court:役に立たなかった証拠保全続報
court:証拠保全のデータを裁判所で消去で取り上げた事件の続報。
消去されなかったデータも、8割方は不鮮明で読めないデータだったそうだ。
毎日jp:データ誤消去:別の証拠も判読不能 福島地裁郡山支部
福島地裁郡山支部(清水響支部長)が損害賠償訴訟で証拠保全したデジタルデータの一部を誤って消去した問題で、同じ訴訟の別の証拠保全のため、郡山支部が3月にデジタルカメラで撮影した文書1048枚の8割余りの画像が不鮮明で、内容が判読できないことが分かった。画素不足かピンボケが原因で、地裁郡山支部の管理体制が改めて問題となりそうだ。
以前のエントリの繰り返しとなるが、デジタル機器を裁判手続に導入することは、裁判員関係で少し進んだほかは全くお寒い状況で、準備書面等をFAX送信出来るのがハイテクと称しているレベルである。
これでは資源の無駄遣いで、PDFファイルをメール送信してプリントアウトしてもらうくらいのことがなぜできないか、原理的にはファックスとほとんど変わらないではないかと言いたい。
しかし、デジタル機器を用いたらセキュリティと安定性が損なわれる、万一事故があってデータがクラッシュしたり漏洩したりしたら取り返しがつかないという石橋叩いてわたらない態度が、デジタル化を阻んできた。
今回の事件は、まさにこの石橋を叩いて渡らない態度の正しさを裏付けてしまったようで、これでまたデジタル化が遅れるのかと思うと暗澹たる気分だ。
今回の事件は、逆の方向に進まないものか。すなわち、デジタル化は避けようとしても避けられるものではないので、デジタル情報を取り扱うのに必要な設備・スキル・セキュリティ等の基本を裁判所としても修得しなければならないという方向である。
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コメント
スキャン→PDFってしないんですかね。
文書をカメラ撮影って、裁判所はいつの時代を生きてるんですか?と言われてもおかしくない出来事です。
もっと言えば、そもそも文書をただ撮影するだけなのに8割がたピンぼけとか、デジカメ使ったことないのか?撮影した画像を確認しないの?
ツッコミどころ満載すぎる。
投稿: 603 | 2010/05/18 15:11
デジタル/アナログ以前に,写真撮影技術が……ゲフゲフ。
投稿: キメイラ | 2010/05/18 15:11
スキャンするにも、コピーをとるのと同じ設備が必要で、スキャンスナップのポータブルの奴は冊子体のスキャンは出来ないので使えないし、結局持ち運び可能なコピー機を搬入し、自家発電装置を持っていき、ということになります。
それが素人ではできんだろうということで、裁判員模擬裁判でも使った備品を使うことを思いついたんでしょうが、裁判所にしては慎重さが足りなかったですね。
この記事ではデジカメになっているけど、以前聞いたときにはデジタルビデオ機だったはず。ビデオ機のスクリーンショットだから不鮮明になったのか、それともカメラ機能を使って、それでもピンぼけだったのか。
投稿: 町村 | 2010/05/18 19:40
患者を医師が他の施設の医師に紹介するときには、紹介状を作ります。通常は、文章を打って、検査データを電子カルテの印刷機能で打ち出して、画像は紙に印刷します。精密な画像が欲しいときには、診療情報室に頼んでCD-ROMに焼きます。これらを郵便で相手の病院に送って、受け入れ可否を聞きます。
通常はこれでいいのですが、救急医療では郵便や手渡しなんかしていられませんので、ファクシミリと電話で情報を伝えます。CTやMRI画像も口でしゃべって説明します。
パソコンを日ごろから使っている人は、
「画像なんかSkypeやメッセンジャーで送ればいいじゃないか」
と思われるでしょう。しかし、それはできないのです。情報セキュリティのためです。
電子カルテ端末は、ごく普通のWindowsパソコンですが、つながっているのは院内LANのみであり、外部とは完全に切断されています。それどころか、USB機器ですら無効化されています。
ソフトバンクの「光の道」構想では、FTTHの効用として、全国共通電子カルテが挙げられていますが、とんでもない勘違いです。ボトルネックになっているのは、過剰なセキュリティであり、通信回線じゃありません。
投稿: 井上 晃宏 | 2010/05/19 10:27