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2016/02/13

arret:パリ控訴院はFacebookに対するユーザーの訴えにフランスの国際裁判管轄権を認める

2016年2月12日、つまり昨日、パリ控訴院は、フランスの学校の先生がFacebookに対して提起した表現の自由侵害を理由とする訴えについて、国際裁判管轄を認めたパリ大審裁判所の判決を正当と認めた。
"L'Origine du Monde" : Facebook ne pourra pas échapper aux juges français
Facebookの規約には、専属的国際裁判管轄の合意としてアメリカ・カリフォルニア北部の裁判所を指定しているが、これはフランスの消費法典l'article 132-1に違反する不当条項だということである。

日本語版規約には以下のように書かれている。

本規約またはFacebookに起因または関連する、弊社に対する申し立て、訴訟原因、または争議(以下「申し立て」)はすべて、米国カリフォルニア州北部地区の連邦地方裁判所またはサンマテオ郡に所在する州立裁判所で解決するものとします。また、利用者は、申し立てを行う目的において、当該裁判所の対人管轄権に従うことに同意します。抵触法にかかわらず、利用者と弊社の間で生じたあらゆる申し立てには、カリフォルニア州法が適用されます。

Dscf1178

そして消費法典の上記規定は、消費者契約において事業者が、消費者に不利に両当事者間の権利義務の不均衡をもたらす条項を不当条項だとし、不当条項は書いていないものとみなすとし、この規定は公序に属する、つまり強行法規だとしている。

さて、日本法ではどうか?
時々異説も、特に事業者側から聞こえてくるが、専属的合意管轄条項は一般的に言って消費者の権利を害するので、消費者契約法10条に抵触し、無効と解する余地がある。
特に外国企業が日本で用いる契約条項にある国際裁判管轄の専属的合意管轄条項は、日本国内における訴権を奪うものであるので、消費者契約でなくったって無効という可能性がある。効力はあっても裁判上ではそれを根拠に管轄違いとはならないというべきか。

そして、日本の民事訴訟法には以下のような規定もある。

(消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権) 第三条の四  消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と事業者(法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。(2項以下略)
第三条の七  当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。(2〜4項略)

5  将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。

一  消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

二  消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。

つまり、消費者契約について合意管轄の定めがあったとしても、消費者の住んでいない国に管轄を定めたとしても、消費者の住んでいる国の管轄権を否定することはできない。消費者が自ら進んでその管轄の定めに従って訴えたり、自ら援用したりすれば別だが。

日本に住む消費者がFacebookを訴える場合も、上記の利用規約上の専属的合意管轄はアメリカ・カリフォルニアにあるが、消費者が日本の裁判所に訴えを提起することに何らの妨げも内容にできているわけだ。

さて、そういう法規定を踏まえて上記の専属的合意管轄条項を見ると、その効力は消費者が好き好んでアメリカに訴えを提起した時にしか発揮されないのだから、別に消費者に不利な規定というわけでもない。
そういうわけで、この規定を不公正条項で消費者契約法10条に反するから差止訴訟を起こすという団体も現れてこないわけである。

ところで、上記のパリの裁判は、入り口の管轄だけでなく、内容的にもまた興味深いものである。
Gustave Courbet
L'Origine du monde(Orsay)

この世界の起源と題する女性器アップの絵をFacebookに載せたところ、規約違反で削除されてしまったというわけである。削除されたという時の記事参照。

フランス法上は、もちろん違法ではないのだが、フェイスブック的には、芸術的な裸体を許容してもこれはショッキングという、なんか中学生の親的常識論を振りかざす。
しかし、芸術というものは、もともとショッキングなものでないのか?

まあ、日本人には言われたくないかもしれないが。

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