような影響を及ぼすかを述べるわけですが、最初にその大前提として必要となる基礎知識を説明します。中学校卒業レベルの科学知識があれば理解できるような説明になっているつもりです。 (1)植生は年平均気温と年降水量で大よそ決まる 植物が生きるために必要な資源は日光と気温と水です。植物は根から吸い上げた水と、葉の気孔という微小な穴から吸収した空気中の二酸化炭素を材料とし、日光をエネルギー源として炭水化物(ブドウ糖)と酸素を造り出します。この活動を光合成と呼びます。また、気温が高すぎたり低すぎたりすると生命活動が制限を受けますので、気温はある程度の範囲内であることが必要となります。*1ところで、光の強さは専用の測定装置が必要となり、環境の指標としてあまり便利ではないことと、気温と日光には強い関係
おじいさんは山へしばかれに行きました。おじいさんはドMでした。 1.はじめに 昔話の「桃太郎」の冒頭は、「おじいさんは山へしばかりに行きました」で始まることが一般的です。では、この「しばかり」とは何を意味するのか。このネタは森林学の書籍を読むと、高い確率で出てきます。 現代の日本に生きる我々の感覚としては、「芝刈り」が容易に想像できると思います。しかし、正解は「柴刈り」です。「芝」と「柴」はどう違うのか、おじいさんはいかなる目的で「柴刈り」に行ったのか。今回の記事では、森林の利用と破壊を中心として、日本における環境問題の歴史を考えてみたいと思います。 とても1本の記事でまとめられる分量ではないので、数回に分割して掲載します。この記事では、導入と内容の整理を兼ねて、概略を示します。科学論文の冒頭に「abstract」が掲載されているようなものとお考え下さい。 なお、後の記事でも繰り返し強調し
1.はじめに 7/15(水)に、茨城県つくば市の国立環境研究所にて、公開シンポジウム「ネオニコチノイド系農薬と生物多様性〜何がどこまで分かっているか? 今後の課題は何か?」が開催されました。記事にて報告します。 実に楽しく、有意義なシンポジウムでした。しかも私は業務として参加したので、会社から交通費が出ておりました。参加費は無料でしたが。皆さんも会社の金で公然と遊べる身分を目指しましょう。 会場内での写真撮影が禁止されていたのが残念です。 講演内容は以下の通りです。 ネオニコチノイド系農薬の基礎知識 永井孝志(農業環境技術研究所) ネオニコチノイド系農薬等のハナバチ類への影響 中村 純(玉川大学) ネオニコチノイド系農薬の生態リスク評価 五箇公一(国立環境研究所) 水田におけるネオニコチノイド系農薬影響実態 日鷹一雅(愛媛大学) 私は十数年前に大学の農学部に入学し、それ以来数え切れ
京都にミネルヴァ書房という出版社があります。私は専門外なので詳しくありませんが、人文書の版元として有名なようです。 この出版社が最近『いま日本の「農」を問う』というシリーズ書籍を刊行していますので、注目しておりました。今月刊行された新刊がこちらです。 環境と共生する「農」 著者名に注目して下さい。農業に詳しい方ならば、見覚えのある名前があるはずです。 そう、株式会社 ナチュラル・ハーモニーの代表、河名秀郎氏です。この人物は非常にオカルトじみた主張、と言うよりはオカルトそのものの主張を常に行っており、はっきり言ってしまえば、農業書を書かせるべきではない人物です。トンデモ本を平気で刊行する出版社ではなく、伝統のある老舗出版社ならば、このような人物の著書を刊行してはいけません。版元としての格が下がります。農業と環境の共生、農業における環境問題ならば、日本全国にいくらでも適切な専門家がいます。なぜ
昨日(3/20)、玉川大学にて開催された、日本農薬学会第40回大会に参加しました。目的は、同大学ミツバチ科学研究センター所属の中村純教授によるネオニコチノイド系農薬の規制に関する講演です。非常に重要な内容だと思いますので、レビュー記事を書く次第です。 東京都と神奈川県の間で帰属を巡って紛争が絶えないとの噂がある地、町田市。 この大学はミツバチの研究に関して日本一です。今回の講演の会場としては最適でしょう。 日本全国から農薬メーカーと農水省の御用学者が集結する呪われた学会です(大嘘)。 発表の内容を私が勝手にまとめると、以下のようになります。 ミツバチの農薬に起因すると考えられる異常は最近初めて起こったことではない。数十年前から断続的に起こっている。 送粉者(花粉媒介者)としての能力はミツバチより野生のハナバチ類の方が重要であり、野生のハナバチが減少している。 野生のハナバチには農地周辺の餌
