トランプの副大統領としてのJDヴァンスを擁護する(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/07/13の銃撃事件の後にドナルド・トランプはJDヴァンスを副大統領候補に選んだが、世界平和にとってはバイデン-ハリスよりもトランプ-ヴァンスの方がまだマシである。
私も概ねコリブコ氏の見解に賛同だが、日本人の一人としては、ユーラシアの西側の状況が沈静化するのと引き換えに東側がキナ臭くなってしまうのは悩ましいところではある。だが民主党に任せていては、今の儘では今年中にでも本当に核危機が起こりなねないし、目先の第3次世界大戦の危機を回避する為なら、別のもっと低強度の緊張がエスカレートすることは止むを得ないことかなとも思う。
幸いなことに、中国と米帝&属国諸国との間で緊張が高まると言っても、中国の核戦力はロシア程ではないし(ダニエル・エルズバーグの表現を借りれば、中国には「核使用」能力は有るが米露の様な「核攻撃」能力は無い。つまり米国本土の報復能力を無力化するだけの能力は無い)、緊張が高まるにはこの先何年も掛かるので、その先で仮に米中戦争が始まるとしても、直ぐに第3次世界大戦に繋がる訳ではない。
全く碌でもない二択としか言い様が無いし、本音を言えばどちらも選択したくなどないのだが、それ以外に選択肢が残されていない様なので仕方が無い。無い物ねだりをしてみたところで現実の強固な壁はどうしたって乗り越えられない。ここまで西洋市民の洗脳教化が進んでしまっている現状では、反戦運動を組織して民衆パワーで現状を変えることなど夢のまた夢だ。
In Defense Of JD Vance As Trump’s VP
JDヴァンスへの批判に対する回答む
ドナルド・トランプ大統領候補はオハイオ州のJDヴァンス上院議員を副大統領に選出ぶことにしたが、これは代替メディア・コミュニティ(AMC)の一部のメンバーを激怒させた。彼等は、これはMAGA(Make America Great Again)運動にとって後退を意味すると主張している。彼等が挙げるヴァンスの欠点は次の通りだ。
1)ヴァンスはイラクへ行った米海兵隊員だった。
2)ヴァンスはベンチャー・キャピタリストだった。
3)ヴァンスは元ネバー・トランパー(Never Trumper)だった。
彼等はヴァンスがネオコンであり、中国とイランに対する彼のタカ派的立場がそれを裏付けていると思っている。
だが実際にはヴァンスの世界観はそれ程単純ではない。
1)イラクで米海兵隊員として働いていた経歴については、彼自身はこう語っている:「私は騙されていたんです———外交政策当局の約束は全くの冗談でした。」
2)ベンチャー・キャピタリストであったお陰で、シリコンバレーの一部の権力者達を民主党に敵対させる(これは選挙のゲーム・チェンジャーになるかも知れない)のに尽力したピーター・ティールの様な一流エリートと親密な友情を結ぶことが出来た。
3)ヴァンスは確かに以前はネバー・トランパーだったが、そのお陰で、「赤い錠剤」を飲むまではトランプを毛嫌いしていたが、現在はトランプを支持するかどうか真剣に検討している何百万人もの有権者達にアピールすることが出来る。
彼自身はこう言っている:
「10年前、私はドナルド・トランプについて悪口を言いました。私はアメリカ国民、2016年には大統領に懐疑的だったかも知れない人達、そして現在も懐っているかも知れない人達に、我々は結果を見たと云う点を証明出来ます。」
中国とイランに対するタカ派的立場は予想出来たものだ。中国は米国のシステム的なライヴァルだし、イランは中東地域に於ける米国の覇権を脅かす存在だ。
だがロシアとウクライナについてのヴァンスのプラグマティックな発言は、彼がイデオロギーに凝り固まった戦争屋ではないことを証明している。恐らく彼は中国とイランとの競争もプラグマティックに管理するだろう。
彼が覇権主義者であることは間違い無いが、米国の政治家なら当たり前だ。だが彼はイラクの米海兵隊時代にこの体制について学んだことは決して忘れないだろう。
MAGAの世界観に於ける中国とロシアの役割の解説
ヴァンスの世界観は、米国は軍事的にも対外援助の面でも海外との関わりをよく選ぶべきだと云うもので、トランプのNATO計画の支持者でもある。トランプは欧州のNATO諸国に強制してロシア封じ込めへの関与を強化させ、このブロックを「休眠状態」にする一方で、米国は中国封じ込めに集中する為に「アジアへの軸足変更(回帰)」を行おうと考えている。
トランプはMAGAの主要メンバーなので中国に対しては当然タカ派だ。彼は中国に対しては非常に強硬派であって、2016年当時には数千億ドルに達していた天文学的な貿易赤字のバランス調整を行うと云う理由でそれを正当化した。
