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ロシアは賢明にも今や敗北した抵抗の枢軸と同盟を組まないことを選択して危機を回避した(抄訳)

2024/12/12のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。ロシアは抵抗の枢軸と秘密の同盟を結んでいたりはしなかった。彼はイスラエルと抵抗勢力との戦争については中立を保っており、どちらの側にも立っていない。若し同盟を結んだりしていたら、イスラエルとの関係が台無しになっていただろうが、プーチンは合理的な観点から正しい選択をした。

 イスラエルとの云うのは基本的にはアングロ・サクソンの帝国主義勢力による植民地主義的事業だと思うが、現実の歴史的出来事が常にそうである様に、100%それだけで語り尽くせるものでもない。イスラエル建国に関してソ連が果たした役割は複雑で一言で評価が難しいものだが、今日のロシアとイスラエルの関係もまた単純に白黒だけで割り切れる話ではない。多極秩序を抱擁したいと思う人は、この割り切れ無さに耐える術を学ばなくてはならないだろう。
Russia Dodged A Bullet By Wisely Choosing Not To Ally With The Now-Defeated Resistance Axis



 ロシアは抵抗の枢軸を救わなかった

 イランが主導する抵抗の枢軸はイスラエルに敗北した。

 2023/10/07にハマスが行ったテロ攻撃は、イスラエルによるガザ地区のパレスチナ人への集団的処罰を促し、それがレバノンとシリアに拡大する一連の紛争へと繋がった。

 イスラエルはイエメンとイランにも爆撃を行い、ハマスとヒズボラの指導部は滅ぼされた。レバノンでは停戦が成立したが、同日にシリアのアサド政権がトルコが支援するテロ攻撃により打倒され、これによってイランのヒズボラへの軍事補給が断たれた。

 ヒズボラの指導者故ナスララの「イスラエルはクモの巣よりも弱い」と云う主張を信じていた人々にとって、こうした展開は驚くべきものだったが、ロシアが抵抗勢力を救う為に指一本動かそうとしなかったこともまた彼等を驚かせた。彼等はロシアは抵抗の枢軸と同盟を結んでイスラエルに対抗しているものだと信じていた。代替メディアでは一部の一流インフルエンサー達が利己的な理由から、聴衆が聞きたがるこうした誤った話を広めて来た。

 この問題について正確なところを知りたい読者は、ラヴロフ外相の評価や、イスラエルに関するプーチンの公式の発言を当たってみることをお勧めする。プーチンはシオニズムには反対しているが、ユダヤ人とイスラエル国家には常に深い敬意を表して来た。



 ロシアは反イスラエルではない

 ロシアがやろうとしているのは、イスラエルと抵抗の枢軸との間でバランスを取ることだ。従ってどちらの側にも立たず、常に中立を保って来た。プーチンはパレスチナ人に対するイスラエルの集団的処罰を非難しているが、ハマスのテロ攻撃と同列に置いている。それも口頭だけで、実質的に干渉を行ったことは一度も無い。ロシアは攻撃を阻止したり報復したり、或いはシリアに阻止・報復する能力(S-300防空システム)を与えたりして来なかった。

 その理由は、ロシアがシリアに軍事介入する直前の2015年9月下旬に、プーチンとネタニヤフが合意した衝突回避メカニズムだ。これは明らかな外交上の理由から公に確認されることは無かったものの、これはシリアに於けるイランの反イスラエル活動が、イスラエルにとって正当な脅威であるとプーチンが考えていたことを示唆している。

 この為、ロシアはイスラエルがイランを爆撃しても、イスラエルの攻撃が国際法に違反していると非難することは有ったものの、常に傍観して手を出すことは無かった。ガザ、レバノン、シリア、イエメン、イランに対するイスラエルの行動をロシアは非難して来た(これらは簡単に検証出来る事実だ)が、それでもロシアはイスラエルに対して一方的に制裁を課すと脅したことは一度も無いし、懲罰として軍事行動を起こすと仄めかしたことさえ無い。イスラエルを「非友好国」に指定すると云う単なる象徴的行為さえしてしていないし、今後もしないだろう。

 それはイスラエルが、米国の制裁に従わず、ウクライナに武器を供給していないからだ。

 そこにはまた代替メディアの殆どの人が知らなかったか否定していた事実が有る———イスラエルは米国の傀儡ではない。若し本当に傀儡だったら、イスラエルはとっくの昔に制裁に従い、武器を送っていた筈だ。この詳細はこの記事の範囲を超えるので省略するが、バイデン政権はネタニヤフを打倒しようとさえしていたことは指摘しておくべきだろう。

 大事なことは、ロシアとイスラエルの関係は依然として友好的であり、両国は一部の人が考えていた様な敵対関係からは程遠いと云うことだ。プーチンは自らを徹頭徹尾プラグマティストだと考えており、イスラエルとの関係構築に四半世紀を費やして来た。従って彼がイデオロギー的な理由からこれらの努力の成果を無駄にするなどと云うことは考えられない。

 プーチンは2019年にシオニストのロビー組織であるケレン・ヘイソド財団を前にしてこう語っている。

 「ロシア人とイスラエル人は家族と友情の絆で結ばれています。これは真の共通の家族です。これは誇張無しに言えることです。イスラエルにはロシア語を話す人が約200万人住んでいます。我々はイスラエルをロシア語圏の国だと考えています。」

 ロシアは抵抗の枢軸と秘密の同盟を結んではいない。それは代替メディアの一流インフルエンサー達が広めた根拠の無い嘘だ。ロシアは抵抗勢力を「裏切った」訳でも、「シオニストに売り渡した」訳でもない。ロシアはそもそもどちらの味方もしていなかった。誤った主張を信じていた人達は、認知的不協和を直ぐに振り払わなければ、更に現実から遠ざかることになるだろう。



 結論

 振り返ってみると、ロシアは賢明にも、今や敗北した抵抗の枢軸と同盟を組まないことを選択することによって危機を回避したのだ。同盟を組んでいたら、今や西アジア戦争の紛れも無い勝者であるイスラエルとの関係を不必要に台無しにしてしまったことだろう。

 プーチンは国家としてのロシアの客観的利益に関する合理的な計算に従って、正しい選択をした。それは一部の人が彼を中傷して主張する様に、「シオニストの影響」によるものではない。彼は常に正直に語っている。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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