配信者や視聴者同士でたわいもない会話をするのが楽しくて、あまりチャットに参加してこなかった私でもその居心地の良さを感じていた。
そんな平和なチャット欄だったはずなのに、いつの間にかチャット以外のところでギスギスし始めた。
配信者のファンだけを募ったLINEのオープンチャットで、どうやらひと騒動あったようだ。
その予兆は数日前に既にあった。
Twitterの私のTLに、フォロワー以外の愚痴が流れてきた。その愚痴はなぜか()付だった。
ある特定の人物が送るスパチャの文言が気に喰わない。平たく言えばそんな内容だった。
書いてあった愚痴の詳細は省くが、スパチャの送り主は容易に想像できた。
配信者を身内ネタでイジるのが定番化してきたスパチャの流れに、配信者からのファンサを求めるスパチャを送る視聴者が出てきたのだ。
配信者は送られてきたスパチャを全部読む人で、最近は長文のスパチャラッシュを読み上げるのに結構な時間を要する配信も多くなっていった。
その度に配信の本来の進行はストップされるが、視聴者はみんな自分のスパチャを読まれたいので、文句を言うことは無かった。
それが、今になって一部のスパチャだけを責めるような愚痴が流れてきたのだ。
その()付ツイートはリプライが何個も付いており、開いてみるとそこには賛同したアカウントが軒並み()を付けてヒソヒソ話の呈を守って盛り上がっていた。
ヒソヒソ話の呈を作っておいて、どこもヒソヒソしていないその呟きに気味悪さを感じた。
加え、「そんなに目くじら立てる話か?」とも思った。
配信を楽しみたい。配信者とお近づきになりたいと思う視聴者はいくらでもいて、そのアプローチの仕方は千差万別の筈だ。
過去にも、配信者に絡むようなスパチャはあり、その内容に比べると、ファンサなんてまだ可愛いもののように思えた。
それに、配信者は容認して一つ一つ平等にスパチャを読んでいるというのに、なぜその方針にではなく、送ってきた人を責めるのか。
そもそも、身内ネタでイジる流れも、最近しつこくなりすぎていて、私はあまり好きではなかった。
チャット常連にしか分からないようなノリのスパチャが延々と続き、一時間も進行をせき止めるようなことがあったばかりだったのだ。
正直その光景に私はドン引いていたが、配信者が楽しそうだったので文句を言うことでもないと思った。
スパチャを送れば他の視聴者が気分を害してもいいのかよとは、私の意見で、それはファンサ要求勢にも身内ノリ勢にもどちらに対しても思っていた。
しかし、そもそも配信者が資金的な支援をする人を贔屓することは当たり前なのだから、それを一視聴者が目くじら立てることでもないと思っていたのだ。
そう思っているのは私だけだったようで、ひと騒動あったのは、その数日後の事だった。
Twitterにはオープンチャットが荒れていることを嘆く呟きが目立つようになった。例に漏れず()付だった。
ファン同士のイザコザを避け、極力視聴者とは関わらないようにしていたが、フォロワーからのいいねで流れてきた。
どうやらオープンチャットは泥沼で、少数が衝突し火が付いたところに別の人達が次々に油を注いでいったようだった。
()のなかの呟きは、切に火消しを望んでいるような、切迫した者も出てき始めた。
配信者はとツイッターのアカウントを持っていて、ファンアートの存在もよく知っていた。
私は()付の呟きたちを見て、呆れと怒りとが混ざったような気持ちが渦巻いていた。
()付の連中が余りにも身勝手だと思った。普段、配信では楽しいチャットにしたいと言っておきながら、配信者が見ているかもしれない場所で、平気で問題が起きていることを報告しているのだ。
実名を出さなけれないいという話ではない。ファンアートを特定されているということはそのアカウントも特定されているわけで、見られていない確証はない筈なのに、「私たち、ファン同士でギスギスしてます」と、こうも簡単に公言できてしまうファンたちがとても気持ち悪いものに見えた。
()付けてるのは、配信者に対する負い目なのか、それとも配信者に閲覧注意とでも言っているつもりなのか。
見て欲しくないなら見えないところでやれよ。
私は、感情のままにその旨をぶちまけた。ただ、ごく少数のフォロワーしかいない私の声がその大勢に届くわけもなく、寧ろ拡散もされることも無かった。
「私は視聴者の皆さんと仲良くチャットがしたいので、これからもよろしくお願いします」
その一言を読んで、私は腹の底からドス黒い感情が湧き上がってくるのを感じた。
自分達で騒動を引き起こしておいて、仲良くしたいとはどういうことなのか。それをいいねして更に拡散していく視聴者たちの感性を異質だと感じるのは私だけなのか。
私は考えるのを止め、ツイッターのアカウントを消した。数日前にスパチャを送ったばかりだったが、配信者のチャンネルも登録からそっと外した。
視聴者の振る舞いに一番不満を持っていたのは私だった。そして、その振る舞いを野放しにしている配信者のことも、私は嫌いになろうとしていた。
嫌いという感情を原動力にアンチとして生きるのはあまりにも惨めなので、もうすっぱり忘れて別の事に楽しみを見出そう。今ではそう考えている。
ただ、そっと離れるだけなのは尺だったので、この不満だけは吐きだしたくて増田に投稿することにした。
解除する前に見たチャンネル登録者数はこの数か月間停滞中。寧ろ、一周年の頃に比べると減少傾向にある。
もっと激減して配信者がこの問題に気付けばいいとも思うし、何も気づかずに表面上の登録者数だけ見て喜んでいればいいとも思った。