色々な裁判2010
故あって昨年一年間の裁判報道を振り返ってみた。
色々大事件があったが、コネタ系で面白いのをいくつか紹介しておこう。
◯ホトケドジョウが訴えを提起するも、当事者能力無しとして却下(2010.4.22)
環境センシティブな方々が、アマミノクロウサギ以来時々使用しているのが自然の権利訴訟である。わざわざ当事者名に自然物を表示するのだが、理論的には当事者能力がないことはあまりに明らかで、その意図はアピールにある。もちろん、いわゆる環境権構成を突き詰めていくと、その主体は人間ではないということとなり、人間は代弁するだけだから、当事者は自然で訴訟代理人が人間というのが正しいと、そういう事になるのだが。
◯京都の菓子工場周辺にカステラやアメなどの甘い匂いをまき散らしたという理由で損害賠償請求され、280万円の賠償認容(2010.9.15)。
そんな請求が認められるのなら、新大久保のロッテ工場周辺住民はガムの甘い匂いで賠償請求できたに違いない。今はキムチの匂いが勝ってるけど。ちなみに新大久保近辺で生まれ育った人たちは、ガムの匂いに苦情をいったという話は聞かない。
◯アディーレ法律事務所は、会社の自己破産事件申立てを受任して294万円も報酬を受け取り、不当に高額だと管財人から返還請求された。裁判官は「必要な事務は一応行われたが、弁護士は現地に一度も赴かず、不適切な指示も出した」と指摘。適正な額は126万円以下だと判断。
破産法の教材になりそうな話だが、いずれにしても、適正な額と判断した根拠をアディーレ法律事務所も裁判所も明確にしてほしい。通常の訴訟事件では訴額から算定したり、事件類型から大体の相場があったりするが、破産申立事件についてはよく分からない。
個人の破産申立事件についてはほとんどが同時廃止・免責申立てと進むし、着手金で20万から30万、報酬金で20万円以下というのが2008年のアンケートで多数を占めている(pdf資料参照)が、必要な事務処理は企業の管財事件のほうが数倍から数10倍にのぼるだろうから、きちんとやれば100万単位でも高くないと思われる。ちなみに、再生申立てに関するアンケートでは、資本金1000万円、負債総額10億円という設例で着手金100万〜300万、報酬金200万〜300万だという。その他月額報酬方式などもあるようで、詳しくは上記アンケートpdf資料を参照してほしい。
民事再生と破産とはぜんぜん違うということを考慮しても、アディーレ法律事務所の例は本当に高すぎなのかという疑問が出てくる。
◯歌舞伎町のホストクラブでシャンパンタワーをやってもらうと、いくらかかるか? 答えは148万円。1本6000円ちょっとの安物シャンパンを20本使うらしいが、倉地真寿美裁判官はボッタクリとは言えないとして支払を命じた(2010.10.26)。
報道では、「歌舞伎町のホストクラブの料金体系に照らして著しく高額とまではいえない」といったというが、以前イタリアのレストランでボッタクリ被害にあったといってイタリアの大臣が謝罪するまでの騒ぎとなった例では、昼食に9万円取られたというレベルである。この事件で店が請求した総額は175万円。まあ、ホストクラブではいくら請求されても文句をいうのは野暮というものなのか。
◯ヤマダ電機って、日経ビジネスの消費者調査で満足度ワースト1となったんだ。その上、その結果が不満で名誉毀損で提訴して、おまけに一審敗訴(2010.12.14)。
恥の上塗りと言っては酷かな。裁判を通じて自己の権利を主張すること自体はもちろん正当なことなのだが、負ける喧嘩で得られるものがある場合(上記自然の権利訴訟など)とこの場合とは違うだろう。
その後、どうなったのだろうか?
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コメント
最近特に感じる事は、裁判官や弁護士の横暴が、『世間知らずで理不尽』に見えて仕方が有りません!
この国の未来は何処へ向かうのでしょうか?
私達で常識の中にこそ非常識が有る事を、世界に訴え無いといけませんね!
投稿: ドミンゴミヤケ | 2011/07/18 12:32