International:国際海洋法裁判所の裁判官に、日本からは柳井氏を候補指名
国際海洋法裁判所は、国連海洋法条約の解釈・適用に関する紛争の司法的解決を任務とする機関で、ドイツ・ハンブルグに本部がある。
その裁判官は、9年任期で、世界の地域ブロックごとに選出されるが、今回改選を迎える柳井裁判官(所長でもある)のポストについて、外務省は再び柳井氏を候補として指名した。
国連海洋法条約は、1992年発効の新しい条約で、領海や排他的経済水域、大陸棚などに関する規律がされているほか、紛争解決機関として調停、仲裁、国際海洋法裁判所が規定されている。
国際海洋法裁判所の処理実績は、これまでに21の事案が付託され、9つの判決と6つの暫定措置命令、1件の勧告的意見が下されている。
日本が当事国となったのは、1999年のみなみまぐろ事件、2007年の第88豊進丸事件と第53富丸事件の3件がある。
みなみまぐろ事件とは、「みなみまぐろの保存のための条約」により設置された「みなみまぐろ保存委員会」が調査漁獲のルールを策定している最中に、日本の調査漁獲が先行してなされたため、オーストラリアとニュージーランドが仲裁および暫定措置命令を申し立てたというものである。
このケースでは、暫定措置命令が下されたが、みなみまぐろの保存のための条約が国連海洋法条約の紛争解決を排除していることから、仲裁廷が事件を却下し、暫定措置命令を取り消すに至った。
2007年の2つの漁船の事件はいずれもロシアに拿捕されたもので、早期釈放を求めたものだが、一つは早期釈放を命じたものの、もう一つはロシア国内法による船体の没収が確定したため、請求の目的が失われたとして却下になったという。
民事訴訟法学の立場からも、なかなか興味深い制度である。
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