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大そうじへの備え
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はじめに サンタクロースが赤い服を着ているとされるのは何故だろう。昔のコカ・コーラのキャンペーンのせいといった現実的な主張はひとまず忘れ,赤熱しているからという仮説を考えてみる。 このエントリではサンタクロースが単独犯である場合について考える。単騎で夜(地球の自転を加味して24時間+α)のうちに世界中の子供達にプレゼントを配り切る超越的存在はどのようなスペックを有しているだろう。 移動速度は亜光速 単独犯である場合,サンタクロースは光に近い速さで移動できると推測される。世界中に散らばった配達先を一日で廻る事は、ジェット機やロケットの速度域では到底不可能だ。 どのくらいの速度が必要かは巡回経路長が決める。15歳未満の世界人口は20億人くらいなので、プレゼントの配達先は数億ノード程度。ノードの平均間隔は,配達先が地球表面に均一に散らばっている仮定でO(1) km と推定される(地球の表面積は海
節分を前に豆の攻撃力はどのくらいが限界か考えてみる。とりあえず鬼は10mほど離れているものとする。 まず攻撃力には精神的な攻撃力と物理的な攻撃力がありそうだ。精神的な攻撃力については汚らわしさ・尊さ・惨めさ等いろいろな方向性があるがここでは考えない。純粋に物理的な攻撃力について考える。 まずは豆選び 大質量の豆ほどよい。恥ずかしながらWikipedia大先生から画像を引っ張ってくるとEntadaまだは藻玉とよばれる豆があるようだ。大きいもので70 mm程度と,砲弾サイズだ。 Wikipedia (Bart Wursten; CC BY-SA 3.0) 豆の定義や遺伝子組換えによる大質量化の可能性は脇において,この豆を使おう。 射出速度 想定するレギュレーション次第だが速いほどよい。 鬼に当たるまで豆が元型を留めることをレギュレーションに含めても,このサイズの豆なら超音速で射出しても鬼に到達
いつかくる海退期 地球史において海水面の高さは様々に変化してきた。例えば今から2万年前の海面高度は現在のそれと比べて約130m低く,日本列島は大陸とつながっていた。一方で0.6万年前は海面高度が現在より高く,埼玉は海に面していた。過去数百万年を振り返ると海面高度は100mくらい軽く変動し続けてきた。現在の海水面は温暖化により短期的には上昇傾向にあるが,気候と海が永遠でない以上,現在より低い時代はいつか来る。 海面低下によって水で隔てられた地域が次々と陸でつながっていく過程は社会に大きな影響を与えるだろう。海退がどのように進行していくかざっくりとみてみよう。 ここでは単純に現在の世界地図で海面を下げていったときの海岸線の変化のみに着目する。氷河形成や海面低下によるアイソスタシーの調節は考慮しない。減った海水は虚空に消え,大地は浮沈・摩耗・堆積のない剛体として考える。氷河形成や大氷河の麓に形成
阪大の物理の入試問題の誤りが局所的に話題になっている。 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて — 大阪大学 このたび、本学において、平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点に誤りがあったことが判明いたしました。そのため、改めて採点及び合格者判定を行い、新たに30名を合格者としました。 問題の正答について話が錯綜する中で,音波という現象の振る舞いに一部で混乱もみられるので,すこし考えを整理しておこう。 音波の反射に関する位相の扱いが難しいという感想も出ているが,QCDなどに比べれば単純な数学であり,単に慣れていないだけだろうと考えている。 まずは関係式 粗密がどうだとか変位がどうのだとか自然言語でごちゃごちゃ書いたところで混乱が深まるばかりなので,はじめに音波(微小摂動の弾性による伝搬)における各物理量
