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選挙戦が始まり、与党がしきりにアベノミクスの成果を喧伝する一方、ネットなどでは「アベノミクスの成果って景気の自律回復と明確に区別できるほどのものでもないよね」という声が高まっているように感じるが、これに対するアベノミクス支持派の反論で目立つのは「民主党時代も失業率は確かに下がっていたが就業者数も労働力人口も下がっており雇用回復は見かけだけのものだった。しかしアベノミクス開始以降は就業者数も労働力人口も増加に転じ、この時にはじめて真の雇用回復がなされたのだ、」というようなものである。 たしかに失業率は民主党時代からほぼ同一トレンドで下がり続けたのに対し、就業者数や労働力人口は2012年末頃に減少から増加トレンドへと転じており、タイミングだけみればアベノミクス支持派が喜んで取り上げたくなるのはわかる気がするが、その背景やデータをすこし細かく見てみるとそう簡単な話ではない事が解る。 特にこれらの
前のエントリーでは下図を示しながらアベノミクス開始後に生じた労働力人口や就業者数の減少から増加への反転について、ITバブル崩壊からの雇用回復時にも同じことが起こっており、アベノミクスが無かったら起こりえなかったとは言えないのではないかと指摘したが、ITバブル崩壊からの雇用回復時と比較して、アベノミクス期の雇用回復の特徴を上げるとすれば、それは女性の労働力人口の伸び方が力強い点にあると言える。 下図は前回示した失業率と労働力人口のグラフを男女別に分けたものとなるが、男性の労働力人口は両方の雇用回復期で減少から維持(微増)へと途中でトレンドを変えており、一方、女性の労働力人口は、ほぼ同じ時期に維持から上昇へとトレンドを変えているが、トレンド変更後の上昇の仕方がアベノミクス期の方がかなり力強いように見える。 なぜこの違いが生じたのかについては少し調べてみたが、女性の雇用にだけこれだけ強く効くよう
前回のエントリー(「アベノミクスと雇用について」)で、アベノミクスと雇用については支持者が主張するほど明確な関係が見て取れるわけではない点について書いたが、頂いたコメント等をみるに、一番肝心のポイントが伝わっていないようなので、今回は補足として、「なぜ就業者数が2012年後半から増加に転じたのがアベノミクスの明らかな成果とは必ずしも言えないのか」に絞って簡潔に論じてみたい。 当たり前であるが就業者数が増加するのは、「非就業者から就業者となった人数」が「就業者から非就業者へとなった人数」より多い時である。通常、リーマンショックのような事が起こった直後は前者が後者よりも少なくなるため就業者数は減少するが、景気が回復するとその関係はどこかの時点で逆転して就業者数は増加に転じる。この両者の関係が逆転する時点は象徴的な意味では転換点と言えるが、景気回復の途上のどこかで起こるマイルストーンというだけで
アベノミクスが期待外れな結果しか残せていないことについてはいまや多くの人々が同意する所となりつつあるが、その一方で今も「アベノミクスは成功したんだ!」と主張する人々が強調するのは雇用の改善である。しかしながらアベノミクス開始以降、雇用が改善しているのは事実であるが、失業率や求人倍率の推移をみるとアベノミクスの前後で明確なトレンドの違いは存在せず、リーマンショックからの自律回復が続いているだけとも取れる結果である。 これに対し、アベノミクス支持派の主張は、「失業率だけをみれば確かにアベノミクスの成果は見えないが、労働力人口や就業者数を見れば、アベノミクスが雇用を大きく改善したことは明らかであり、同じ失業率の改善でも民主党政権下とアベノミクス以降では中身が異なる」というものである。誰がこの主張を始めたのかはよくわからないが、ざっとネットで調べた感じでは山本博一氏の「「アベノミクスは失敗」に反論
3月に行なわれた「金融経済分析会合」におけるノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツ教授の提言については「消費税の増税は延期すべきだ」というものが繰り返し伝わってくるが、後日開示された説明資料を読むと、量的緩和・マイナス金利等の金融緩和政策に対してかなり批判的に切り込んでいることがよくわかる。 まず以下にスティグリッツ教授提出資料の金融政策関連のページとその日本語訳を示す。 Responding to the situation これらの状況への対応 Conflicting views about obvious instruments: monetary policy 理解しやすい手段に対する相反する見解 : 金融政策 Monetary policy has largely run its course 金融政策は既に十二分に実施された。 Never very effective in
