民訴教材:判決の更正
判決を訂正 3万円を「30万円」と誤記 政務調査費返還訴訟 岡山地裁
民訴初級編の教材だ。
判決で間違いがあったらどうするか、と一般的な聞き方をすると、原則は上訴審が是正するというのが模範解答である。
判決は、その言い渡しにより自己拘束力が生じるからだ。
しかし、上訴がされない場合もあるし、上訴審に委ねるまでもなく判決裁判所が自分で直してもいい程度の間違いもある。そんな実例が上記の記事になった。
平成22年度に岡山市議に支給された政務調査費の一部が違法な支出だとして、「市民オンブズマンおかやま」が各会派に返還請求するよう大森雅夫市長に求めた訴訟で27日に岡山地裁(北沢純一裁判長)が出した判決中、「3万円」と書くべき部分を「30万円」と3カ所で誤記していたことが29日、分かった。原告側の訴えを認めた額は当初の計約850万円から計約770万円に変わるため、地裁は28日に、判決を職権で訂正する「更正決定」の手続きをした。
誤りに気付いた市側の弁護士が訂正を申し立て「裁判所の単純なミス。繰り返さないでほしい」とコメントした。
地裁によると、判決のうち、市議会の会派「ゆうあいクラブ」に返還請求する金額を「250万1688円」とすべきだった部分を「331万1688円」としており、内訳の3カ所に誤りがあった。
地裁によると、29日夕までに双方から控訴の申し立てはないという。
この記事から想像できるのは、判決理由中で桁の書き間違いがあり、それを下に計算して出した主文にも間違いがあったということであろうか。
関係する条文は2つ。
一つはこの場合にぴったりくる、誤記・違算の訂正をするための判決の更正決定。もう一つはより微妙な、法律違反があった場合の変更判決。
(変更の判決)第二百五十六条 裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後一週間以内に限り、変更の判決をすることができる。ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するため事件につき更に弁論をする必要があるときは、この限りでない。
2 変更の判決は、口頭弁論を経ないでする。
3 前項の判決の言渡期日の呼出しにおいては、公示送達による場合を除き、送達をすべき場所にあてて呼出状を発した時に、送達があったものとみなす。
(更正決定)
第二百五十七条 判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2 更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
この条文を読むと、上記記事の妙なところが目につく。被告代理人の申立てがあったのに職権でと書かれている点。 257条1項によれば、申立てに基づくのと職権によるのは相反するのだが。
なお、過去にこのブログで取り上げた類例も参照。
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