ブラックホールの衝突に伴う重力波が観測されたというニュースが世界中を駆け巡った。洞窟に残された簡素な暦にはじまる天文学3万年の歴史においても特別な瞬間だ。 今から約400年前,ガリレオが望遠鏡という発明品を使って天体観測を行い,肉眼の限界を超えた宇宙の深淵に至る扉を開いた。近代天文学の到来である。人類が知る宇宙は劇的に広くなった。 今から約100年前,可視光以外の電磁波を観測する望遠鏡がまったく異なる宇宙を人類に見せた。ブラックホール ,分子雲,星間磁場,さまざまなものに満ちた宇宙,20世紀を特徴づける全波長天文学のはじまりである。20世紀末には光子以外の粒子を使った天体観測も急速に発達した。 そしてついに究極の透過力を誇る重力波を使った新たな宇宙観測への扉が開かれた。 LIGOで観測された重力波 A. 重力波はどんなものか まず,電磁波を既知として,重力波がどのようなものか比較してみよう
理化学研究所仁科加速器研究センター超重元素研究グループの森田浩介グループディレクター(九州大学大学院理学研究院教授)を中心とする研究グループ(森田グループ)[1]が発見した「113番元素」を、国際機関が新元素であると認定しました。12月31日、国際純正・応用化学連合(IUPAC)より森田グループディレクター宛てに通知がありました。これに伴い、森田グループには発見者として新元素の命名権が与えられます。欧米諸国以外の研究グループに命名権が与えられるのは初めてです。元素周期表にアジアの国としては初めて、日本発の元素が加わります。 http://www.riken.jp/pr/press/2015/20151231_1/ 2015年12月31日に理化学研究所が発表したプレスリリースによると,森田らの研究グループが報告した「113番元素」が認められ,命名権を獲得したそうだ。元素周期表にアジア初の新元
人類の質量はどのくらいだろう。 仮に70億人x70kgで見積もったとして4.9億トン 人類の平均体重を70kgで見積もっても大きく超過することは無いだろう。人類の歴史を紐解くと700kgを超えるような個体もあるが例外的だ。世界を見渡してみると質量の小さな未成年が結構な割合をしめているし,肥満に悩まされているのは一部の先進国だ。おそらく真の平均は70kgより低い。 直径1kmの球形容器を水で満たすと約5.2億トンであり,肺の空気を抜くと人間の比重は1を超えることから,挽肉か何かにして隙間を完全に無くせば,恐らく地上にいるすべての人類は直径1kmの真球に納まるだろう。 直径1kmに納まる有機体を支えるために必要なもの 人類が2013年に消費した一次エネルギーは石油換算で127億トンで,直径3kmの球体に相当する。*1 水の年間消費量は,4兆トンくらいで直径20kmの球体に相当する。人類は農業や
午前5時,真っ暗な部屋の中で目が覚める。 記憶を頼りに,もぞもぞと部屋を明るくするリモコンを探してボタンを押す。 そういうのは21世紀の生活ではないだろう。もう映画『Back to the Future』でデロリアンがたどり着いた時代だ。未来的でなくともいいが,もっと時代にふさわしい生活がある。いちいちヒトが機械にリモコンで指示を出すのは00年代までで十分だ。 大量のリモコンをどうするか 恐らく,一般的な家庭には,エアコン,テレビ,室内灯,空気清浄機といった様々な家電に対応したリモコンが存在する。そうしたリモコンをたくさん並べて操作するのは現代的ではないが,これを解決する手段として挙げられる学習リモコンもまだ理想には遠い。学習リモコンを携帯している人は少ないし,UIが使いにくいものも多い。 スマートフォンを万能リモコンとして使うツール類はある。携帯していることが多いので学習リモコンよりやや