原油価格については油価100ドル/バレルを超えていた2012年頃に、この価格水準は米国の量的緩和に起因するバブルではないか?というエントリーをいくつか書いた(「米国量的緩和とエネルギー・食料価格のわかりやすすぎる関係について」、「コモデティバブルはいかに起こったのか?」、「原油価格高騰と先物市場での投機の拡大の関係について」)が、その後筆者を含む多くの人々が予測した通りQE3の終了と共にバブルは崩壊し、現在では当時の数分の一の水準にまで落ち込んでしまっている。 そこで、やや今さらであるが本エントリーでは如何に原油バブルが拡大、崩壊したのかを順を追ってざっくりとまとめてみた。 まず、原油バブルの生成・拡大期に生じたことをまとめると 先進国(特に米国)による大規模な金融緩和によってジャブジャブとなった資金が投機として原油先物市場にも殺到し、バブルが発生。 米国の金融緩和と連動したドル安がバブル
軽減税率に関する議論が分かりにくい原因の一つは、その影響を論じるにあたり何と何を比較すべきか、という点で議論が錯綜している点にある。 ある人は軽減税率と現金給付を二者択一であるかのように論じるが、前回も書いた通り両者は別に二者択一でもなんでもないし、そもそも本人の収入だけでは生活が成り立たない人を軽減税率で救うことができないのは明白であり、軽減税率が採用されるとしてもそれがその他の社会保障と並立になるのは必須である。 そうであるにもかかわらず、これらが二者択一であるかのように主張される原因は、軽減税率導入に際して、導入しなかった場合のケースとの比較で必要となる財源の額が算出され、さかんに報道されている点にあると考えられる。 つまりこの財源を現金給付に使えばもっと低所得者支援になるはずだ、という論理である。 このような見方は必ずしも間違いとは言えないかもしれないが、消費税率は最終的にもっと高
与党間で最終調整が進められているらしい軽減税率については世論調査では支持が多い一方、ネットでは圧倒的に反対意見が優勢な状況になっているように見える。 軽減税率は欧米では既に多くの国で採用されており、それが故にどのような弊害が存在するかについても様々な実例があるため、反対意見が出ること自体は当然であろうが、その中には勢い余って(?)本当にそうなのか疑問に思うような反対論もかなり目立つように感じる。その中でも目立つ意見の一つは「軽減税率は金持ち優遇」というものである。 以前にも書いた通り、筆者も軽減税率がベストな低所得者支援策だとは全く思わないが、ネットでよく見かける「消費税増税反対」かつ「軽減税率反対」な人々が主張するように「消費税は逆進的」であり、同時に「軽減税率は金持ち優遇」というのはさすがにつじつまが合わないと考えざる得ない。 もちろん仮にエンゲル係数が高所得者の方が高いということであ
国内外で「アベノミクスは失敗した」との見方が多くみられるようになりつつあるなか、先日発表になった10月の完全失業率(季節調整値)は3.1%となり、1995年7月以来、約20年ぶりの低水準となった。 確かに雇用は堅調ではあるものの20年ぶりとなると、そこまで景気はいいかな?と首をかしげる人も多いのではないだろうか? 筆者はその違和感の要因の一つは右肩上がりの医療・福祉産業の就業者数にあるのではないかと考えている。本エントリーではこの辺りを幾つかのデータを示しつつ考察してみる。 まず、失業率の推移であるが、確かにリーマンショック前の最低失業率 3.6%を0.5%下回っており、2%台にとどきそうな勢いである。 この傾向は就業者数の推移にもあらわれており、労働力人口が減少する中、2012年中盤以降、少しずつではあるが増加傾向にある。 そしてその増加を牽引しているのが先に言及した医療・福祉産業、つま
クルーグマンの日本論の再考についての議論が錯綜している一つの原因はクルーグマン自身が過去にも主張を微妙に変えてきていることに加え、日本の信者が勝手に妙な論(高橋氏のみょうちくりんな貨幣数量説とか)を付け加えたこと、そしてそれをまとめて批判する人々がいることであり、はっきり言ってかなりわかりにくい。 しかし今回はかなりクルーグマン自身が「 I find it useful to approach this subject by asking how I would change what I said in my 1998 paper on the liquidity trap.」と書いているように、かなり明示的に意見を修正しているので、そのあたりを筆者なりに整理しようとしたのが、前回のエントリーであったわけだが、やはりコメントを見るとわかりにくい話だったようである。 そこでいくつかのコメン
