「米国の外交政策対中国」はトランプ政権下でも継続する(抄訳)
2024/11/21のブライアン・バーレティック氏の記事の抄訳。米国の中国封じ込め政策は昨日今日始まったものではなく、第2次世界大戦以降、特に新冷戦期に於ては、どの政権下でも概ね一貫して続いている。米国は要するに世界を支配したいのであって、これは米国自身の戦略文書や政策等から証明が可能な事実だ。
外敵からの脅威に対して主権国家として当然の警戒をしているに過ぎない中国を米国が脅威として描いていることは、裏を返せば米国が中国を含め世界中を自分の意の儘に操りたいと云う意志の表明でもある。日本人は自国の政府が「世界征服のお手伝い」をしていると云う自覚をもっと持った方が良いだろう。カマトトぶっていたら全く無用な代理戦争に引き摺り込まれるだけだ。
US Foreign Policy vs. China Continues Under Trump
米国の外交政策の中心課題である中国封じ込め政策はバイデン政権で一旦中断したが、トランプ新政権はこれを中断したところから引き継ぐ構えだ。具体的には例えば以下の様なことだ:
・アジア太平洋地域での米国の軍事増強。
・台湾島を巡る挑発。
・中国周辺諸国への干渉の継続。
これはまた米国によって押し付けられた負債、分断、貧困に代わるものを求める世界中の国々と中国との協力関係を引き続き妨害することも意味する。
トランプは国務長官、国防長官、中央情報局長官等の主要ポストにネオコンのタカ派を任命した。トランプは戦争を終わらせたいのではない、単に戦争の優先順位を変更したいだけだ。
中国を標的とするアジェンダの継続性
第2次世界大戦終結以来、米国の外交政策は中国を含むあらゆる敵国を排除することに拘って来た。
1965年、国務長官ロバート・マクナマラから大統領リンドン・B・ジョンソンに宛てた覚書は、これらの敵国の中で中国がメインであると名指ししていた。この覚書は、ヴェトナムで進行中の米国の軍事作戦は、「共産主義中国を封じ込めると云う米国の長期的政策を支持する場合にのみ意味を成す」と指摘している。中国は「世界に於ける米国の重要性と有効性を損ねる脅威となる大国」として台頭しており、「アジア全体を組織して米国に敵対させようとしている」とはっきり書かれている。
この覚書はまた中国封じ込めの為の3つの戦線を明記している。
a)日本・ROK(大韓民国)戦線
b)インド・パキスタン戦線
c)東南アジア戦線
これらの戦線は現在も継続しており、何万人もの米兵が駐留している。
冷戦が終結すると、米国は世界全体に対して「優位性」を追い求める政策を再開した。これは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれる。これについて報じた1992年のニューヨーク・タイムズの記事は、「冷戦後の時代に於ける米国の政治的・軍事的使命は、西ヨーロッパ、アジア、または旧ソ連の領土に、ライヴァルとなる超大国が出現しないようにすることである」と解説しており、米国の外交政策は、如何なる国も「アメリカの優位性に挑戦」出来ない、「ひとつの超大国によって支配される世界」を目指すものであるとしている。
そして冷戦終結後から現在に至るまで、ジョージ・ブッシュ(父)、ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ(息子)、バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデンの各政権は、北アフリカから中央アジアに至るまで、死と破壊を齎す数々の侵略戦争を繰り広げて来た。
多くの場合、或る政権が次の政権の戦争の為の舞台を整えて来た。一例としてはブッシュJr.政権によるシリア政府打倒の準備だ。この政策は2011年に所謂「アラブの春」の一環としてオバマ政権下で実行され、その後トランプ・バイデン両政権下で継続された。