広島で,10分間に20mm以上,1時間に130mm,あるいは2時間で200mmに達するような猛烈な雨が降り, 多数の土砂災害が発生した。 ただ,世界を見渡すと,1分間で38mm降っただとか(2280mm/h),8分で126mm降っただとか(945mm/h),瞬間的とはいえその10倍を超えるような想像を絶する短時間強雨の記録がある。降水強度は100mm/hあたりに物理的な限界があるわけではないようだ。 世界記録を確認するため米国海洋大気庁(NOAA)のサイトを覗いてみよう。 http://www.nws.noaa.gov/oh/hdsc/record_precip/record_precip_world.html World record point precipitation measurements 時間が短いほど降水強度の記録が大きいことは当然に予想されたことだが*1,値を図1のように
メディアや他の方がいくつか報告を上げているが、土曜日に『ロボットは東大に入れるか』の講演を聞きに行ったので気づいたことなどをメモしておこう。 人工知能にとっては、センター数学よりも東大二次数学の方が解きやすいことや、図形や文の構造を理解することがどうしようもなく難しいことなど、AIと人間の違いに関するいくつかの側面を興味深く受け取った。 「人間のように思考する」といった曖昧で高すぎる目標ではなく到達度を客観的に評価しやすい入試問題をターゲットに選んだのはよい着眼点だと思う。もし2021年までに、東大入試クラスの読解力や問題処理能力を獲得したならば、技術文書を要約したり、国会答弁を自動生成したり、様々な産業応用が可能になるだろう。 模試の結果はもっと惨憺たる有り様になると思っていたが、センター試験では 387/900、2次試験は(今回は数学のみだが)合格者平均を超えるなど、予想していたより結
今回のノーベル物理学賞は大方の人に予想されたように、ヒッグス機構、あるいは特に貢献した人の名前をとってBrout-Englert-Higgs機構(以下BEH機構)に関するものだった。そのうちの一人であるBroutは残念ながら2011年に亡くなってしまったが、50年近い歳月を生き延びたEnglertとHiggsの2人が見事栄冠を勝ち取った。 「ものにはなぜ質量があるのか」という問いに対する重要な解答であり、実験的検証とその理論的な柱であるBEH機構は当然ノーベル賞に値する。 受賞自体に学術上の意味は無く、成人式のように予定された社会的通過儀礼だ。受賞したことで理論の精度が高まるわけではないし、2012年の「発見」も人間が決めた基準にすぎない。数日前と今で理論の輝きに変化はないが、それでも一区切りついたようで実に感慨深い。 標準理論:恐るべき理論の怪物 BEH機構は素粒子標準理論の重要な一角を
最近知ったことなのだが,どうも高校物理の教科書には原子核より下のすべての構造を「素粒子」としている記述があるようで困惑している。 例えば第一学習社の教科書には以下の様な記述がある。 電子,陽子,中性子などの粒子は,物質を構成する最小単位として,素粒子として呼ばれている。 陽子や中性子(核子)はクォークからなるが,素粒子と呼ばれることが多い。 第一学習社: また,啓文社啓林館の記述ではこうだ。 原子核より下の階層の粒子(核子やクォークなど)を素粒子と呼ぶ。 啓文社啓林館: 無論,「内部構造をもたずこれ以上分解できない究極の構成要素」としている教科書もある。この場合,クォーク,レプトン,ゲージ粒子,ヒッグス粒子のみが現在確認されている素粒子となる。 どうも教科書によって素粒子の定義がばらついているようだ。 研究の現場での定義 私が知る限り,陽子や中性子が素粒子と呼ばれていたのは何十年も前の話だ
