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2017/05/13

Nippon:私日本人でよかったのモデルが実は中国人女性だった件

だいぶ話題になって久しいが、「私日本人でよかった」なるキャッチコピーに東洋人女性の顔と日の丸を配し、下段に「誇りを胸に日の丸を掲げよう」と書かれたポスターが、神社本庁により掲出されたところ、そのモデルが実は中国人女性だったとして、さらに話題を読んでいる。

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これに対して、BBCニュースの日本版が「「私日本人でよかった」――ポスターめぐる議論沸騰」という記事を載せているが、その中で神社本庁が次のように言い訳をしているのだ。

神社本庁の担当者はハフィントンポスト日本版に対し、「特定の人物を指して日本人とする内容ではないので、問題にするほどでもない」と語っている。

実にそつがないというか、官僚的な答弁で、駄目だこりゃと思わせるのに充分なコメントである。

問題点は、勿論そこではない。
このポスターが、日本人のモデルを使っていると表示しているわけではないという限りでは、モデルの国籍は問題にならないのは当然なのだが、別に日本人のモデルを使っていると書いているのにおかしいじゃないかとクレームしているわけではないのだ。
なのにあのようなコメントを出すというのは、巧みな論点ずらしの典型と言えよう。

例えば、ナチス政権が白人女性の写真を使って「私ドイツ人で良かった」と、ハーケンクロイツを掲揚する啓発ポスターを作ったとする。ナチスとしては当然のことだ。ところが後に、そのモデルの白人女性がユダヤ人だと発覚したら、おそらくゲッペルスの責任問題にまで発展する可能性のあるスキャンダルになったに違いない。
その時には、モデルがユダヤ人でないとは買いてないから問題ないという言い訳は通用しないだろうし、そういう言い訳は思い浮かびもしないだろう。
なぜかといえば、ナチスドイツはドイツ人=アーリア民族の優越性を宣伝し、ユダヤ人を差別し、排除し、虐殺までしたのであるから、そのような文脈で「私、ドイツ人で良かった」なるポスターは他の民族(実際はユダヤ民族)に対する差別と排斥を強烈にアピールしているのであって、そのような姿勢をむしろ表に出している以上、実はモデルがアーリア民族ではなく排除するべきユダヤ人だったら文句なしのスキャンダルとなるわけである。

「私日本人でよかった」ポスターに気持ち悪さを感じて批判する人達は、ナチスのような人種差別、民族差別の匂いをポスターに感じとっているから批判するのであり、そうした立場からは「私日本人でよかった」のモデルが実は中国人女性だったというのは実に皮肉な出来事である。

神社本庁としては、その場しのぎのコメントでごまかすのではなく、この機会に、「日本人で良かった」というコピーの意味を明らかにすべきであろう。中国人モデルを使っていても問題はないということであれば、日本人という言葉は、別に日本国籍とか出自とか民族とかが日本由来であることに限らず、中国国籍の人も、韓国籍の人も、あるいはそれらの地域の出身で日本に移り住んで帰化した人たちも、すべからく、ここでいう(日本人」に入るんですよ〜と、「日本人で良かった」というのは「日本に住んでて良かった」くらいの意味ですよ〜と、そういう趣旨であると説明するのが一番だ。

そういう趣旨だとすると、中国国籍の人や中国から帰化した人たちに日の丸の掲揚を啓発するというのも、アメリカのような例を考えれば、あながちあり得ないことでもない。
ただ、アメリカは多民族の移民国家なんで、星条旗くらいしかアイデンティティを示す対象がないからああいうフェティシズムにおちいってしまうのであって、日本がそんな底の浅い国の真似をして国旗にすがる必要はないと思うのだけどね。
日の丸アレルギーではないつもりだが、かと言って国旗フェチにも乗り切れないし、ましてや他人に強制するなんてとんでもないことだと思うのだ。

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