「絵巻で楽しむ源氏物語」

IMG20231118204328-crop.jpg 大河ドラマ「光る君へ」がスタートしたが、それに備えるというわけではないけれど、ちょっと触発はされたかもしれない、
「週刊 絵巻で楽しむ源氏物語 五十四帖」というムック本(と言ってよいのかな)、全60冊を揃えて購入した。

タイトルが「五十四帖」なのに全60冊となっているのは、一帖に2冊を宛てているものが6帖(若菜上、若菜下、夕霧、総角、宿木、浮舟)あるから。

IMG20231118204303-crop.jpg

  内  容
1 一帖 桐壷
2 二帖 帚木 
3 三帖 空蝉
4 四帖 夕顔
5 五帖 若紫
6 六帖 末摘花
7 七帖 紅葉賀
8 八帖 花宴
9 九帖 葵
10 十帖 賢木
11 十一帖 花散里
12 十二帖 須磨
13 十三帖 明石
14 十四帖 澪標
15 十五帖 蓬生
16 十六帖 関屋
17 十七帖 絵合
18 十八帖 松風
19 十九帖 薄雲
20 二十帖 朝顔
21 二十一帖 少女
22 二十二帖 玉鬘
23 二十三帖 初音
24 二十四帖 胡蝶
25 二十五帖 蛍
26 二十六帖 常夏 
27 二十七帖 篝火
28 二十八帖 野分
29 二十九帖 行幸
30 三十帖 藤袴
31 三十一帖 真木柱
32 三十二帖 梅枝
33 三十三帖 藤裏葉
34 三十四帖 若菜上(1)
35 三十四帖 若菜上(2)
36 三十五帖 若菜下(1)
37 三十五帖 若菜下(2)
38 三十六帖 柏木
39 三十七帖 横笛
40 三十八帖 鈴虫
41 三十九帖 夕霧(1)
42 三十九帖 夕霧(2)
43 四十帖 御法
44 四十一帖 幻<雲隠>
45 四十二帖 匂兵部卿
46 四十三帖 紅梅
47 四十四帖 竹河
48 四十五帖 橋姫
49 四十六帖 椎本
50 四十七帖 総角(1)
51 四十七帖 総角(2)
52 四十八帖 早蕨
53 四十九帖 宿木(1)
54 四十九帖 宿木(2)
55 五十帖 東屋
56 五十一帖 浮舟(1)
57 五十一帖 浮舟(2)
58 五十二帖 蜻蛉
59 五十三帖 手習
60 五十四帖 夢浮橋
2011年11月に創刊号が出て、2013年2月の60号で完結している。当然、新刊はないし、再販されることもないだろう。

このシリーズの存在は山本淳子「平安人の心で『源氏物語』を読む」で知った。同書に、"この週刊誌に掲載の山本氏のエッセイ「御簾の内がたり」が下敷きになっている"とあったから。

その書評記事を書いた頃は、まだメルカリのようなフリーマーケットにはなんとなく不信感があって、古書を買う場合でもAmazonなど通販サイトで購入していたので、フリマは探さなかった。
その後、フリーマーケットを何度か使うようになって、気を付けるのは自己責任と割り切って、今回はフリーマーケットだったらあるのではと思って検索したら、やっぱりメルカリで売りに出ていた。

もっとも古書を買う場合でも、Amazonや楽天市場で出ているものを優先的に買うのだが(クリーニングなどがしっかりしてそう)、今回はそちらには本シリーズは出ていなかった(ただし他のサイトにはあったようだ、かなり安く)。


購入方法についてはこのぐらいにして、入手した本シリーズについて。
まず前の持ち主は乱暴に扱ったりはしていないようで、状態は良いものだったと思う。

本の途中になにやら会員紙のようなものが挟まっていたから、そのスジの人だったのだろう。


源氏物語の絵巻といえば、国宝に指定されているそれしか思い浮かばなかったけれど、それは54帖すべてが揃っているわけではないという。本シリーズではそれ以外のものからとったものも載せられている。
創刊号に記載の「売り文句」では、
世界中の源氏絵巻を一堂に集めた初めてのシリーズ
国内外に散逸している源氏絵巻を一堂に集めて収録。全号揃えると傑作約500点がお手元に集まり、前例のない絢爛豪華な「源氏物語絵巻」が完成します。また、絵巻は豪華な美術印刷で金泥も鮮やか。迫力のパノラマ誌面でもお見せします。
とある。随分期待を抱かせるなぁ。

