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2013/06/12

law:いわゆるハーグ条約のための法律が可決成立

ハーグ条約と言えば多種多様なものが存在するが、最近では特定なしにハーグ条約というと「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」のことを指し、これに加盟するための国内手続を定めた法律が話題となっていた。

本日6月12日、この法案は参議院本会議で可決され、成立した。

毎日jp:ハーグ条約:「両親の愛、日常的に」米で破綻の日本人夫婦
参議院に提出された法案pdf

この法律が成立したことにより、いわゆるハーグ条約、すなわち国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約に加盟することが可能となった。

この条約に関する情報は外務省サイト参照。
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このブログでも、このいわゆるハーグ条約加盟問題については言及してきた。

Symposium:国際的子の奪取の民事面に関するハーグ条約
law:子ども引渡しの強制執行
book: 民事執行における子の引渡し

さて、今回成立した法律によれば、子供の引渡しの強制執行は、原則として間接強制により行うが、間接強制の決定が確定してから二週間経過しても子供の引渡しがなされない場合は代替執行も行うことができる。
代替執行というのは第三者に履行させるということであるが、この場合の第三者は「返還実施者」であり、これに債務者(つまり現に子供を監護している者)の子の監護を解くのに必要な行為をする者として、執行官が加わる。
執行官の権限は、かなり強力で、子を監護する者の住居や占有場所に立ち入り、必要があれば鍵も解錠して立ち入り、抵抗があれば威力を用いることもできるし、警察の援助も求めることができる。
ただし、子に対して直接威力を用いることはできない。

強制執行の場面は最終段階であって、そこまでは至らないことが多いとは思うが、それでも対立が激しい事件では最終段階まで至ってしまうことが予想される。
それ以前の段階で、海外に居住する(元)配偶者が暴力的な人物であって、これに引き渡すことで子の利益に悪影響があるという場合には、この返還申立手続の段階で適切に判断されることが期待される。

その場合の引渡し拒否事由としては、28条1項4号に、以下の規定がある。

常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。

そして、この事由の有無を判断するに際して裁判所は、以下の事実を斟酌せよとある。

1号 常居所地国において子が申立人から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次号において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無
2号 相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無
3号 申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無

このうち2号が、いわゆるDVに関係する。

問題は、「暴力等」としてどの程度の範囲のものを斟酌するのか、肉体的暴力に限らず精神的な暴力も含むのか、「おそれの有無」の判断としてどういう場合が該当するのか、過去の暴力行使でおそれありと判断されるのか、それとも将来の入国時の暴力のおそれを具体的に推認させなければダメか、過去の暴力行使を認めるために必要な証拠は何かなどである。

その解釈適用の広狭により、DV被害者にも子供の引渡しが命じられたり、逆に自称被害者には命じられなくなったりする。刑事裁判のような無罪推定という原理が妥当しないだけに、極めて困難な課題ということができる。

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