trial:公判中に被告人が被害者に暴行
ひどい事件だが、日本の法廷の構造はこういう可能性について甘すぎることが露呈したというべきだ。
asahi:公判中の被告、証言女性に詰め寄る 山形地裁鶴岡支部(11/12)
この記事では、遮へい措置を施して証言していた監禁被害者の女性に、被告人が近寄ったという内容であった。ところが、昨日からの報道では、もっとひどかった。
asahi:被害女性を法廷で襲った疑い、被告の男逮捕 山形(11/18)
酒田署によると、容疑者は11日午後4時15分ごろ、自らの裁判中、証人の女性の背後から右腕を回して首付近を絞めたり、左手で女性の髪をわしづかみにしたりして、首の捻挫や背中の打撲など約2週間のけがを負わせた疑いがある。上記12日付けの記事が裁判所への取材で明らかになったことだとすると、裁判所は全く正確な説明をしなかった、はっきり言って嘘付いたというべき内容だ。事態を軽く見せないと責任問題になるとでも思ったのだろうか?
ここで考えるべきことは、被告人が立ち上がれば、すぐ手の届くところに被害者も含む証人がいるという法廷の構造である。
外国の法廷であれば、被告人はたいてい別の平面に仕切られた被告人席にいて、場合によってはガラスで仕切られていたり、ひどい場合は檻のような格子があったりする。ロシアの法廷で被告人をメタルの檻に入れる構造になっていたところは、欧州人権裁判所が人権条約違反だとしたことがあったが、防弾ガラスで仕切られる法廷はよくある。
これに対して日本の構造のなんと無防備なことか。
フランスでは、先日のボッサン講師の講演により、被告人が拘置所からテレビ会議システムで法廷の様子を見るだけという場合もあるとのことだが、これは流石に防御権の行使が侵害されていると評価すべきことかもしれない。
しかし、証人、特に被害者証人が証言するときは、これからは、ビデオリンク利用がデフォルトということになりかねない。証人であっても、テレビ越しではコミュニケーションが不十分になるという欠陥を抱えるので、それはあまり望ましいことではない。
それよりは、被告人席を仕切って、裁判関係者への突然の暴行ができないようにすべきで、それは時折起こる逃亡への対策ともなることである。
民事裁判ではデッドスペースとなってしまうが、それはやむを得ない。
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