もっとも私はこれから1号ずつ読むわけではなく、全巻揃っているから期待感はないけれど。


実際、創刊号「桐壺」で収録されている源氏絵は、国宝の源氏物語絵巻からではなく、〝幻の「源氏物語絵巻」〟というものからとられている。
〝幻の「源氏物語絵巻」〟とは、
幻の「源氏物語絵巻」 近年になってフランス、ベルギー、アメリカ、日本などで各巻が別々に発見され、世界の美術界の関心を集めた絵巻群のこと。現在確認されているのは「桐壺」巻(帖)、「帚木」巻、「賢木」巻など物語の冒頭部分だけで、全54巻が作られていれば200巻以上に及ぶ膨大な絵巻になったと想定される。制作年代は江戸時代前期と考えられているが、絵師や注文主などをめぐり論争が続いている。
とのことである。〝幻の「源氏物語絵巻」〟という固有名詞みたいだ。

このほか屏風絵などからも採録され(創刊号にも掲載がある)、シリーズタイトルは「絵巻で楽しむ」とあるが、絵巻楽しむというより、このシリーズが一大絵巻という意味を込めているのかもしれない。

本シリーズに採録された絵の選定・監修・解説は恵泉女学園大学の稲本万里子教授がされたとのことで、同大学の教員紹介お知らせページに紹介されている。

Google検索:"稲本万里子教授 週刊 絵巻で楽しむ源氏物語五十四帖 site:keisen.ac.jp"
59~60号の紹介記事に、それまでの各号の記事へのリンクが張られているので、こちらが便利。


IMG20231118204428-crop.jpg
創刊号(したがってシリーズ)最初に掲載されたのは、桐壺の更衣が病を得て宮中から去るシーン。
〝幻の「源氏物語絵巻」〟(上巻絵第三段 作者不明 縦35.4cm×横133.2cm 江戸時代前期)


IMG20231118204407-crop.jpg 創刊号(「桐壺」)をざっと眺めてから、そもそもこのシリーズを知るもととなった山本淳子氏のエッセイ「御簾の内がたり」をチェックした。

「平安人の心で『源氏物語』を読む」の第1章がほぼそのまま掲載されている。(右写真)

というか「絵巻で楽しむ…」に掲載のエッセイを集めて、「平安人の心で『源氏物語』を読む」ができたそうだけど。


なお一ヵ所だけ異なるところがあった。最後から2つめの段落だが、「絵巻で楽しむ…」は、
 紫式部はドラマチックな史実を効果的に掬い上げて、この物語を構成したのだ。…
となっているが、「平安人の心で…」では、
 物語を書き始めた時、紫式部はまだ彰子に仕えていない。一個人の立場から、ドラマチックな史実を効果的に掬い上げて、この物語を構成したのだ。…
と、源氏物語書き始めについての一文が追加されている。

ところで、ドラマ初回の感想記事に、"末摘花の邸も古びてはいて、破れがあっても、まひろの家のような、それこそ一切囲うものがないような状態ではない"と書いているけれど、これは本シリーズの「末摘花」掲載の絵で判断したもの。あとで追記しているが「蓬生」まで進むと、邸の傷みの描写がすさまじくなり、源氏絵ではほとんど廃屋のように描かれる。このあたり、時間経過もよく表しているようだ。

「光る君へ」は、源氏物語のストーリーを追うものではなさそうだが、平安装束や建物などを見るのには役立ちそうだ。

ただし、最も早い源氏絵は平安末期、国宝の源氏物語絵巻は12世紀に描かれたそうだが、多くは江戸時代に描かれたもののようだから、装束・建物が平安時代そのままとは言えないだろうけど。
(秀吉や家康を配した源氏絵もある)


関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

六二郎。六二郎。

ついに完全退職
貧乏年金生活です
検索フォーム

 記事一覧

Gallery
記事リスト
最新の記事
最新コメント
カテゴリ
タグ

飲食 書評 ITガジェット マイナンバー アルキビアデス Audio/Visual 

リンク
アーカイブ
現在の閲覧者数
聞いたもん