現在進行中のウクライナ戦争も同様だ。ブッシュJr.時代からウクライナのレジーム・チェンジが追求され、2014年にオバマ政権下で成功し、トランプ政権下で米国の武器がウクライナに流れ始め、最終的にバイデン政権下でロシアをウクライナとの直接衝突に引き摺り込んだ。
トランプ支持者達は、ドナルド・トランプはこうした特殊利権や世界支配計画から距離を置こうとしていると主張しているが、2017年に発表されたトランプ政権1期目の国家安全保障戦略と、トランプと繋がるアメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy Institute/AFPI)は、ネオコン支配層のものと区別が付かない政策を提案・追求している。
2017年国家安全保障戦略はこう主張する:
「米国は、我々が世界中で直面している政治的・経済的・軍事的競争の激化に対応することになる。中国とロシアはアメリカの権力、影響力、利権に挑戦し、米国の安全と繁栄を損なおうとしている。彼等は経済の自由度と公平さを低下させ、軍隊を増強し、情報とデータをコントロールして社会を抑圧し、影響力を拡大しようと決意している。」
「我々がアメリカの影響力を推進するのは、アメリカの利害を支持し、我々の価値観を反映する世界は、アメリカをより安全で繁栄させるであろうからだ。」
米国の政治的干渉、代理戦争、実際の戦争は、トランプ政権下でも続いていたが、これは驚くことではない。
バイデン政権の2022年国家安全保障戦略は、中国についてこう述べている。
「中国は、国際秩序を再形成する意図と、更にそれを実現する経済的・外交的・軍事的・技術的な力の両方を持つ唯一の競争相手である。北京はインド太平洋地域に勢力圏を拡大し、世界の主導的大国になる野望を抱いている。
北京は、その技術力と国際機関に対する増大する影響力を利用して、自国の権威主義モデルにもっと寛容な条件を作り出し、自らの利益と価値観に特権を与える為に、世界のテクノロジーの使用と規範を形作っている。
北京はよくその経済力を使って他国を威圧している。
中国は、国際経済の開放性から利益を得ながら国内市場へのアクセスを制限し、世界が中国に更に依存するように仕向けつつ、自国の世界への依存を軽減しようとしている。
中国はまた、急速に近代化を遂げ、インド太平洋地域で能力を高め、世界的に強さと影響力を拡大している軍に投資を行っている———その一方で、地域と世界中で、米国の同盟を侵食しようとしている。」
この感情は別に新しいものではない。第2次世界大戦後、米国が一環して追求して来た唯ひとつの戦略の進化形に過ぎない。
AFPIの公式サイトにはこう書いてある:
「中華人民共和国とその与党中国共産党は、米国にとって最大の国家安全保障上の脅威である。
中国の懸念すべき活動は、慢性的に不公正な貿易慣行、米国のテクノロジーの窃盗、近隣諸国への侵攻、環境の乱用、核兵器計画の加速等である。
これに加えて、中国はCOVID-19の起源について透明性を全く欠いている。我々はその行動について、中国に全面的に責任を負わせなければならない。」
それまでの一連の戦略文書と同様、AFPIは、中国の台頭は米国の利益に対する脅威であり、この台頭を封じ込める為に軍事的・経済的措置を講じなければならないと主張している。
半世紀に及ぶこれらの文書には全て、根拠の無い非難以外のものは書いていない。何故米国が他国の貿易や安全保障協力等に口出しする権利が有るのか、何故中国の台頭が米国内の安全保障上の脅威を齎すのか、説明は一切無い、
寧ろこれらの文書は、米国自身の他国への不当な影響力が、中国のもっと魅力的で建設的な関係に取って代わられることへの懸念を表明したものだと言える。
中国のインフラ対アメリカの干渉
中国は伝統的に「米国の裏庭」と言われて来たラテンアメリカを含めて世界中で、投資、インフラ・プロジェクト、貿易を拡大し、各国の発展に貢献することで関係を深めているが、米国がこれに反対している。
