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2012/02/21

nuk:原子力安全委員会の役割とは?

斑目委員長が、ストレステストの一次評価だけでは原発の安全性を十分評価できないという趣旨の発言をして、波紋を広げている。
これに対して政府の側からは、官房長官が、安全委員会が何を言おうと原発運転再開は政治が決めるという趣旨の発言をし、また細野原発大臣は、政府と安全委員会との考え方に齟齬がないと述べた。

何がどうなっておるのかと疑問が渦巻く。

読売onlineの記事では、斑目委員長は以下のように述べたとされている。

定期検査中の原子力発電所を再稼働させる条件の「ストレステスト(耐性検査)」1次評価について、内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長は20日、記者会見で「原発の安全性を評価するには不十分」と述べた。
その一方で、次のようにも述べられている。
保安院の審査に問題がないことを安全委が確認すると、首相と関係閣僚が地元の同意を得て運転再開の是非を判断する。班目氏は「政府が決めること。その方針に反対しているわけではない」と述べた。

安全委員会が「保安院の審査に問題がない」と確認することが首相以下の運転再開の是非を判断することの前提になっているように見えるのだが、そうではないのか?

そこで原子力安全委員会のサイトでどうなっているのか軽く調べてみると、上記の斑目委員長の発言と同じ日に開かれた会議で、急遽確認された事項があったようだ。

速記録pdfによれば、「2月21日に第1回の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価検討会を開催し、原子力安全・保安院の確認結果について、確認のための検討会をする。」その前に、「確認方針を取りまとめたものを用意しておいた方がよいと考えた」として、委員5人が協議して取りまとめたのが追加資料pdfである。

原子力安全委員会は、発電用原子炉設置者が行った「発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価」に対する原子力安全・保安院の確認が、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価の実施について」(平成 23 年 7 月 6 日付け原子力安全委員会)に則って行われているかについて、下記の項目を中心に確認することとする。

 なお、原子力安全委員会の行う確認は、原子力発電所の運転再開の可否の判断を行うものではない。


 この文書では、確認項目が改めて並べられているが、上記の平成23年7月6日付けの文書pdfで評価実施を定めた内容と概ね同様と考えてよさそうである。

 この報告の徴収は、上記7月6日付け文書によれば、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法25条に基づいて、所掌事項の実施に必要な報告を求めるものであり、その所掌事項(同法13条)についてさらに必要があれば、首相を通じて関係行政機関に勧告をする権限もある(同法24条)。この勧告権限は、安全委員会のサイトの説明によれば、次のようなものである。

原子力を安全に利用するための国による規制は、直接的には経済産業省、文部科学省等の行政機関によって行われていますが、原子力安全委員会は、これらから独立した中立的な立場で、国による安全規制についての基本的な考え方を決定し、行政機関ならびに事業者を指導する役割を担っています。このため、内閣総理大臣を通じた関係行政機関への勧告権を有するなど、通常の審議会にはない強い権限を持っています。

また、こうも書かれている。

原子力安全委員会は、専門家の立場から、科学的合理性に基づいて、安全確保のための基本的考え方を示し、改善・是正すべき点については提言や勧告を行うことによって、行政機関や事業者を指導します。

 これらの情報を総合するならば、確かに運転再開の是非を判断する直接の主体は行政機関であり、具体的には経産大臣ということになろう。
 しかし、その際、ストレステストの一次評価と地元の了解とを根拠として運転再開を認めていくという政府(関係行政機関)の方針に対して、原子力安全委員会の委員長が「不十分だ」と評価するのであれば、これを委員会で審議し、安全評価が十分なされていないという結論が出たならば、その安全審査の改善・是正すべき点について提言や勧告を行うことが原子力安全委員会の基本的使命ということになる。

 そうだとすると、上記の確認文書にある「なお書き」で、「原子力安全委員会の行う確認は、原子力発電所の運転再開の可否の判断を行うものではない。」とあるのは、直接的にはそうだというだけで、なんのために確認をしているかといえば、運転再開の可否判断が妥当な基準でなされているかどうかを判断し、妥当でない、安全確保に十分でないとすれば「勧告」を通じてストップをかけることは基本的使命なのである。この基本的使命を放棄するのであれば、自己否定でもある。

 原子力安全委員会が3.11の前後を通じて、安全確保に期待される役割を十分果たしてきたかどうかは議論の余地があり、斑目委員長自身が不十分だったと述べているのだが、だからといって、運転再開の是非という重大な决定に、原子力安全委員会の基本的使命を放棄するようなことは許されない。安全確保に不十分だと評価するのであれば、法律上与えられた権限をフルに使って、安全確保に必要な措置を執るよう「指導」すべきだ。

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