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エリアーデの神秘思想の期待――『悪魔と両性具有』 エリアーデ

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うえしん
   エリアーデ著作集〈第6巻〉悪魔と両性具有 1973年

   エリアーデ著作集〈第6巻〉 悪魔と両性具有 1973年



 エリアーデほど自然宗教の死と再生について明快に解明した宗教学者はいないと思うのだが、神秘思想の分析まで読んだことはなかった。四天王寺の古本祭りで見かけたので、読んでみることにした。

 期待が大きすぎる分まで感銘をみたしてくれるわけではなかったが、ヨーガについて書かれた本まで手を伸ばしてみるべきなのかと思う。中央図書館で見かけたことがないので、書庫からとり出してもらわなければならないのかな。

 第一章では「神秘的な光の体験」がとりあげられる。おシャカさんには光輪が射しているし、よく聞くR.M.バックの神秘体験も燃えているような光を見ている。この体験を世界中から集めているが、私はあまり興味がもてなかった。

 第二章は表題の『悪魔と両性具有』である。バルザックの『セラフィータ』が念頭におかれているようだ。こんにちでは両性具有といえばエロティックな想像しかできないのだが、エリアーデはシンボルの形而上学的意味を認識できなくなると、粗雑な次元で理解されるといっている。

 両性具有というのは、クザーヌスがいったような反対の一致とよんだものであり、対立の統一や合一がシンボルされた象徴なのである。インドにおいても対立の破棄、分裂の結合は精神の王道である。キリスト教においてすら、アダムとイブに分かれたものを回復するために、キリストは到来したという教義もある。

 第三章ではエリアーデの得意な死と再生である「宇宙の再新と終末論」が語られる。ここではメラネシアのカーゴ・カルト神話に死と再生の神話を読みこんでいる。死者が待ち望まれ、家畜の膨大な犠牲、霊への奉納、狂騒的歓喜、労働の拒否が農業祭におこなわれ、新しい至福千年の世界が到来する。現地人はキリストの再臨、死者の復活にこの神話を見たという。カーゴ・カルト神話にキリスト教の復活、そして死と再生の神話を見るとは、意表をつかれた。

 第四章では「綱と操り人形」が語られる。見世物で綱をのぼった弟子が手足を切断され、ばらばらに落ちてきて、そして合体して蘇生するという劇がのべられる。このような劇は、天と地が切りはなされ、人間は魂だけが死後、天に昇り、肉体は地で滅ぶことが語られているという。シャーマンは生きているあいだに天に昇れるという。

 天と地に綱がわたされる絵は、ジャックと豆の木とかの民話などを思い出すかもしれない。この連想からエリアーデはインドにある綱や糸が宇宙を織り合わせているという教義をもちだしてくる。糸紡ぎの民話などもつながってくるのではないだろうか。木を登る見世物、シャーマンの木登りなど、連関がおもしろい話であった。

 エリアーデは死と再生の神話や自然宗教の形而上学において、ひじょうに明快な説明を見せてくれるのだが、神秘思想においてもそのような解明を期待できるのだろうか。まだ読んでいない著作が多く残っている。


 古代信仰の読解辞典のような本である―ミルチャ・エリアーデ『豊穣と再生』

 エリアーデ著作集 第2巻 豊饒と再生 ミルチャ・エリアーデ

 エリアーデ著作集 第2巻  豊饒と再生 ミルチャ・エリアーデ



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Posted byうえしん

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