米国政府が資金提供するメディア、例えば米国南方軍が運営するディアロゴ・アメリカス(Diálogo Americas)は、中国がペルーに建設しているのは「軍民両用インフラ」であり、「この地域に於ける将来の軍事プレゼンスの足掛かり」であると云うフェイクニュースを流して、中国の影響力に反対している。このサイトは中国軍がペルーの海岸に送り込まれる風刺画も掲載しているが、ラテンアメリカ中で秘密部隊を展開して来たワシントンの歴史を考えるならこれは人をバカにした話だ。
フィナンシャル・タイムズの様なもっと主流の西洋メディアでも、同じ様な物語が無批判に垂れ流されており、米国政府のメガフォンとして機能している。例えば2023年の記事では、中国がペルーの重要インフラを購入していることに対する米高官の懸念を伝えている。
欧米の投資家達は世界中のインフラ、産業、サーヴィスをコントロールすることで利益を最大化しようとしており、これは各国で生活費の急激な高騰を引き起こしている。だが中国の関心はより現実的なものであって、ペルーのエネルギー・インフラは、ペルーと中国との共同プロジェクトや、ペルーの産業が原材料、農作物、工業製品を中国に輸出する為に必要なものだ。
米国は、抗議声明を出すばかりか、全米民主主義基金(NED)、米国際開発庁(USAID)、オープン・ソサエティ等の関連民間組織を通じて、ペルーと世界各地の反対派グループに資金提供し、中国との緊密な協力に反対するよう指導して来た。例えばUSAIDが資金を出している反対派グループ「ポル・ラ・ペスカ(Por la Pesca)」は「漁業保護」を口実に、漁業権を巡ってペルー人と中国の間に敵意を植え付けようとして来た。
中国はペルーが切実に必要としているインフラを提供しているが、米国は、本来なら二国間で解決されるべき瑣末な諸問題を煽ってペルーを中国に敵対させようとしている。
そもそもペルー等のラテンアメリカ諸国が地球の反対側の中国に目を向けたのは、何十年も続く米国の干渉・搾取・虐待が引き起こした未開発状態が原因だが、ワシントンにはこの問題に無関心だし、中国と健全な競争を行う能力も無い。
一例として米国は最近、中国が建設したチャンカイ港の開港式に向けて、カリフォルニアを拠点とするカルレール社が処分した1980年代のF40ディーゼル機関車数台を「寄贈」した。これらの機関車は時代遅れで米国内では既に汚染源でしかないが、ブリンケン国務長官は寄贈式で、「この協定はペルーの持続可能性とモビリティの改善を支援するもの」であり、「通勤者と地域住民によりきれいな空気」を提供するものであると自慢した。
中国と米国が公正な競争を行い協力関係を築けば、ペルーやラテンアメリカ諸国はそこから大きな利益を得ることが出来るだろう。だが現実には、米国は何十年もの間世界中で「優位を保つ」政策を公然と追い求めており、世界を米国と共に高めるのではなく、米国の支配の下に従属させようとしている。
今後の米国の対中政策………
トランプが何十年も続けられて来た中国封じ込め政策を打破するであろうと云う兆候は全く見られない。寧ろあらゆる証拠が、米国がこれまで以上に攻撃的な政策を準備していることを示している。例えば台湾の地位を巡って国際法と二国間協定の両方で中国に対する異議を強化している。フィリピンでは米軍のプレゼンスを拡大し、台湾に対する中国の主権と南シナ海を通る中国貿易を脅かしている。
オバマもトランプもバイデンも、南シナ海に於ける米軍のプレゼンスは貿易の自由を守る為だと主張しているが、米国政府と軍需産業が資金提供している戦略国際研究センター(Center for Strategic and International Studie/CSIS)は、この地域の輸出の1/4以上が中国発で、他の地域諸国の輸出の大部分が中国に流れていることを認めている。中国との貿易を中国の脅威から守るなどと云うのは、全く馬鹿げた話だ。
米国は実際には「航行の自由」を守ると云う口実によって、中国の海上貿易を脅かし、最終的には締め付ける為に軍を配置している。米国がこうして虚偽の口実に基付いて包囲・封じ込め・侵食を拡大させているので、中国は軍事力の拡大と近代化に多額の投資を行ってこれに対抗している。