リーマンショック後に世界中で繰り広げられた金融緩和がかなり控えめに言っても期待していたほどの効果があげられなかったことについて、推進派、否定派双方からの議論が盛り上がっているようだが、その中、推進派(特に日本のリフレ派)が教祖のような扱いをしていたクルーグマンがあっさりと梯子を外して話題になっている。 このクルーグマンの日本論の再考("Rethinking Japan")について、その意味するところを少しでも小さく見せたい一派は、「クルーグマンはもっと高いインフレ率を主張しているだけだ!」とか、「単に財政政策ももっとやれと言っているだけだ!」と強弁したりもしているようであるが、普通に読めばそのように片づけられる話ではない。 そこで本エントリーではクルーグマンの日本論再考は何を再考したのかについて少しまとめてみた。 まず1998年の有名な論文にも示されたクルーグマンのオリジナルの日本論はざっ
少し前の話となるが、「ファーストフード店の時給を1500円にしろ」デモを機に、Blogos等に幾つか面白い記事が紹介されていたが、ここでは少し違う視点でこの問題を考察してみたい。 それは「非熟練労働者の賃金水準はどのように決まるのか?」という視点である。 例えば「マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。」という記事では ■賃金は付加価値に対して支払われる。 このように考えると、時給1500円をほかの部分を何も変えずに実施したところでしわ寄せがどこかに行くだけでデメリットのほうが大きいことがわかる。時給1000円ならば雇えた人でも雇えなくなるからだ。 なぜこういうことが起きるのか。それは時給1000円の付加価値しか出せない人に1500円を払う事は企業にとってマイナスとなり、それをさけるために企業は別の手段を考えるからだ。繰り返すが解雇は規制出来ても雇用は強制できない。逆に言えば、150
黒田日銀総裁がようやく現実を認めて「2年で2%」目標を事実上撤回したわけだが、その理由として「エネルギー価格の下落」をあげた事に対し、リフレ派の高橋洋一氏がお得意の(?)データ分析を駆使して「原油価格の物価への影響はほとんど無視できる。2%が達成できなかったのは消費増税のせいだ」と批判している。(「2%インフレ目標未達」の批判は誤解で的外れ) 内容としてはあまり目新しいものがあるわけではないが、その根拠としているデータ分析が"悪い意味で"なかなか興味深いので、これをネタにしつつ異次元緩和はいかにインフレをつくりだし、なぜまたデフレに戻ろうとしているのか、について考察してみる。 まず、「原油価格の物価への影響はほとんど無視できる」の根拠として高橋氏は最近4年間におけるインフレ率と輸入原油価格の推移のグラフを示し相関がゼロであるとしているが、わざと相関が出ないようにグラフを作っているのではない
前回のエントリーで述べた 1. 安倍政権誕生前の2012年度の倒産件数もその時点では過去22年間で最低レベルだった。又、そもそも母数となる企業数自体が基本的に右肩下がりとなっている。 という部分に関し、特に「そもそも母数となる企業数自体が基本的に右肩下がりとなっている」に対して複数の方からたてつづけに「間違っている」「でたらめだ」というコメントをいただいて、少し調べてみたのでコメントへの返答をかねて確認したことを書いてみる。 まず企業数であるが、これは以下に示す通り明らかに過去20年近く右肩下がりできている。(ソース1,2) 尚、上記のデータは中小企業庁のサイトからのデータであり、ここでの全企業数の99.7%(2012年)を占める中小企業も含まれており、又その中小企業のかなりの割合が個人企業となっている。 これに対し、いただいたコメントの中には小規模な個人企業は東京商工リサーチなどの倒産統
