jugement:共有物分割訴訟
共有物分割とは、民法258条に基づく裁判上の請求権だが、訴訟類型としては形式的形成訴訟だとされている。実態としては非訟事件であり、一定の要件を満たしていれば法律効果が発生するという構造の規範が前提となっていない。
どう分けるかは、当事者間の個別的状況から、合目的的に定めるものと解されている。
その分割方法が合目的的だとされる理由付けは、以下の様なものである。
・原告が当該不動産の温泉組合の組合員であること。
・原告は当該不動産の近くに居住し、被告は福岡に居住していること。
・本件不動産を現物分割してしまうと、価値が著しく下がってしまうこと。
・その他、不動産算定の諸要素を勘案
結論として、原告が本件不動産をすべて取得し、一定の金員を被告に支払い、被告から移転登記を受けることが主文で命じられた。
ところで主文では、原告の所有とすることと、原告が被告に金員支払い、被告が原告に移転登記手続を、それぞれ引換給付として命じられている。
この給付命令の部分については、執行力はあるのだろうか?
執行力があるとすれば、共有物分割訴訟は形式的形成訴訟であると同時に給付訴訟としての性格も有することになる。しかもその給付請求は、当事者の申立てがなくとも、あっても拘束されることなしに、裁判所の職権で命じることができることになる。
これはすごく異例なことである。
他に、形式的形成訴訟とされている境界確定訴訟も、また父を定める訴えも、給付判決を下すことは考えられない。
遺産分割などの家事審判では給付条項があり、これに執行力も認められるのだが、家事審判には既判力はない。
共有物分割判決には既判力が認められると解されていると思うが、給付条項についても同様だろうか?
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