中でも中国は世界でも最も優れた接近阻止領域拒否(anti-access area denial/A2AD)能力を開発しており、そのお陰で米軍はマルチドメイン作戦と呼ばれるドクトリンの方針転換を余儀無くされている。このドクトリンは中国の攻撃能力(米国の政策立案者達はこれが低開発状態だと認めている)に対する防御ではなく、中国の防衛を突破する能力の構築を目指している。
また米軍は中国近海で中国のミサイル弾幕を回避し生き延びる為に何年も掛けて部隊を再編しており、米海兵隊は機動性の高い対艦ミサイル部隊に、米空軍は非常に機敏で分散した組織に変貌した。
これらの動きは主にバイデン政権下で起こった。2020年も2024年も、トランプは大統領選でバイデンが中国の台頭に無関心か或いは共謀しているとさえ非難しているにも関わらずだ。猛烈な反中国のトランプ政権が発足する頃には、これらの部隊は中国と対決する準備が完全に整っているだろう。トランプ政権下でも、米国と対等かそれに近い敵国(特に中国)の存在を認めないと云う政策は継続されることだろう。
中国の経済力と軍事力は増大している為、米国が成功する見込みは年々低下している。必死になり益々危険度を増すワシントンは自国民の財産と血にそのコストを負わせようとするかも知れない。トランプ政権に期待する人も多いが、違いが起こるとすれば政策がどの様に続けられるかであって、政策が続けられるかどうかではない。
米国の外交政策に本当の変化が訪れるとしたら、レトリックの変化が先に来るだろう。米国の優位性を振り翳すのではなく、中国を対等の相手として認識・尊重し、建設的な競争や、更には協力を求めることになるだろう。
トランプ政権にそうした変化は期待出来ないので、中国としては、米国は物理的に不可能になるまでそうした優位性の追求と対等国の排除と云う政策を続けるだろうと想定しなければならない。他の国々と協力する以外に選択肢が無い、と云う状況に陥った場合にのみ、米国は他国に自らの意志を押し付けたいと云う願望を捨て去るだろう。
外敵からの脅威に対して主権国家として当然の警戒をしているに過ぎない中国を米国が脅威として描いていることは、裏を返せば米国が中国を含め世界中を自分の意の儘に操りたいと云う意志の表明でもある。日本人は自国の政府が「世界征服のお手伝い」をしていると云う自覚をもっと持った方が良いだろう。カマトトぶっていたら全く無用な代理戦争に引き摺り込まれるだけだ。
US Foreign Policy vs. China Continues Under Trump
米国の外交政策の中心課題である中国封じ込め政策はバイデン政権で一旦中断したが、トランプ新政権はこれを中断したところから引き継ぐ構えだ。具体的には例えば以下の様なことだ:
・アジア太平洋地域での米国の軍事増強。
・台湾島を巡る挑発。
・中国周辺諸国への干渉の継続。
これはまた米国によって押し付けられた負債、分断、貧困に代わるものを求める世界中の国々と中国との協力関係を引き続き妨害することも意味する。
トランプは国務長官、国防長官、中央情報局長官等の主要ポストにネオコンのタカ派を任命した。トランプは戦争を終わらせたいのではない、単に戦争の優先順位を変更したいだけだ。
中国を標的とするアジェンダの継続性
第2次世界大戦終結以来、米国の外交政策は中国を含むあらゆる敵国を排除することに拘って来た。
1965年、国務長官ロバート・マクナマラから大統領リンドン・B・ジョンソンに宛てた覚書は、これらの敵国の中で中国がメインであると名指ししていた。この覚書は、ヴェトナムで進行中の米国の軍事作戦は、「共産主義中国を封じ込めると云う米国の長期的政策を支持する場合にのみ意味を成す」と指摘している。中国は「世界に於ける米国の重要性と有効性を損ねる脅威となる大国」として台頭しており、「アジア全体を組織して米国に敵対させようとしている」とはっきり書かれている。
