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2008/10/21

jugument:抽象的差止め命令

京都地判平成20年9月18日PDF判決全文

親切な判決要旨が書かれている
1 学校のエアコン室外機が発する騒音が受忍限度を超えているとして,隣地居住者が学校の設置者に対して求めた室外機の撤去請求が,抽象的不作為請求の限度で認容された事例
2 騒音規制法による特定工場等に該当する学校が,同法による規制基準を超える騒音を隣地に到達させたことが隣地居住者に対する不法行為に当たるとされた事例

抽象的不作為命令とは、次のような主文をいう。

被告は,原告らに対し,京都府向日市a町b番地において設置管理するA高等学校の第1校舎南側に設置したエアコン室外機から発する騒音を京都府向日市a町cの原告らが居住する居宅敷地内に,50デシベル(特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年11月27日厚生省・農林省・通商産業省・運輸省告示1号)に定める測定方法による)を超えて到達させてはならない。

こうした抽象的差止め命令は、具体的な給付の対象が限定されていないとして、執行もできず、不適法という説もあった。

そして本件では、原告が次のような請求の趣旨を立てた。

被告は,京都府向日市a町b番地において経営するA高等学校の第1校舎南側に設置したエアコン室外機のうち,別紙1の番号1ないし19記載の室外機を撤去せよ。

このような具体的作為請求を立てたのに対して、抽象的差止め命令の限度で認容したというのであるから、一種の一部認容として認めたものと解される。

具体的な措置よりも抽象的な命令が量的に少ないとか、質的に一部とかいうことは言いにくいように思うのだが、微妙なところではある。
この点について、判決文では次のように判示している。これはこれで正当であり、原告の意思に反するとか逸脱するということにもならないと言う判断であろう。

「ところで,原告らは,本訴において,本件各室外機のうち,別紙1記載の番号1ないし19記載の室外機の撤去を求めているが,これは,原告方敷地への受忍限度を超える騒音の到達を差し止める具体的方法として特定請求しているものと解せられる。しかしながら,本件騒音が規制基準を超えているとはいえ,その程度は僅かであり,これを規制基準以下に抑えるためには,室外機の撤去だけではなく,防音壁の強化,騒音の小さな機種への更新,設定温度の変更等,様々な方法が考えられるところ,被告には,本件騒音を規制基準以下に抑える義務があるが,そのためにどのような方法を採用するかは,個々の方法に要する費用,個々の方法によって想定される効果,個々の方法が与える影響等を勘案して,被告において自由に選択することを容認するべきである。そうすると,原告らの被告に対する差止め請求については,上記各室外機の撤去請求は許されず,原告方敷地に50デシベルを超える騒音の到達を差し止める,いわゆる抽象的不作為請求の限度で認容すべきものと解せられる。そして,その測定は,特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年11月27日厚生省・農林省・通商産業省・運輸省告示1号)に則った方法でなされるべきである。」

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