当時の彼の問題は、義理の息子ジャレッド・クシュナーの影響を受け過ぎてネオコンの支配下に置かれてしまったことだった。だが息子のドナルド Jr.、スティーヴン・バノン、タッカー・カールソンの助言を受けてヴァンスを副大統領に選んだと報じられているので、恐らく彼はそこから教訓を学んだものと思われる。
トランプとヴァンスは、米国の封じ込めの焦点をロシアから中国に移すと云うヴィジョンを共有している。ロシアに余り圧力を掛け過ぎると、ロシアは止む無く中国に過度に依存することになり、その結果中国の超大国化が加速することになる。中米二重多極体制が確立することは、中国が米国と対等の存在になると云うことなので、それは米国の覇権に対する深刻な挑戦となる。彼等はそうしたシナリオを阻止したいのだ。
その為には、ロシアに対する圧力を或る程度緩和し、ロシアが天然資源の輸出先として、中国ではなくインドや他のグローバル・サウス諸国(特にイスラム諸国)をもっと頼る様に仕向けることだ。ロシア側としては勿論こうした圧力軽減は歓迎すべきものだ。それがウクライナでの妥協を通じてヨーロッパに於ける国家安全保障上の利益の一部が最終的に尊重されることになる場合には尚更だ。
ロシアの大戦略上の利益
ロシアは中国嫌いではないが、不均衡に中国に依存することは避けねばならない。ロシアは戦略的自治を保ちたいと考えている為、対外輸出収入の大部分を単一のパートナーに依存する訳には行かない。これは単純なプラグマティズムであって、ロシアは中国中心のアジア戦略を軌道修正したいと思っている。
プーチンがDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)やヴェトナムを訪問し、インドのモディ首相を歓迎したのも、中国への過度な依存を避けたいからだ。ヴァルダイ国際討論クラブのプログラム・ディレクター、ティモフェイ・ボルダチョフはRTに掲載された「ロシアがアジア戦略を再定義した方法」でこの戦略を説明している。
トランプがヴァンスを副大統領に選んだことはこの点で重要だ。何故なら両者ともウクライナ紛争を迅速に解決したいと思っており、ロシアはそれを受け入れるだろうからだ。
代替メディアの活動家問題
ウクライナでの代理戦争は容易に制御不能となり第3次世界大戦に突入する可能性が有ることを知りつつ、従ってヴァンスの言う通り出来るだけ早急にこの問題を外交的に終わらせなければならないことを承知しているにも関わらず、AMCの中には依然として彼に不満を抱いている人も居る。
こうした不満を抱いている人の多くは根っからの活動家でイデオローグだ。彼等は一般的には世界平和を望んでおり、特に中国とイランに対する米国の圧力は少ない方が良いと思っているが、彼等はヴァンスが中国とイランに対してタカ派的な立場を取っているので、彼を副大統領として認めることが出来ないでいる。だからこそ彼等はヴァンスが中国やイランに対して第3次世界大戦を引き起こすかも知れないと恐怖を煽っている。
だが彼等は政治的・イデオロギー的な理由から扇動しているだけで、現実のリスクを誇張している。
またトランプが自分の世界観(ロシアに対してはプラグマティックだが中国とイランに対しては敵対的)を共有しない人物を副大統領に選ぶなどと本気で考えていたのであれば、彼等は余りにも世間知らずだ。
トランプの身に何かが起こった時にヴァンスが齎すかも知れないリスクについて、過度の恐怖を煽ったり彼の信用を貶めたりすること無く注意を喚起することは可能だ。
イカサマを暴露する
但しこれらの中には自分達の懸念について誠実ではない人達も含まれている。
MAGA運動について自分なりの解釈で過度に期待していた人達は、トランプがヴァンスを選んだことで期待を打ち砕かれたと感じ、非常に怒っている。
また、MAGAを本気で支持したことは一度も無いが、中国やイランに対する政策等の特定の理由から「便宜的な同盟」を結ぼうとした人達も居る。だがトランプ2.0の政策は彼等の見解と明らかに一致しない為、彼等は意図的にMAGAの信用を貶めようとしている(特にMAGAに対して好意的だった外国人達)。そしてトランプはMAGAを「裏切った」と云うメッセージをソーシャル・メディアを通じて広めている。
だがトランプは外交政策面に於てはMAGAが常に掲げて来たことを遂行しているに過ぎず、その為に後継者への道を切り拓こうとしている。その路線とは、米国の一極覇権の衰退を減速させる為に、米国の主要なライヴァル達に対して「タフ」な態度を取る、と云うものだ。
グローバルなシステム移行に於けるMAGAの役割
トランプとヴァンスは、先ずロシアとの第3次世界大戦のリスクを緩和したいと考えている。これは平和にとっては正に前向きな展開であり、成功すれば人類を核戦争の瀬戸際から引き戻すことになるだろう。
