e-reputation:トゥールーズでの報告終了
トゥールーズ第一大学で行われているE-réputation et traces numériques(ネット評判とデジタル履歴)についてのシンポジウムで、「日本のデジタル履歴と忘れられる権利」と題する報告をした。
日本では、ソーシャルメディアでの不用意な書き込みが職を失うなどの不利益につながったり、Big Dataブームの中でプライバシーを侵害するようなデータ収集活用が進められているという現状と、これに対する一つの解決策として「同意」を実質化するという方向を提唱した。
同意の実質化というのは、十分な情報のもとでの同意、十分なデータ管理、そしてデータ消去への権利という3つを用意することである。このうちデータ消去への権利というのが、忘れられる権利の一種というわけだ。
さて、シンポジウム全体の問題意識は、個々のトラブル事例への関心というのももちろんあるが、フランスではより理論面での関心が強いように感じられた。特にネット上の評判というテーマからは、アバターなどの仮想人格と現実社会における人格、あるいは会社が開設しているアカウントに結びついた人格、そして若者の無防備なネット人格などが、法的に保護されるべき人格なのか、現実社会の人格と切り離した存在と理解できるのか、このような議論が関心を集めているように思われる。
もちろんその前提として、忘れられる権利を実定化するにあたって中身をどう作っていくのかとか、欧州と米国でのプライバシー・個人情報保護の発想の違いなど、ある意味細かいところにも議論はされているが、しかしどうも形而上学的な議論が目立つ気がした。
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