1.はじめに 私は純然たるノンポリ(死語)人間です。自民党も民主党も共産党も社民党も支持しません。 つい先日、政治界のトラブルメーカー、小沢一郎が農業擁護、食料自給率向上を訴えていました。 農業は食糧安全保障や自給率、地域活性化の観点から考えるべき(BLOGOS) 端的に言ってしまえば、非常にありきたりで浅薄な意見です。自民党や自由党、民主党で政権を担った政治家の見解としてはあまりに拙劣です。現実味が全くありません。言いたいことはわかりますが、ここまで論理が杜撰では呆れる他ありません。この記事を読んでいささか頭に来ましたので、批判記事を書く次第です。 2.農業擁護論の背景 小沢は自民党、自由党時代は保守のタカ派の政治家だったはずです。いつの間にやらリベラル左派のような顔をしています。また、自民党、民主党時代には原発を推進する政策を導入しましたが、いつの間にやら脱原発派のヒーローに収まってい
1.はじめに STAP細胞を巡る騒動は未だに続いています。今回は、この一連の騒動に関する私見を述べます。もっとも、私は分子生物学に関しては専門外ですので、あくまで科学の世界のルールという観点から考察します。博士課程ドロップアウト者で、論文を日本語・英語で計2報しか掲載できなかった私にその資格があるかどうかはわかりませんが。 ちなみに、論文のテーマはどちらも牛のうんこです(本当)。学会発表は口頭・ポスターで合わせて4回行いましたが、やはりテーマは全て牛のうんこでした(本当)。 参考(宣伝):うんこと食料自給率 −物質循環− 2.小保方氏本人による検証実験の是非 科学の定義は色々あるかと思いますが、「再現性」「普遍性」が重要な候補として考えられると思います。つまり、「いつでも・どこでも・誰でも」が鉄則だということです。特定の個人の手でしか起こせない、他人の手で再現できない現象は科学ではありませ
1.はじめに 日本では有機農業や無農薬農業はあまり普及していません。一方、EU諸国では有機農業や無農薬農業はある程度普及しています。また、ネオニコチノイド系農薬はEU諸国で規制が強いのに対して、日本ではそれほど厳しくは規制されていません。有機農業の普及状況について、農林水産省の資料(有機農業の推進に関する現状と課題 生産局 農産部 農業環境対策課)より作成した資料をご覧下さい。 差は歴然ですね。なぜ日本ではEU諸国に比べて有機農業や無農薬農業の普及が遅いのか。今回はそれを考えてみたいと思います。 2.自然条件 結論から先に行ってしまうと、「日本の自然環境では無農薬農業が難しいから」ということです。原因は、気温と降水量です。日本は温暖多雨のため、雑草・害虫・病原体の活動が盛んになるので、農薬に頼らざるを得ないということです。図で簡単に説明します。 これらの数字を見れば、日本の気候条件では無農
1.はじめに このブログでは、今年の1月に「かびんのつま」という化学物質過敏症を取り上げた漫画を批判しました。今回の記事はその拡大発展版です。単行本が4月末(1巻)と7月末(2巻)に刊行されましたので、まとめて読むことができました。 同作品は小学館の漫画雑誌、「ビッグコミック スペリオール」に連載されており、作者はあきやまひできという人物です。あきやま氏が化学物質過敏症の患者である妻を支える姿がノンフィクションとして描かれています。 同氏はこの作品を「世間に化学物質過敏症の存在を伝え、警鐘を鳴らすための啓蒙漫画」として制作しているようです。本人のtwitterより引用します。 「かびんのつま」はテーマも社会的なものになってきていると言うこともあり「おさなづま」以来の話題作になってほしいと思っています。 過敏症の認知がなされていくかどうか、この2巻で決まると思います。なにとぞよろしくお願いい
1.はじめに 昨年12月に、「和食」がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。 私個人は、この件に関して複雑な印象を抱いております。日本の食文化が世界的に評価されたことは喜ぶべきだと思いますが、この件が一部の偏狭な「和食原理主義者」や「食の排外主義者」に利用される可能性があるからです。 「和食」は「伝統的な日本の食文化」であると定義されていますが、これは非常に曖昧な定義です。「伝統」とは一体何でしょうか。「和食」は「伝統的」に世界に自慢できるほど豊かだったのでしょうか。今回は、「和食」と「伝統」の関係について、とある有毒植物を例として考えてみたいと思います。 2.ヒガンバナはどう利用されてきたか ヒガンバナは恐らく中国を原産地とする植物で、日本に人為的に導入されたとされています。水稲栽培の技術を有する人々の手で持ち込まれたのでしょう。水田の周りなどに群生しており
