退職予測AI
名古屋大学で、採用時の適性検査回答データをAIで分析し、400人中40人が退職しやすいと予測したところ、その全員が3年以内に離職したそうだ。鈴木智之准教授の研究室と民間企業「レイル」との共同研究だそうだが、なかなか興味深いが、疑問満載な感じもする。
→NHK名古屋:若者の早期退職をAIが分析 名大大学院などが研究
適性検査の回答をもとに「職場への不満を持ちやすい」とか「感謝の気持ちが持ちにくい」といった心理的な特性を数値化してAIに解析させた結果、全体のおよそ1割にあたる40人ほどが早期退職すると予測し、実際にその全員が3年未満に退職したということです。
また、およそ10万人分の回答から早期退職者の特徴を分析したところ、「上司をけなす」「同僚の好意を素直に受け入れない」「新しいメンバーに冷たい」といった特性が強い人ほど、職場ともめるなどして退職を繰り返す傾向があることもわかったということです。
そもそも400人とか40人といったレベルの量で統計的な何かが得られるのかという疑問もあるが、それはおいておくとしても、様々な疑問が思い浮かぶ。
まず、そもそも分析対象となった400人、あるいは後半の10万人は、こうしたプロファイルの対象とされることについて同意をしていたのであろうか? しかも少なくとも400人中40人については、全員退職したという結果と結びついていのであるから、仮名化すらされていない個人データベースとして保有し利用されていたのであろう。
また、AI倫理的な話であれば、データの偏りとか歪みのような問題がどう扱われているのかも疑問となる。この点は研究がきちんとしていればやっているはずとも言えようが、部外者からは疑問である。
さらに記事の書き方だけからの問題だが、「職場への不満を持ちやすい」とか「感謝の気持ちが持ちにくい」といった心理的な特性から退職しやすいという予測を立てるというのは、あまりにも分かりやすすぎる話である。そして、そういう傾向のある人達がどんどん辞めていく職場って、逆にどうなの? という感じにもなる。
いわゆるブラック企業であればあるほど、辞めていく人は上記の心理的特性の持ち主ということになるだろうから。
そして、鈴木准教授はつぎのように述べておられる。
「早く辞める人をただ予測するのではなく、企業と個人のマッチングをはかり、一人ひとりが前向きに輝ける社会を作ることに貢献したい」
ということは、つまり将来的には人事評価と人事処遇の根拠としてこのAIが使われることを目指しているというわけである。それならますますもって、データ処理プロセスの透明性が十分なければならないのではないか思う次第である。
追記:なお、研究室のウェブサイトにある発表文は、さらに煽り気味であった。
http://suzukilabo.com/pg1166826.html
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