安倍首相がアベノミクスの成果として株価以外に強調しているのは雇用と倒産件数らしく、演説などでも「倒産件数は24年間で最低」 「民主党政権時代よりも2割、倒産を減らしている」とその成果を繰り返しているようだが、この成果を考えるにあたっては少なくとも以下の三つの背景は知っておくべきであろう。 1. 安倍政権誕生前の2012年度の倒産件数もその時点では過去22年間で最低レベルだった。又、そもそも母数となる企業数自体が基本的に右肩下がりとなっている。 2. 民主党政権時代の2009-2012年の3年間も倒産件数は平均して年8%近く減少している。 3. 2012〜2013年度の倒産件数減少の内訳をみると、件数でも前年比でももっとも大きく減少したのが建設業で、これはアベノミクス第二の矢である公共事業の大盤振る舞い(2013 年度の一般会計の公共事業費決算額は 8.0 兆円で2012年度5.8 兆円と比
日本もいよいよ消費税率10%が見えてきて軽減税率導入の是非についての議論も高まってきたようであるが、ネットで見かける議論は軽減税率のデメリットについて論じているものが殆どで、そのメリットを改めて論じているものは非常に少ない気がするので、実際に軽減税率が導入されている英国に住んでいる筆者がそのメリットをどう見ているかについて少し書いてみたい。 まず、住人から見た軽減税率の効用の最大のものはやはりどう考えても食料品を始めとする生活必需品が安い(英国の場合は無税)ことである。 なにを当たり前のことを言っているんだ、と思われるかもしれないが、イギリスのように20%も消費税があると、その差は非常に大きい。この差は住んでみないとわからない!、とまでは言わないが、おそらくは多くの日本人の想像を超えているのではないかと思われる。 たとえばイギリスは2000年頃のピーク時と比べるとまだポンド安ではあるものの
本ブログではアベノミクス開始当初から、「トリクルダウン頼み」だと評価しつつ、更にそれが機能するかどうかは疑問であると懸念を呈してきた。(以下の引用内の太字は筆者) 2013-5-18 リフレ政策とトリクルダウン理論について 先日のエントリーでは「黒田日銀の異次元緩和の波及ルートはいよいよトリクルダウンルートに絞られてきた」と述べたが、現時点においてリフレ政策の実施で直接的に「富」を得ているのは所有資産の価格が上昇した資産家か円安によって収益増を果たした輸出企業であり、主要な波及ルートがこの二つを経由したものである以上、リフレ政策が「国民全体の利益となる」ルートは「トリクルダウン」ルートだという事にならざる得ない。 ただ、「トリクルダウン」ルートも簡単に達成できるわけではなく、国民全体の利益にまで繋げる為には資産家が所得効果で消費を増やしたり輸出企業が設備投資をしたりして景気が活性化し、その
7−9月のGDPが発表され市場の期待を大きく下回る結果となった。 多くのエコノミストの予想が2%、或いは3%を大きく超えるようなプラス成長であったのに対して、現実はマイナス1.6%と散々なものであったわけで、ちょっと記憶にないくらいのかい離があった。 そのかい離の原因については在庫の取り崩しが急だったこと等、既にいろいろと議論されているが、どの要因もそのかい離を埋めきるほどのものではなさそうであり、数字(-1.6%)の印象よりはマシだがエコノミストの予測には程遠い、といったところが実態のようである。 今回の指標が正しいとすれば結局のところアベノミクス(リフレ政策)による円安・株高によって市場の期待 ”だけ” は急速に醸成された一方で、現実はそれに全くついてきていなかったということであろう。 特に期待に現実が追いついてきていない筆頭は円安による波及的な景気刺激効果である。 円安による景気刺激
2014年半ば以降、原油価格の下落が著しいが、その原因についてMarketHackさんで「原油価格75ドル割れを巡る迷信 シェールが成功し過ぎているからこそ、価格崩壊が起きている」というエントリーが掲載されていた。 その概要を抜粋させてもらってざっとまとめると 原油価格(WTI)が一時75ドルを割れるほど下落したが、その原因は巷で言われているように「世界の景気が悪いから」ではなく、アメリカにおけるシェールオイルの増産が原因。 アメリカはリーマンショック後にガス価格が急落して以来シェールガスからシェールオイルへとターゲットを変えて原油生産をムチャクチャ増やしたので、輸出できない原油が国内で余ってしまった。(現在、アメリカでは付加価値をつけずに原油をそのまま輸出することは原則禁止されている=これはいずれ法案改正される見込み) 逆に世界全体で見ると原油の需要と供給のバランスはそれほど崩れておらず