先日の記事では、オランダでは農産物の輸出の際に陸路が利用できるので、海路や空路しか利用できない日本ではオランダの真似はできないと述べました。ここがやや伝わりにくかったようですので、陸路の優位性を簡単に述べておきます。 時間のロスがない 前回述べたように、野菜や果物、花などの園芸作物では、鮮度が商品価値に決定的な影響を及ぼしますので、輸送時間は重大な条件です。 陸路の場合は、トラックで輸送することになります。農家と小売店の契約形態にもよりますが、基本的には農地から小売店までの直行便です。時間のロスはありません。 一方の海路や空路では、船舶や航空機の便の発着時間に拘束されます。海港や空港で待たされるということです。トラックならば一日中出せますが、船舶や航空機ではそうはいきません。さらに、直行便がなくどこかを経由する場合にはこの待ち時間がさらに延びます。 積み替えの回数が少ない 忘れてはいけない
1.はじめに TPPやFTAへの対策の一環として、日本の農業を輸出志向に切り替えようという提案が盛んに為されています。日本は少子高齢化の解決の見込みが全くないので、日本国内の農業市場が今後縮小することは明らかです。だから、海外への農産物輸出を増やすことで農業を振興しよう、という理屈はよくわかります。 その際、日本と同じ先進国で、狭小でありながら農産物の輸出で大きな成功を収めているオランダが目標例としてよく提示されます。 参考:オランダの農林水産業概況(農水省) オランダの農業と農産物貿易 ─強い輸出競争力の背景と日本への示唆─(農林金融) オランダ並みのトマト収穫、植物工場で都市部への安全・安定生産が実現へ【後編】(日経BP) 安倍首相も驚いたオランダ植物工場(日経ビジネスONLINE) ここで、オランダを参考とすることは妥当なのでしょうか。結論から先に行ってしまうと、技術の面では大いに参
1.はじめに 先日のちきりん氏に対する批判記事は大きな反響を得ました。嬉しい限りです。 同氏がまた何やらブログで珍妙なことを書いていたようなので、再度批判したいと思います。前回全く興味がないと書いておきながら、批判を続ける私はツンデレなのでしょうか。「か、勘違いしないでよね! 科学を愛する者として科学を冒涜する者を許せないだけなんだからね!」 2.気付いていないだけ 本日(3/2)にちきりん氏が更新したブログの内容は以下に抜粋する通りです。 客がスーパーのレジに求めるもの Chikirinの日記 スーパーのレジに並ぶ時、列の長さで判断すると失敗する。大事なのは、レジ打ちスタッフのスキル(素早さ)なので、そっちから判断するのが良。特に、新人+コーチ役の2名でやってる列は相当に早い。 客側の要素としてはこれが、列の進み具合に影響を与える二大要素なわけです レジ待ち時間に影響を与える要素は下記の
1.はじめに 私はちきりん氏という人物に全く興味がありません。せいぜい、「安っぽい人生訓を勿体ぶって切り売りしているだけの三文自己啓発屋」という程度の理解しかしていません。 そのちきりん氏がブログで科学教育について何やら語っていました。 下から7割の人のための理科&算数教育(Chikirinの日記) これを読んで大いに呆れたので、批判してみたいと思います。 2.子供の可能性を狭めるな ちきりん氏は自身の経験に基づき以下のように理科教育を語っています。 あたしに理科とか数学とか教えるの、ほんとーに時間の無駄! 義務教育である、小学校、中学校、それに事実上の義務教育である高校をあわせた 12年間の理科教育のうち、私に必要だったのは小学校レベルの理科だけであって、中学・高校で、化学、物理、生物、地学などを学ぶ必要は全くなかったと思います。 算数に関しても、中学校1年までに学んだことで十分で、中学