鰻の危機的な状況が叫ばれて久しい。稚魚の漁獲高は激減し、絶滅すらささやかれている。その原因は様々に言われているが、禁漁ないし消費を大幅に絞るべき状況であることは言をまたない。有志が自主的に食べないだけでは不十分な状況であり、より広く強制力のある抑制が必要だ。 では具体的にどうすればいいだろう。 鰻専門店は生活のすべてがかかっているからある程度しかたないとして、コンビニやスーパーや外食チェーンといった鰻なしでも経営が成り立つ所でカジュアルに消費される分は削り落としたい。 業者あたりの扱い上限 たとえば一事業者につき販売できる鰻は年間XXXkgまでという制限を課すとどうだろう。小さな鰻屋なら問題ないが、全国チェーンで何千店舗とある業者だと一店舗あたり年間数百グラムに扱いを制限され意味のある商品展開ができなくなる。しかし鰻を扱うスタッフだけを個人事業主とするなど、抜け道があるかもしれない。 鰻取
金は化学的な腐食に強く非常な柔軟性を持った不滅の貴金属として、古くから貨幣や宝飾品として用いられて来た。現在の価格はグラムあたり3000円だが、密度が高いので扱った実感としては1ccあたり6万円というほうしっくりくる。サラリーマンの生涯賃金が100kg(5L)の金と同じぐらいというと高いのか安いのか微妙なところ。もし価格が1桁大きく生涯賃金と500ccペットボトルが等価だったらなんだか悲しくなるし、1/10の価格で1トン買えるようなら、「意外に安くね」という印象。 現在、金より高価な金属としてはプラチナが有名だ。グラム4500円といったところだが、金と違い昔から高かった訳ではない。20世紀初頭の万年筆や触媒需要として価格が数十倍に高騰するまでは、扱いも難しく使い道の無い金属だった。歴史上をみれば、古代には天から降ってきた金属(隕鉄)としてしか産出されなかった鉄が金の数倍の価格をつけていた時
Google Readerが息を引き取った。 8年10ヶ月の命、アクセスできると思ったら反応が悪くなったり、あるいはトップページにとばされたり、apiを受けつけなくなったりと、次々に生の兆候が失われていく生物みたいな死であった。 私にとってGoogle Readerはインターネットの中核だった。Google Readerを通してarXivの論文にアクセスし、知人のブログを閲覧し、大学事務の更新情報を読む。はてブなら複数のタグに属するエントリをまとめて閲覧する。Twitterのようなソーシャルに流行っているものしか集めないシステムではたりない部分に手が届くこまやかさがあった。 世界的にRSSは退潮著しく全盛期の数分の一までPVが低下しているとはいえ、こうやってGoogleに見捨てられる日がくるとは思わなかった。国内ネット大手よりはるかに末永く使えるものと考えてGoogle依存を高めつつあった
今年の東大数学が面白い。恐怖の数字連続問題だ。 次のような自然数Aが存在することを示せ。 Aは連続する3つの自然数の積 Aを10進法で表記したとき、1が連続して99回以上並ぶところがある 受験生は誘導つきだったようだけど、時間のあるはてなー諸氏には不要だろう。誘導に囚われないことで別解も見つかっている。 これをみて以下の問題を思い出した。 √2を1億桁まで10進法表示する。このときどの数字も6000万個以上連続して並ぶことはないことを示せ。 『ピーター・フランクルの中学生でも分かる大学生にも解けない数学問題集』が出典で、文字通り中学生にも問題文が理解できる良問だ。命題が正しいことも想像がつく。しかし、証明にはそれなりの模索が要求される。 あとは、この問題が面白い。 pを任意の素数、mを任意の自然数とする。このとき自然数nをうまく選べば、p^nを10進法で表したときその数字列に0が連続してm