米国の量的緩和が終了の見込みとなり、「量的緩和を行えばインフレリスクが高まる」という懸念はやはり杞憂だった! という主張がよく聞かれるようになってきた。 筆者も以前から量的緩和のリスクとしてインフレへの懸念を挙げていたが、これが杞憂に終わったのかどうか判断するにはまだ早いと考えている。 なぜそう考えているかを説明するには、そもそもなぜ量的緩和に高いインフレを引き起こすとリスクがあると考えていたのかを説明する必要があるが、それについては既に2013年2月の岩田規久男氏の日銀副総裁就任時のエントリー(「岩田規久男新日銀副総裁 -日本のフリードマン- は何を金融政策にもたらすのか」)に書いているので、以下にそれを抜粋してみる。 <以下2013年2月のエントリーより抜粋> 弊害については様々なものが考えられるが、その弊害の中でも分かりやすいのはインフレのリスクである。 よく「デフレ下では金融政策の
金融緩和関連(リフレ政策関連)のエントリーを書くと、リフレ派と思われる人々から批判的なコメントをいただく事が多いが、今回は「いつも間違った答を出す人」というタイトルで「自分のあずかり知らないことについて、もっともらしい語り口でデマを流し、その分野に明るくない人々を騙すことに喜びを感じているらしいブロガーが、またも間違ったことを滔々と述べております。」と始まるかなり長めのコメントをいただいた。 中身について言えば正直それほど目新しいものがあるわけではないが、今、リフレ派が現状をどう考えているかについては参考になる部分もあるので、少し考察してみた。 アベノミクス開始前は、円高とデフレが諸悪の根源であるかのように喧伝され、黒田日銀による異次元緩和による円安誘導はかなり好意的に受け止められたが、残念ながら「円安で輸出主導の景気回復!」が期待はずれだったことがはっきりしてきた。 円安で輸出量が伸びる
10月31日、黒田日銀が異次元緩和第二段を発表するとともに政府はGPIFの株の運用比率を引き上げる改革案を承認したことによって円急落&株価高騰の派手な動きを見せる事になった。 先日のエントリー(「為替トレンドはこれからどちらに向かうのか?」)では、これから円安に動くケースとして「黒田日銀が量的緩和第二段をぶちかますケース」を挙げたが、早速実現して「金融当局の動きが大きな影響を与えるような神経質な相場が当面は続きそうだ」と懸念した通りの展開となった。 今回の手筈や会見での態度を見ていると野球ファンの筆者にとっては黒田総裁の手腕は三原、仰木監督にならぶ「魔術師」と呼びたくなるほどある意味では鮮やかなものであり、先日の財政金融委員でごにょごにょ言ってた岩田副総裁辺りとは役者が違うと感心したが、そもそも野球監督ならともかく日銀総裁にとって「魔術師」的な手腕がプラスなのかどうかという点は置いておいて
クルーグマン教授がバブル崩壊以降の日銀の金融政策を痛烈に批判し続けてきた事は有名であり、「白川日銀総裁を銃殺すべき」とまで言ったとされているが、そのクルーグマン教授が「日銀に謝りたい」と言ったとかいう記事が注目を集めている。 クルーグマン教授“日本に謝りたい…” 教訓生かせぬEUのデフレ危機を嘆く ・クルーグマン教授「我々は今、日本に謝るべきだ」 クルーグマン教授は、日本の「失われた20年」は、「反面教師として、先進国経済が進むべきではない道を示してきた」とNYTに寄せたコラムで述べている。そして、自身も日本が取った政策を批判してきた一人だと記している。しかし、「我々は今、日本に謝らなければならない」と心情を告白。批判そのものは間違ってはいなかったが、認識が甘かったとしている。 それは、欧米が日本の教訓を全く生かすことなく、「起きるはずではなかった」数々の失敗を積み重ね、日本よりもさらに深
タイトルでほぼ言い尽くした感があるが、一応関連データを示しながら考察してみる。 まずいつまでたっても「円安になっても輸出が伸びず、景気も悪いままなのは水準的にまだまだ円高だからだ!円安が足りない!もっと円安を!!」と言い続けている人も多いようだが、少なくとも実質実効レートで見れば現在の為替水準はプラザ合意後の最安値圏に突入している。 しかも下図は4月までのデータなので足元ではより円安が進んでいるはずである。 「社会実情データ図録」様より(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5072.html) で、その影響であるが、当初期待された輸出拡大は大きく期待外れに終わり、むしろ交易条件の悪化、交易差損の拡大として日本経済に影を落としている。 高橋洋一氏などは「「円安で交易条件が悪化する」という人は、データも見ず、経済学的な理解もできていないことを意味する。」とか言っている