1.はじめに 「自然出産」と呼ばれる出産方法が良くも悪くも話題になっております。自然出産の定義は難しく、様々な方が様々な意味で用いています。敢えて私が定義するとすれば、曖昧な表現ではありますが、「医療を排除した出産」となりましょうか。よくある反近代、反科学、反医療、反理性の一環だと思います。 この自然出産の教祖、親玉とでもいうべき産科医で、吉村医院院長の吉村正氏が引退したと報道されています。自然出産や吉村医師の主張の問題点は、医療関係者を中心に多数指摘されています。 努力すれば安産できるのでしょうか?(新聞記事にツッコミ)(宋美玄オフィシャルブログ) 死は悪いことではない!?「自然出産」に違和感(宋美玄のママライフ実況中継) 「真実のお産」で本当の女に!?私はごめんです(宋美玄のママライフ実況中継) 「自然分娩」と努力至上主義(The Huffington Post Japan) 出産の「
1.はじめに 小学館の漫画雑誌、「ビッグコミック スペリオール」で、「かびんのつま」という化学物質過敏症を取り上げた漫画が連載されています。作者はあきやまひできという方です。あきやま氏が化学物質過敏症患者である妻を支える姿がノンフィクションとして描かれています。先日コンビニで何気なく雑誌を立ち読みしたら、この漫画が目に留まりました。この漫画自体は以前より知っていましたが、興味がなかったので読んだことはありませんでした。雑誌を買って初めて読んでみて、内容のダメさに驚いたので記事にします。連載を1回読んだだけで問題点がすぐにわかりました。 2.ダメな点 (1)科学的に疑問 実際の漫画は、1ページ目から突っ込みどころ満載の内容でした。 合成ゴムのスリッパを履くと、スリッパに含まれている化学物質が体内に侵入し、呼吸が苦しくなる。底が畳になっているスリッパを履くと平気だ。 「皮膚から微量の毒物が侵入
人工知能学会誌の表紙が大幅に変更され、女性型のロボットが本を読みながら掃除をしている姿が描かれています。これが女性差別だということで話題になっております。 学会誌名の変更と新しい表紙デザインのお知らせ(人工知能学会) 次の号は表紙の絵を「背中にケーブルがつながったレレレのおじさん」にすればいいと思います。故赤塚不二夫氏が率いていたフジオ・プロも協力してくれるのではないでしょうか。
「江戸しぐさ」なるヨタ話が時々話題になります。検証するまでもない下らない話だと思いますが、江戸時代をパラダイスだと信じるおめでたい(物事の自分の思い込みに都合のいい部分しか見ない)方々は少なからずいるようなので、各地で定着してしまっているようです。嘆かわしい限りです。 時計が存在しないので時間の概念があまりなく、また電話や電報などの通信手段がない時代に待ち合わせや訪問に関するマナーがはたして成立するのか。人間関係を円滑におさめるマナーがあったのならば、なぜ当の江戸っ子が「火事と喧嘩は江戸の華」などと自嘲したのか。あまりに突っ込み所が多すぎますね。 参考 「傘かしげ」「時泥棒」…今に生きる思いやり 「江戸しぐさ」道徳教材に(2006年4月7日 読売新聞東京本社) NPO法人江戸しぐさ さて、前回の記事で現代文明を批判する方々に対する疑問を提示しましたが、今回は江戸しぐさの背後に存在する江戸時
現代文明は人間にも環境にも優しくないと信じる人は多いようです。一昨年の原発事故を「人間にも環境にも優しくない現代文明の象徴」として捉え、現代文明を嫌う方がさらに増えたように感じます。今回は、現代文明は本当に環境及び人間に優しくないのかを考えてみたいと思います。 現代農業は環境に優しい 現代農業はとにかく批判されます。生産量増加・経済効率の追求のために農薬や肥料を大量に投入し、環境を汚染していると。これは間違っていません。しかし、完全に正しいかと言うと、決してそんなことはありません。 時代や地域により大きな変動はありますが、江戸時代の米の反収(1反=約10アール当たりの収穫量)は現在の3分の1程度だったようです。言い換えれば、現在と同じ量の米を江戸時代の技術を以って生産しようとすれば、現在の3倍の水田が必要となると言えます。 つまり、現代農業は面積当たりの収穫量が非常に多いため、必要な農地の