この覚書はまた中国封じ込めの為の3つの戦線を明記している。
a)日本・ROK(大韓民国)戦線
b)インド・パキスタン戦線
c)東南アジア戦線
これらの戦線は現在も継続しており、何万人もの米兵が駐留している。
冷戦が終結すると、米国は世界全体に対して「優位性」を追い求める政策を再開した。これは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれる。これについて報じた1992年のニューヨーク・タイムズの記事は、「冷戦後の時代に於ける米国の政治的・軍事的使命は、西ヨーロッパ、アジア、または旧ソ連の領土に、ライヴァルとなる超大国が出現しないようにすることである」と解説しており、米国の外交政策は、如何なる国も「アメリカの優位性に挑戦」出来ない、「ひとつの超大国によって支配される世界」を目指すものであるとしている。
そして冷戦終結後から現在に至るまで、ジョージ・ブッシュ(父)、ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ(息子)、バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデンの各政権は、北アフリカから中央アジアに至るまで、死と破壊を齎す数々の侵略戦争を繰り広げて来た。
多くの場合、或る政権が次の政権の戦争の為の舞台を整えて来た。一例としてはブッシュJr.政権によるシリア政府打倒の準備だ。この政策は2011年に所謂「アラブの春」の一環としてオバマ政権下で実行され、その後トランプ・バイデン両政権下で継続された。
現在進行中のウクライナ戦争も同様だ。ブッシュJr.時代からウクライナのレジーム・チェンジが追求され、2014年にオバマ政権下で成功し、トランプ政権下で米国の武器がウクライナに流れ始め、最終的にバイデン政権下でロシアをウクライナとの直接衝突に引き摺り込んだ。
トランプ支持者達は、ドナルド・トランプはこうした特殊利権や世界支配計画から距離を置こうとしていると主張しているが、2017年に発表されたトランプ政権1期目の国家安全保障戦略と、トランプと繋がるアメリカ・ファースト政策研究所(America First Policy Institute/AFPI)は、ネオコン支配層のものと区別が付かない政策を提案・追求している。
2017年国家安全保障戦略はこう主張する:
「米国は、我々が世界中で直面している政治的・経済的・軍事的競争の激化に対応することになる。中国とロシアはアメリカの権力、影響力、利権に挑戦し、米国の安全と繁栄を損なおうとしている。彼等は経済の自由度と公平さを低下させ、軍隊を増強し、情報とデータをコントロールして社会を抑圧し、影響力を拡大しようと決意している。」
「我々がアメリカの影響力を推進するのは、アメリカの利害を支持し、我々の価値観を反映する世界は、アメリカをより安全で繁栄させるであろうからだ。」
米国の政治的干渉、代理戦争、実際の戦争は、トランプ政権下でも続いていたが、これは驚くことではない。
バイデン政権の2022年国家安全保障戦略は、中国についてこう述べている。
「中国は、国際秩序を再形成する意図と、更にそれを実現する経済的・外交的・軍事的・技術的な力の両方を持つ唯一の競争相手である。北京はインド太平洋地域に勢力圏を拡大し、世界の主導的大国になる野望を抱いている。
北京は、その技術力と国際機関に対する増大する影響力を利用して、自国の権威主義モデルにもっと寛容な条件を作り出し、自らの利益と価値観に特権を与える為に、世界のテクノロジーの使用と規範を形作っている。
北京はよくその経済力を使って他国を威圧している。
中国は、国際経済の開放性から利益を得ながら国内市場へのアクセスを制限し、世界が中国に更に依存するように仕向けつつ、自国の世界への依存を軽減しようとしている。