図0. 富士山とパンスターズ彗星 パンスターズ彗星(C/2011 L4)が、おそらくその生涯でもっとも明るくかがやいている。ヤツはまだ日没直後の西空にいるので、運が良ければ(図0)のような光景を肉眼で観測できる。 図1. パンスターズ彗星の見え方 かの彗星はすでに70km/s (時速25万km) をこえて太陽系脱出速度に達しており、星図上の位置を刻々と変えている(図1)。すでに近日点を通過し、太陽系に対して露払いとなるヘラクレス座の方角に進路をとりつつある*1。あとはひんやりとした星の海にむかうだけだ。遠い未来、宇宙のどこにたどりつくか知らないが、もう太陽系には二度ともどってこない。 彗星、星の海を渡る 図2. 太陽系外縁部の構造 惑星の外縁にエッジワース・カイパーベルトと呼ばれるリングがあり(紫)、全体を包み込むようにオールト雲が存在している(暗灰色)。 彗星は氷が出来るくらい太陽から離
図0. 地球に衝突する小惑星の想像図(直径10km) 最近、ロシアの大火球で1000人以上の負傷者が出た。直後に小惑星2012 DA14が地球をニアミスするなど天が慌ただしい。 天体衝突は小さな天体でも巨大な擾乱を引き起こす。生み出された衝撃波の威力に驚いた方も多いだろう(図1)。原子爆弾と同程度のエネルギーが解放されたが、高高度で爆発したため数十キロ圏に薄まった影響で済んでいる。 居住地に落ちることは珍しいが、今回の衝突は20年に1回くらい地球のどこかで起きている。日本に限定するなら20000年に1回くらいの事象だろう。*1 図1. 爆風の強度 (上) 響き渡る衝撃波の轟音 (下) 音はないが、物を吹き飛ばして屋内に吹き込む爆風の強さがみてとれる。この風の強さから衝撃波のエネルギーを類推することが出来る。 天体衝突は流れ星から大量絶滅まで幅広いが、ハザードの規模やリスクについて大まかに触
ドラゴンクエストIXの国勢調査によると、もっとも狩られているモンスターはメタルキングだ。その数は2億匹を越え、人類の強欲によっていかに簡単に生物が絶滅させられ……という話はさておき、現代でメタルスライム族を狩るとしたらどういう手法があるだろう。 磁場 導体が強磁場を横切ると誘導電流が発生して、大きな制動が生じる。水飴で満たしたようにうごきを鈍らせることができるかもしれない。 また、強力な磁石がまかれた場所を、高速で突破しようとすれば、天空に弾き飛ばされることになる。メタルボディには不快な環境だ。 鉄のように磁石にくっつく体質な場合、捕まえるのはより簡単になる。一方、デイン系でまったくダメージを受けないことから室温超伝導体だと仮定した場合*1、別の調理法がある。 液体金属脆化 水銀やガリウムなどの液体金属は、メタルスライム族にとって猛毒になりうるだろう。身体を侵蝕しボロボロにしてしまう可能性
ひと月ほど前に流れた「負の絶対温度」のニュースに関して、興味をそそった反応をリストアップしておこう。 最初に、「永久機関が実現する!!!」みたいな反応は >/dev/null 2番目に、「負の温度がわからん」と言っている人がいる。ただ、このうち何パーセントが「正の温度」の定義を説明できるだろう。 3番目に、物理クラスターの一部だが、永久機関の実現といった誤解を打ち消すために、「レーザーの反転分布と同じ(笑)」などと、この研究の新奇性や研究グループ自体を過小評価する方々がいる。 この研究グループは、光格子を操ることにかけては世界最強クラスの実績がある。光格子における超流動Mott絶縁体転移や、量子気体顕微鏡による光格子1サイト内の原子観測といった、数々の偉業を達成している。また、多数の理論屋が在籍しており、理論面の基礎でミスを犯す可能性は低いだろう。既存体系を覆すような大発見ではないとはいえ
【告知】2012年7月4日16時(JST)に、欧州原子核研究機構CERNがヒッグス粒子探索の最新結果について記者会見をするそうです。2011年末の発表では、”大変興味をそそる示唆”がみられたため、はるかに統計を増した今回の記者会見は期待が高まります。【ヤッター】 単純に「物には質量という生来のパラメタがある」で終わらせずに、複雑怪奇な「質量の起源」を外から持ってくるのはなぜだろう。 「前者のほうがはるかにシンプルな説明だ。何のために?」そう思うかもしれない。 ところで、わかりやすい説明は難しい? A. たぶん難しい。 何かの拍子に、質量の起源やヒッグス粒子に興味をいだいて検索すると、原子炉に穴を開けてしまったかのように、よくわからないものが次から次へと吹き出してきて困惑することになる。 式で書けば数行で正確に表現できても、式を解説するには何冊も必要になる。自然言語で手短に話せばポエティック