昨日(11月2日)、東京大学大学院農学生命科学研究科 食の安全研究センター主催の、「サイエンスバスツアーin福島」に参加しました。その様子を報告します。 1.写真 集合場所の、御用学者と東大話法の総本山、東京大学です。集合時間が朝6時50分というのがなかなかつらいところでした。 学会やらシンポジウムがよく開催される弥生講堂です。私は毎月1回ぐらい訪れています。 最高学府はギンナンの悪臭が漂います。 バス 最初の目的地、福島県農業総合センターです。 原発事故からの復旧技術に関する展示が行われています。 食品の放射性物質測定に関して、同センター安全農業推進部部長より説明を受けます。測定室は部外者の立ち入りが厳禁なので、説明は廊下で行われました。 分析前の試料調整です。「マリネリ容器」でどこかの常春の国を想像してしまいました。この部分はあとで詳しく説明します。 測定です。計10台あるこの測定器は
今年の夏、私の職場に怪文書が届きました。 宛先は私の部署です。私個人ではありません。私の会社は情報発信を行っているので、この文書を拡散することを期待した上での行為なのでしょう。 当然ながら差出人の名前はありません。全く同じ文書が計3枚同封されていました。 大学時代に、校舎の中でたまに怪文書を見掛けました。私の大学は奇人変人が闊歩していることで有名なので、怪文書など珍しくもありませんでした。今ではどうなっているかはわかりませんが、私の在学中には中核派や全学連、革マル派が公然と活動していました。大学の寮は時々警察の家宅捜査を受けることで有名です。 大学から逃げ出して10年近く、怪文書を見る機会は全くなくなりましたが、幸運にもその機会に恵まれました。うれしい限りです。 下の画像が実物です。本人が「拡散願います」と記述していますので、その希望をかなえてあげようと思います。 中身はよくある被害妄想、
「農家は出荷用の農産物には農薬を使うが、自家用の農産物には農薬を使わない。農薬の危険性を知っているからだ」という主張をよく見掛けます。誰が言い始めたことなのかはわかりません。しかし、現代の日本で根強く定着してしまっている言説です。twitter上でも時々見掛けます。この件について、私個人が農家や農業技術者、研究者から聞いた話を元に、私見を簡単に述べます。 農家が自家消費する農産物は、以下の2種類が考えられます。 (1)出荷用に栽培していたが、出荷できなかった農産物 (2)最初から自家用に少量栽培している農産物 地域や品目や栽培方式により割合は変動しますが、売り物にならない農産物は大量に出ますので、自家消費は(1)が多いようです。労力やコストを考えると、わざわざ売り物にならない農産物を栽培することはなかなか難しいようです。 (1)であれば、当然ながら農薬が使用されています。問題になるのは(2
1.はじめに 毎日新聞の9月12日の科学報道に関する記事が議論を呼んでいます。 参考: はてなブックマーク サイエンスカフェ:「科学者ではない」− 毎日jp(毎日新聞) 非難殺到『あなたの言っていることは、あなた以外の世界では通用しませんよ』はどう解釈するべきなのか?(togetterまとめ) サイエンスカフェ:「科学者ではない」の感想ツイート この記事に関して、思うところを述べます。 2.何が問題か この記事はあまりに問題が多く、この記事を執筆した記者本人もこの記事の公表を許可した毎日新聞も全くダメダメだと思います。およそプロの文章ではありません。 そもそも、毎日新聞は科学報道に関して大いに恥をさらしていることが既に明らかになっています。「科学記事のあり方」「科学報道のあり方」などを世に問う資格はないのです。大きな口を叩く前に社内に中学・高校レベルの科学知識を徹底すべきです。疑似科学を宣
1.はじめに 少々間が空きましたが、「奇跡のリンゴ」に対する批判を再開します。 以前も説明しましたが、木村秋則氏はとにかくリンゴに関する数字を出しません。栽培技術を評価する基準として収穫量は必須なのですが、私が調べた限りでは、「奇跡のリンゴ」の収穫量に関して、本人による具体的な説明はありません。ただし、木村氏の支持者である弘前大学教授の杉山修一博士は収量の低さを認めています。他にも、収量が低いらしいという不確実な情報はありました。 参考:すごい畑のすごい土(幻冬舎新書) 「奇跡のリンゴ」は、なぜ売れたのか〜「木村秋則」現象を追う〜(農業技術通信社) 自然栽培「奇跡のリンゴ」に学んだ畑はどうなった?(現代農業) 「奇跡のリンゴ」を収穫量の点から評価した信頼できる資料はないものかとNII論文情報ナビゲータ(CiNii)で論文を検索したところ、それらしい資料が日本土壌肥料学会の講演要旨集に掲載さ
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