久しぶりにコナンの映画を見てみたら、安室透がスマートフォンのタッチパネルで爆弾の起爆スイッチを押していた。極めて慎重にセッティングされた爆弾を、緊張の面持ちで、つめたいガラスの画面に親指を軽く押しつけていた。
軽くタッチパネルの硝子に触れただけで、その爆弾はスマートフォンから送られた着信を受信し、爆発したのである。
この文章を読んで何がなんだか分からない方は2018年に公開された『ゼロの執行人』をレンタルかBDを購入して観て頂くとして、ともかく、その起爆スイッチを押すシーンというのは、私の中ではこの映画の中では三本指に数えられるほどに印象的なシーンだった。
もちろん、20年も前に始まった漫画のキャラクターがスマートフォンを使っている事に驚いているわけではない。最近原作を一から読んでいるけれど、巻が進むにつれ新しい概念を取り入れている大変面白い作品である。
では何故印象に残っているというか、一種衝撃を受けてしまったのかと言えば、それは起爆スイッチがスマートフォンだったからに外ならない。爆弾の起爆装置を起動させるための中継器が携帯電話なのはよくある話だが、それがスマートフォンになったところでふーんという感じである。携帯界隈の世代交代というほかない。
しかし、しかしだ。爆弾を起爆させるという、そんな重大なスイッチを、誤タッチの危険性があるスマートフォンでいいのだろうか、という心配が過ぎってしまったのである。
そもそも静電式タッチパネルというパネルは、文章を打つという観点からすると非常にいけすかないパネルである。まず文字を打ったという実感がない。決定ボタンを押しても、サイトのボタンがちゃんとタップできているかわからない。リンクが切り替わってやっと「押した」という実感がやってくる。
文章を打っているときはふよふよとしたキーボードというか最早シートのようなアルファベットが、指を当てる度に浮かび上がったり沈んだりというアニメーションを繰り返すけれど、だからといって指にキーボードを打ったときのような打鍵感は伝わらない。平面の板を指でつついているだけである。これでは指の方が変形してしまう。このふわっとした文字うち感覚がどうにも耐えきれず、私はポメラを購入せざるを得なかったし、パソコンを手放せなかったというわけである。
それでもスマートフォンの方が画質は良いし、画面が広いので横書きにしろ縦書きにしろ文章が読みやすいのである。ホームページも見やすい。そう、『観る』というツールとしては大変優秀なのが、画面だけがすべてみたいな、スマートフォンさんという機械なのだ。
それでもやっぱり、スマートフォンで起爆スイッチを押すのはどうなんだ、と思ってしまうのである。
これは安室さんに限ったことでは無く、スマートフォンというかタッチパネルを使ったどんなシステムにも抱く感情なのかもしれない。しかし、頭では確実性はタッチパネルの方が高いと言うことは理解しているのだ。それでも物理ボタンを頼った方が良いのでは無いか、と思ってしまうのは、最早ボタンレスが普通になりつつある現代に対して私が発症した適応障害じみたなにかなのかもしれない。
SFの世界に限ったことでは無く、現在でも様々な入力機械にタッチパネル(静電式)は使われている。
ボタン式の起爆スイッチ(なんかもうこの言葉だけで頭がおかしい気がしてならないのだが)の方が、構造上中継する部品が多い分故障や接続不良の危険性を孕んでいる。それを鑑みれば、やはり起爆スイッチは感度抜群のスマートフォンの画面をタッチする方が理に適っていると言える。間違ってスイッチをタップしてしまい誤爆することはあっても、起爆信号の正確性を考えれば、タッチパネルに何のクッションも挟まず触れてしまう方が、よっぽど確実である。絶対に爆発することができる。
それでも私はボタンの方がいいなと思ってしまうのだ。そんな軽々しい起爆スイッチで大丈夫かと思ってしまうのだ。この感覚が、私がボタンにたいして全幅の信頼を寄せているからなのか、ボタンを押すという実感がなければならないという強迫観念なのか。
あの触感のはかなさに反して、その先に起こる爆発という非常に重たい現象があり、それがコナンたちの命運をかけた一場面だと思うと、宙に浮いたような不安感がただようのだ。
そんなことを深夜に思いつき、こうして書き作っていた。
おわり。
2019年にもなってタプティックエンジンによる触覚フィードバックを知らんのか…?
なるほど...
たぶん、ボタンになったときにも身悶えした人々がいただろう。 T字バーを押し込むようになったときにもいただろう(これも見栄え優先のウソなんだけど)
馬鹿じゃねえの? 未来の公安がそんな間抜けな設定のわけねえだろ。 ちゃんと計算されてる。角度とか。
観てないから知らんけどパスワードとか打ったんじゃないの?
ってか、旧劇エヴァの「カスパーが裏切った!」のシーンだってタッチパネル付きの端末を操作してたじゃんねー
古田パラディンが裏切った
現代においては物理的に柔らかいことが長所の源泉であり、他の方法で心情的に代替できない理由なんじゃないかな。 それに人間の指の特性が加わり、ページめくりの多様なインタフェ...