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ガザでの公式死者数は嘘。実際の死傷者数はもっとずっと多い(抄訳)

2024/07/31のジョナサン・クック氏の記事の抄訳。報道されているガザ地区の死傷者数は大幅に過少報告されている。

 このブログでも何度か取り上げているが、戦争によって引き起こされる死者数を考える時、爆弾や銃弾による死だけではなく、間接的に引き起こされる死のことも考慮する必要が有る。「外交以上、戦争未満」の行為である制裁(一方的な強制措置)や経済制裁のことを考えると解り易いかも知れない。生活環境が大幅に悪化すると、爆弾が一発も落ちて来なかったとしても、それだけで死亡率は跳ね上がる。直接的な暴力よりも、暴力によって発生する欠乏による死亡の方が、実は遙かに深刻なのだ。大抵のマスコミが伝えるのは基本的に政府や群当局等の公式(大本営)発表で出された過少な数字だけなので、実際の被害を見たかったら、独立した第三者機関等が出した報告を扱っている記事を当たらねばならない。

 更にまた、人道危機はマスコミが好んで取り上げる場所でだけ起こっている訳ではないことも再度指摘しておかねばならない。米帝が直接間接に引き起こした戦争により、イエメン、シリア、リビア、アフガニスタン、スーダン等で今でも大勢の人々が死の淵に立たされているし、米帝による制裁がDPRK、キューバ、イラン、ヴェネズエラ等に与えている影響は正に殺人的だ(ロシアは例外だが、ロシアが前代未聞の制裁に耐えているのは驚異としか言い様が無い)。「報道の自由」が有ると自称する国々のメディアは、日常的に「報道しない自由」を行使している。彼等が自分達の鼻面を引き摺り回すのを許して、自分達の視野や関心や解釈や世界観を左右させる様な自堕落で無責任で自傷的な態度は、大人の市民としては誉められたものではない。
The Official Death Toll in Gaza Is a Lie. The Casualty Numbers Are Far, Far Higher



 ガザの死者数として発表されている数字は、考えられるあらゆる基準から見て少な過ぎる。このことは強調しておかねばならない。特にイスラエルの擁護論者達は、数字が水増しされているとする偽情報キャンペーンに熱心に取り組んでいるのだから尚更だ。

 イスラエルによる虐殺が始まってから7ヵ月後の2024/05/06には、34,735人が死亡したと報じられた。これは毎月平均4,960人のパレスチナ人が殺されたことになる。

 それから約3ヵ月が経ち、報告されている死者数は39,400人で、増えたのは4,665人だ。統計学者に言われるまでもなく、若し増加が直線的であれば、予想される死者数はこの時点で約49,600人になっていただろう。従って単純計算をしただけでも、死亡者数が大幅に足りていないことが分かる。これは説明が必要だ。

 実のところこの説明は簡単だ。イスラエルは何ヵ月も前にガザの施設と病院を含む医療インフラを破壊したが、これによりガザ当局はイスラエルによって殺されたパレスチナ人の数を把握することが不可能になった。死者数の数字は春、イスラエルがガザ地区の病院の破壊し終えて、医療従事者の多くを誘拐した頃から停滞し始めた。

 セーブ・ザ・チルドレンは06/24に、イスラエルによって殺されたと判明している16,000人に加え、ガザ地区で最大21,000人の子供達が行方不明になっていると指摘している。多くの人々が瓦礫の下で孤独で恐ろしい死を迎えているに違い無い———徐々に窒息死したり、脱水症状でゆっくりと亡くなったり。

 だがこれらの衝撃的な数字でさえ、恐らくは大幅な過少集計だ。状況の全体像を見てみよう。



 1)イスラエルによる継続的な砲撃に加えて、パレスチナ人は更に3ヵ月に亘って激化する飢餓に耐えなければならなかった。

 飢餓による死者数は直線的ではなく、指数関数的に増加する。昨日5人が餓死したとすると、今日は20人、明日は150人が死ぬことになる。飢餓が長期化するとはそう云うことだ。長引けば長引く程、餓死する確率は高くなる。



 2)イスラエルが病院と医療機関を破壊した後、パレスチナ人は更に3ヵ月間、医療を受けられなくなった。

 糖尿病、喘息、腎臓の問題、高血圧等の慢性疾患が有る場合、医師の診察を受けずに過ごす時間が長くなる程、治療を受けずに死亡する可能性は高くなる。こうした状況下での死亡率もまた直線的ではなく指数関数的に増加する。



 3) 医療を受けられなければ、日常生活で起こるあらゆることがより危険になる。

 出産が最も解り易い例だが、切り傷や擦り傷ですら死に至る場合も有る。従って医療のアクセスが減っていることを考えると、以前のイスラエルによる虐殺の場合よりも更に多くの人々が日常生活で起きることによって殺されているであろうと推測出来る。



 4)全く同じ理由で、イスラエルの継続的な砲撃で負傷した人々は、以前の攻撃で負傷した人々よりも悪い結果になる可能性が高い。

 医師の数が少ないと云うことは、それだけ治療も受けられず、傷が原因で死亡する可能性が高くなることを意味する。


 
 5)不衛生な状況、水と食料の不足、人々の健康状態の悪化、病院の破壊等———これらの所為で、今や伝染病が勃発している。

 WHOは既にポリオ発生の可能性を警告しているが、コレラ、腸チフス、赤腸等、まだ分離も特定もされていない他の病気も確実に発生するだろう。人々の健康状態がこの様に損なわれていると、風邪さえも致命的なものになる可能性が有る。



 07/05に医学誌ランセットに寄せられた研究者達の書簡は、ガザ地区の死者数が大幅に過小評価されている可能性が高く、仕方が無いので公式発表に頼っている可能性が有ると警告した。

 彼等はイスラエルの爆弾による直接的な死だけでなく、上記の様な間接的な死も考慮に入れる必要が有ると主張している。彼等は非常に控え目な見積もりを出しているが、それに拠ると今後数ヵ月以内に、爆撃だけではなく、医療の欠如、不衛生な環境、飢餓の結果として死亡する人の総数は186,000人、つまり人口の8%となる。

 但しこの数字は、イスラエルの現在の殺戮と飢餓政策が即刻停止され、国際機関が緊急援助を提供すると云う前提で出されたものだ。イスラエルがそんなことを許す様な兆候は全く無いし、西洋がイスラエルにそうした圧力を掛ける兆候も全く無い。

 それ程控え目ではない推計では、ガザ地区の死者数は最終的に60万人、つまり人口の/14近くになる可能性が有る。但しこれもまたイスラエルが即座に方針を転換することを前提としている。

 そして死者が一人出る度に、他の数人が障害を負ったり重傷を負ったりすることも忘れてはならない。現在の統計では、91,000人以上のパレスチナ人が負傷し、その多くが手足を失っていると報告されている。だがこれもまた大幅な過少カウントである可能性が有る。



 これらの数字は痛ましいものではあるが、それらは単なる数字に過ぎない。だがガザの死者達は数字ではない。彼等は人間であり、しかもその半分は子供だ。その命は絶たれ、その可能性は永久に抹消され、愛する人達は何もかもを呑み込む悲嘆に暮れて取り残されている。多くの犠牲者達が極度の苦痛の中で孤独に死に、或いは想像を絶する苦しみに耐えて来た。彼等の命をグラフ上の冷たい統計に還元すべきではない。

 だがそれが現実であり、悲しいことに事実なのだ。少なくともマスコミの見出しを飾る数字は嘘だ。イスラエルの野蛮さは著しく矮小化されている。我々は誤った安心感によって寝かし付けられている。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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