「赤ぷよ」を模した肉まんが、『ぷよぷよまん』という商品名で23日(月)から発売になった。 「ぷよぷよまん(あかぷよ)」発売決定!! かつて地上に存在した『ぷよまん』とよばれる紅葉饅頭が、コンパイル(株)のメルトダウンと共に盛大に散華して幾星霜、ぷよまん復活計画も流れ果て、「一度は賞味しておけばよかった。今は10個入り3万円でも欲しい。」と嘆いていた頃が懐かしい。滅んだ文明を偲ばせるような中華まんだ。 ただ、その入手は「スライムまん」と比べてかなり難しいようだ。ファミマに通えば手に入る状況と異なり、該当する店舗が少ない上に、まだ入荷していないところが多いみたい。数日で全滅(全消し?)になることは無いかもしれないが、能動的に動かない限り遭遇する可能性は低い。 連鎖! ぷよは4つで一連鎖だけど、普通の肉まんをお邪魔ぷよと見立てれば、おじゃま1匹と赤ぷよ8匹の合計9匹で、こんなふうに2連鎖を作るこ
大学生の25%が日没の方角を知らないというニュースだが、私も任意の天体における東西南北の定義をちゃんと把握していないので五十歩百歩だ。金星や天王星やトリトンみたいな例を即答できない。 北の定義とは? 何人が即答できるか 金星は自転と公転が逆だ。 (A)『一般に回転体の北極は角速度ベクトルの方向(その極からみると反時計回りに見える方向)として与えられる。自転軸(北)は公転面に対して177度傾いており、北極と南極の位置が地球からみて逆立ちしている。金星で太陽は西に沈む。』という解釈 (Fig1)が私にはしっくりくる。この北の定義は公転しない浮遊惑星にも適応できる。 Fig1. 金星と地球の自転公転関係 しかし、(B)『北極は公転面に対して地球と同じ側とする。自転軸の傾きは3度であり、周期マイナス243日の逆回転をしている。金星では太陽が西から昇って東に沈む。』みたいな解釈も見た記憶がある。北を
宇宙をのぞきこんだとき、最も深い世界はどう見えるだろうか。 Hubble Ultra Deep Field ちょうど2011年のノーベル物理学賞が『宇宙の加速膨張』になったので、現在観測される宇宙の全体像について簡単に触れてみよう。例えば次のような誤解を聞くが、実際はどうなのだろう。 誤解の例 同じ大きさの物体は遠くにあるほど小さく見える。 100億光年はなれた銀河は、100億年前に100億光年離れた場所にあった。 宇宙は光速で膨張している。 宇宙が2倍になると原子の大きさも2倍になる。 A. 超遠方宇宙の概要 宇宙といえど無限の奈落ではない。夜空を見上げた視線は観測可能な宇宙の果てにつきあたる。超遠方の天体は宇宙の果てに近いほど次の性質を示す。 若い 赤い 時の流れが遅い 大きく見える 暗い A1. 遠い宇宙は若い 遠い宇宙は太古の宇宙だ。遠い宇宙から地球に光が届くのには時間がかかる。遠
すでに衆知のことだけど、CERNで生成したニュートリノビーム(CNGS beam)を使ったOPERA実験において、ニュートリノの速度vを測定したところ、真空中の光速cより有意に速いというセンセーショナルな結果が得られた。 よく分からない結果が出てあーだこーだ議論する状況は、多数の研究者が参加した大プロジェクトでもある話だが、想像以上にメディアの反響があり、あっという間に世紀の大ニュースになって驚いている。 実験の要点 実験に関して重要そうなポイントは、以下を含めた多くの方に語られてしまった後なので、あまりしゃべることがない。 光よりも速く : 大栗博司のブログ 大栗さん 科学と報道の間で (ニュートリノの速度と光の速度) : 油断するなここは戦場だ 野尻さん http://journal.mycom.co.jp/articles/2011/09/25/neutrino/index.html