先日発表された住友商事の米国シェールオイル案件での1700億円もの損失(減損)はマーケットに大きな衝撃をもたらしたが、シェール案件での巨額の損失計上はこれが最初ではないし、おそらく最後でもないだろう。 少し調べればわかるがここ数年だけを見ても他の商社も軒並み大きな損失を計上しているし、大阪ガスも2013年に投資額の9割近い損失(290億円/投資額330億円)を出している。 この傾向は別に日本の会社だけに限ったことではなく、BP,BHP等の名だたる石油会社も大きな損失を計上している。 資源開発において大きな損失を出してしまうパターンは大きく分けて二つある。 一つは巨額の設備投資を行なった後に資源量の見積もりが過大であった、或いは資源価格の大幅な下落があった等の理由により採算が取れなくなりその投資が失敗であった事が判明する場合であり、例えば昨年石油資源開発が北海道の勇払油ガス田の開発に関連して
そもそも財政再建がなぜ必要かといえば、財政が不健全でそのままではいずれ大きな問題を引き起こす可能性が否定できないからであり、多くの場合その主な原因は過去に財政赤字を顧みずに行った財政出動(財政拡張)ということになる。 そしてなぜ過去に財政赤字を顧みずに財政出動をしてしまったのかと言えば、それが少なくとも短期的な景気対策としては非常に有効だから、というのが答になるだろう。 財政出動をケインズ流の総需要管理政策と考えれば財政出動は「有効需要不足によって非自発的失業が発生している状態」の時に行うことで乗数効果等も働いて大きな効果が期待できると考えられており、現代においてはこの政策は広く受け入れられ、多くの国で推進されている。 一方、ケインズ流の財政出動を考えるときに留意が必要であり、かつ往々にして無視されているのはそれが財政の長期にわたる維持可能性を担保するものでは全くないという点にある。 早い
最近の黒田日銀総裁による消費税についての発言は主に消費税先送りを支持する人々から色々と批判を受けているようである。 その発言の内容をざっくりまとめると 増税した場合のリスクと先送りした場合のリスクを考えると、増税して予想した以上に景気が落ち込んだということであれば、その時点で財政・金融的な措置をとって対応する事が可能であるが、確率は非常に低いであろうが、仮に先送りによって政府の財政再建に向けた決意、方針に疑念をもたれて国債価格が大きく下がったりすると財政・金融政策で対応する事が非常に難しくなる。(から先送りすべきではない) というような感じであるが、原則論で言えば日銀総裁の発言としてはかなり踏み込みすぎであるものの、発言の内容としてはある種の筋が通っており、一般的なものに過ぎないように見える。 就任早々異次元緩和をぶっぱなした黒田日銀総裁は金融政策の効果を非常に高く考えているタイプの中銀総
緊縮による財政再建について肯定的に書くと、書いてもいないことに対する批判が集まることが多いので、今回は筆者が重要と思っている点を幾つか整理して書いておきたい。 1. 殆どのケースでは緊縮は景気に対して抑圧的である。 緊縮を肯定的に書くと、「多くの国では緊縮した時に経済成長は鈍化しているからそれは間違いだ」みたいなコメントをもらうことが多いが、そのことと緊縮の是非は直接的には関係ない。 そもそも単純に考えれば緊縮が必要になるのはその前段階として借金を増やしているわけで、借金を増やして景気対策をやれば短期的には景気の下支えになるのと対で考えれば、緊縮するときに景気が抑圧されるのは当たり前と言わざる得ない。 借金を増やす時も減らす時も景気に対して拡張的なんて摩訶不思議なことは起こりようがないわけである。 その上で緊縮が長期的には経済成長にプラスになるということも別に否定されるわけではない。 たと
先日アップした「なぜイギリスは日本型の長期停滞に陥らなかったのか?」に関して午前様から以下のクルーグマンのエントリーを紹介いただいた。 緊縮の痛み,ケインジアン政策の処方 by ポール・クルーグマン http://urx.nu/bEj9 (景気過熱期以外の)財政再建を目の敵にしていて、その成功の実例など世の中にあってはならないとばかりに各方面に論陣を張っているクルーグマンらしいエントリーではあるが、その論点は イギリス政府は緊縮をたっぷりやったけれど,そのあとはさらに緊縮するのをやめた.するとそれ以後にイギリス経済は成長し始めたってことになる.これって,緊縮が実は拡張的だってことの証明になるの? 前に使った喩えをまた使うと,野球バットで頭をぶん殴り続けてからやめると,そのうち具合はよくなりはじめる.でも,だからって,野球バットで頭をぶん殴るのがいいことだって話にはならない. ということらし
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