中国はまた、急速に近代化を遂げ、インド太平洋地域で能力を高め、世界的に強さと影響力を拡大している軍に投資を行っている———その一方で、地域と世界中で、米国の同盟を侵食しようとしている。」
この感情は別に新しいものではない。第2次世界大戦後、米国が一環して追求して来た唯ひとつの戦略の進化形に過ぎない。
AFPIの公式サイトにはこう書いてある:
「中華人民共和国とその与党中国共産党は、米国にとって最大の国家安全保障上の脅威である。
中国の懸念すべき活動は、慢性的に不公正な貿易慣行、米国のテクノロジーの窃盗、近隣諸国への侵攻、環境の乱用、核兵器計画の加速等である。
これに加えて、中国はCOVID-19の起源について透明性を全く欠いている。我々はその行動について、中国に全面的に責任を負わせなければならない。」
それまでの一連の戦略文書と同様、AFPIは、中国の台頭は米国の利益に対する脅威であり、この台頭を封じ込める為に軍事的・経済的措置を講じなければならないと主張している。
半世紀に及ぶこれらの文書には全て、根拠の無い非難以外のものは書いていない。何故米国が他国の貿易や安全保障協力等に口出しする権利が有るのか、何故中国の台頭が米国内の安全保障上の脅威を齎すのか、説明は一切無い、
寧ろこれらの文書は、米国自身の他国への不当な影響力が、中国のもっと魅力的で建設的な関係に取って代わられることへの懸念を表明したものだと言える。
中国のインフラ対アメリカの干渉
中国は伝統的に「米国の裏庭」と言われて来たラテンアメリカを含めて世界中で、投資、インフラ・プロジェクト、貿易を拡大し、各国の発展に貢献することで関係を深めているが、米国がこれに反対している。
米国政府が資金提供するメディア、例えば米国南方軍が運営するディアロゴ・アメリカス(Diálogo Americas)は、中国がペルーに建設しているのは「軍民両用インフラ」であり、「この地域に於ける将来の軍事プレゼンスの足掛かり」であると云うフェイクニュースを流して、中国の影響力に反対している。このサイトは中国軍がペルーの海岸に送り込まれる風刺画も掲載しているが、ラテンアメリカ中で秘密部隊を展開して来たワシントンの歴史を考えるならこれは人をバカにした話だ。
フィナンシャル・タイムズの様なもっと主流の西洋メディアでも、同じ様な物語が無批判に垂れ流されており、米国政府のメガフォンとして機能している。例えば2023年の記事では、中国がペルーの重要インフラを購入していることに対する米高官の懸念を伝えている。
欧米の投資家達は世界中のインフラ、産業、サーヴィスをコントロールすることで利益を最大化しようとしており、これは各国で生活費の急激な高騰を引き起こしている。だが中国の関心はより現実的なものであって、ペルーのエネルギー・インフラは、ペルーと中国との共同プロジェクトや、ペルーの産業が原材料、農作物、工業製品を中国に輸出する為に必要なものだ。
米国は、抗議声明を出すばかりか、全米民主主義基金(NED)、米国際開発庁(USAID)、オープン・ソサエティ等の関連民間組織を通じて、ペルーと世界各地の反対派グループに資金提供し、中国との緊密な協力に反対するよう指導して来た。例えばUSAIDが資金を出している反対派グループ「ポル・ラ・ペスカ(Por la Pesca)」は「漁業保護」を口実に、漁業権を巡ってペルー人と中国の間に敵意を植え付けようとして来た。
中国はペルーが切実に必要としているインフラを提供しているが、米国は、本来なら二国間で解決されるべき瑣末な諸問題を煽ってペルーを中国に敵対させようとしている。
そもそもペルー等のラテンアメリカ諸国が地球の反対側の中国に目を向けたのは、何十年も続く米国の干渉・搾取・虐待が引き起こした未開発状態が原因だが、ワシントンにはこの問題に無関心だし、中国と健全な競争を行う能力も無い。