地球史において星空の主役は次々といれかわっている。遠くからも見える明るい星はすぐ燃え尽きてしまうし、何十億年と寿命がある普通の星は暗くて太陽系とニアミスする一瞬だけ1等星になる。 アウストラロピテクスが地上を歩いた500万年前、ベガとアルタイルは夜空を代表する星ではなかった。いまよりずっと遠くにある微かな星だった。 織姫と彦星と太陽はそれぞれ独立に銀河を旅し*1、たまたま私たちの時代に最接近している。2つの星はかつてそうであったように遠い未来には天の川の微かな一粒へと溶ける。ベガとアルタイルの最後の地を地球から肉眼で見届ける者はいない。 Hubble Space Telescope による夏の大三角形:やや左上がベガ(織姫)、中央下がアルタイル(彦星)、左下がデネブ 織姫と彦星は後者が4倍くらい長く生きる。それぞれ6億年と24億年くらい。彦星の寿命を80歳とすると、織姫の寿命は20歳、天の
中性子爆弾は水爆や原爆に次いで(日本では?)引用される弾頭のひとつだ。しかし、それがどのようなものなのか世間では漠然としていて正確なイメージが確立していない。中性子爆弾に言及する文章などでも「建物や兵器は無傷で残るが中にいる人間は放射線ですべて死亡する。」などというポエティックな表現がよく用いられる。流布する情報の希薄さ故か、仮想戦記などでも中性子爆弾を選択することが合目的でない場面でも平気で用いられ、ありえない描写が普通になされる。 中性子爆弾 中性子爆弾は水素爆弾の一種だ。ただし、出力は通常の水爆よりも遥かに小さく、通常原爆よりも抑えられている。そのかわり、相対的に放射線のエネルギー割合が増大するよう設計されている。正確にはER (Enhanced Radiation)とよばれており、「放射線強化型」という直訳が実態をよく表している。爆発エネルギーを広島原爆より抑えつつ、放射線を広島原
同じ質量の綿と鉄はどちらが重いか。 この問題は簡単ではない。どんな質量の綿や鉄を想定するかによって答えは違う。例えば、1000億太陽質量の鉄と綿だったら両者とも即座にブラックホールだ。両者の終状態はほとんど変わらない。ブラックホールは元の天体が持っていた個性をベリベリと引き剥がしてしまう。 では、もっと質量を減らして1億地球質量だったらどうか。 1億地球質量の綿と1億地球質量の鉄、どちらが重い? だいたい恒星質量の上限域に相当する。300太陽質量だ。 綿は自己重力で潰れていき、位置エネルギーの解放によってどんどん温度を上げる。中心部の温度は100万Kを超え水素の核融合が起こる。巨大な赤ちゃん星の誕生だ。莫大なエネルギーが発生し物質が宇宙空間に激しく流出する。ただし、綿は質量の大部分を炭素と酸素が占めており、恒星と白色矮星の中間のような組成だ。わずかな水素を使い果たすまでは延命すると予想はし
1998年にアメリカ、オレゴン州の東部で発見されたキシメジ科のキノコ、オニナラタケ(Armillaria ostoyae)の菌床は、総面積8.9平方キロメートル(890万平方メートル)に及び、推定重量はおよそ600t。推定年齢は約2400歳ということです。 確かに菌類は明確な寿命もないし、条件次第では大きく成長します。だから半径数十〜百メートル程度のコロニーは珍しくもないのですが、よくこんな山一つ覆い尽くすほどの大きさにまで成長したものだと思います。 世界最大の生物::幻影随想より アフリカゾウ < シロナガスクジラ < セコイア杉 <<< オニナラタケ(キノコ) 世界最大の生物個体というと「竹」が候補にあがることがある。地下茎を伸ばして次々と芽をだし巨大な竹林を形成する生物。1個体あたりの大きさ(竹やぶ全体が単一個体だったりすることもある)もさることながら、成長速度も恐ろしいものがある。
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