一例として米国は最近、中国が建設したチャンカイ港の開港式に向けて、カリフォルニアを拠点とするカルレール社が処分した1980年代のF40ディーゼル機関車数台を「寄贈」した。これらの機関車は時代遅れで米国内では既に汚染源でしかないが、ブリンケン国務長官は寄贈式で、「この協定はペルーの持続可能性とモビリティの改善を支援するもの」であり、「通勤者と地域住民によりきれいな空気」を提供するものであると自慢した。
中国と米国が公正な競争を行い協力関係を築けば、ペルーやラテンアメリカ諸国はそこから大きな利益を得ることが出来るだろう。だが現実には、米国は何十年もの間世界中で「優位を保つ」政策を公然と追い求めており、世界を米国と共に高めるのではなく、米国の支配の下に従属させようとしている。
今後の米国の対中政策………
トランプが何十年も続けられて来た中国封じ込め政策を打破するであろうと云う兆候は全く見られない。寧ろあらゆる証拠が、米国がこれまで以上に攻撃的な政策を準備していることを示している。例えば台湾の地位を巡って国際法と二国間協定の両方で中国に対する異議を強化している。フィリピンでは米軍のプレゼンスを拡大し、台湾に対する中国の主権と南シナ海を通る中国貿易を脅かしている。
オバマもトランプもバイデンも、南シナ海に於ける米軍のプレゼンスは貿易の自由を守る為だと主張しているが、米国政府と軍需産業が資金提供している戦略国際研究センター(Center for Strategic and International Studie/CSIS)は、この地域の輸出の1/4以上が中国発で、他の地域諸国の輸出の大部分が中国に流れていることを認めている。中国との貿易を中国の脅威から守るなどと云うのは、全く馬鹿げた話だ。
米国は実際には「航行の自由」を守ると云う口実によって、中国の海上貿易を脅かし、最終的には締め付ける為に軍を配置している。米国がこうして虚偽の口実に基付いて包囲・封じ込め・侵食を拡大させているので、中国は軍事力の拡大と近代化に多額の投資を行ってこれに対抗している。
中でも中国は世界でも最も優れた接近阻止領域拒否(anti-access area denial/A2AD)能力を開発しており、そのお陰で米軍はマルチドメイン作戦と呼ばれるドクトリンの方針転換を余儀無くされている。このドクトリンは中国の攻撃能力(米国の政策立案者達はこれが低開発状態だと認めている)に対する防御ではなく、中国の防衛を突破する能力の構築を目指している。
また米軍は中国近海で中国のミサイル弾幕を回避し生き延びる為に何年も掛けて部隊を再編しており、米海兵隊は機動性の高い対艦ミサイル部隊に、米空軍は非常に機敏で分散した組織に変貌した。
これらの動きは主にバイデン政権下で起こった。2020年も2024年も、トランプは大統領選でバイデンが中国の台頭に無関心か或いは共謀しているとさえ非難しているにも関わらずだ。猛烈な反中国のトランプ政権が発足する頃には、これらの部隊は中国と対決する準備が完全に整っているだろう。トランプ政権下でも、米国と対等かそれに近い敵国(特に中国)の存在を認めないと云う政策は継続されることだろう。
中国の経済力と軍事力は増大している為、米国が成功する見込みは年々低下している。必死になり益々危険度を増すワシントンは自国民の財産と血にそのコストを負わせようとするかも知れない。トランプ政権に期待する人も多いが、違いが起こるとすれば政策がどの様に続けられるかであって、政策が続けられるかどうかではない。
米国の外交政策に本当の変化が訪れるとしたら、レトリックの変化が先に来るだろう。米国の優位性を振り翳すのではなく、中国を対等の相手として認識・尊重し、建設的な競争や、更には協力を求めることになるだろう。
トランプ政権にそうした変化は期待出来ないので、中国としては、米国は物理的に不可能になるまでそうした優位性の追求と対等国の排除と云う政策を続けるだろうと想定しなければならない。他の国々と協力する以外に選択肢が無い、と云う状況に陥った場合にのみ、米国は他国に自らの意志を押し付けたいと云う願望を捨て去るだろう。
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