多極化へ向けたグローバルなシステム移行はロシアが特別軍事作戦を開始して移行、前例の無い程加速しており、1990年代の米国覇権一極体制を回復することは最早不可能だ。従ってMAGAの外交政策は一極体制を取り戻すことではなく、この瞬間を責任を持って管理することだ。
米国が現在望み得る最善のシナリオは、創造的な、そして理想的には平和的な手段を通じて、その特権的地位を可能な限り長く維持することだ。旧冷戦後の様な比類の無い優位性を享受することは二度と無いだろうが、だからと云って米国が直ぐに所謂「普通の国」になることは無いだろうし、況してやAMCの多くの人達が予想している様に、近い将来に崩壊する様なことにもならない。。
トランプとヴァンスが政権に就けば、米国は可能な限りその衰退のペースを遅らせ、或る程度の地位を取り戻すことを優先課題とするだろう。
トランプ-ヴァンスとバイデン-ハリスとの違いはこうなる。
・MAGAは国際的には第3次世界大戦を阻止しつつ、国内では社会経済的生活水準を向上させたいと考えている。
・民主党はアメリカ人のことよりも、お仲間であるリベラル・グローバリストのエリート層のことを気に掛けており、それが第3次世界大戦を引き起こすリスクを孕んでいたとしても気にしない。
どんな大統領候補であってもあらゆる活動家を満足させることは出来ないだろうが、比較的に言えば、全体としてはトランプ-ヴァンスの方が、バイデン-ハリスよりも世界平和にとって遙かに好ましい。
私も概ねコリブコ氏の見解に賛同だが、日本人の一人としては、ユーラシアの西側の状況が沈静化するのと引き換えに東側がキナ臭くなってしまうのは悩ましいところではある。だが民主党に任せていては、今の儘では今年中にでも本当に核危機が起こりなねないし、目先の第3次世界大戦の危機を回避する為なら、別のもっと低強度の緊張がエスカレートすることは止むを得ないことかなとも思う。
幸いなことに、中国と米帝&属国諸国との間で緊張が高まると言っても、中国の核戦力はロシア程ではないし(ダニエル・エルズバーグの表現を借りれば、中国には「核使用」能力は有るが米露の様な「核攻撃」能力は無い。つまり米国本土の報復能力を無力化するだけの能力は無い)、緊張が高まるにはこの先何年も掛かるので、その先で仮に米中戦争が始まるとしても、直ぐに第3次世界大戦に繋がる訳ではない。
全く碌でもない二択としか言い様が無いし、本音を言えばどちらも選択したくなどないのだが、それ以外に選択肢が残されていない様なので仕方が無い。無い物ねだりをしてみたところで現実の強固な壁はどうしたって乗り越えられない。ここまで西洋市民の洗脳教化が進んでしまっている現状では、反戦運動を組織して民衆パワーで現状を変えることなど夢のまた夢だ。
In Defense Of JD Vance As Trump’s VP
JD Vance is a shrewd and calculated pick for vice president by Donald Trump, @patricialopez_4 says. It's a nod to the former president's MAGA base https://t.co/SYrVwYyNyp via @opinion
— Bloomberg (@business) July 16, 2024
JDヴァンスへの批判に対する回答む
ドナルド・トランプ大統領候補はオハイオ州のJDヴァンス上院議員を副大統領に選出ぶことにしたが、これは代替メディア・コミュニティ(AMC)の一部のメンバーを激怒させた。彼等は、これはMAGA(Make America Great Again)運動にとって後退を意味すると主張している。彼等が挙げるヴァンスの欠点は次の通りだ。
1)ヴァンスはイラクへ行った米海兵隊員だった。
2)ヴァンスはベンチャー・キャピタリストだった。
3)ヴァンスは元ネバー・トランパー(Never Trumper)だった。
彼等はヴァンスがネオコンであり、中国とイランに対する彼のタカ派的立場がそれを裏付けていると思っている。
だが実際にはヴァンスの世界観はそれ程単純ではない。
1)イラクで米海兵隊員として働いていた経歴については、彼自身はこう語っている:「私は騙されていたんです———外交政策当局の約束は全くの冗談でした。」
2)ベンチャー・キャピタリストであったお陰で、シリコンバレーの一部の権力者達を民主党に敵対させる(これは選挙のゲーム・チェンジャーになるかも知れない)のに尽力したピーター・ティールの様な一流エリートと親密な友情を結ぶことが出来た。
3)ヴァンスは確かに以前はネバー・トランパーだったが、そのお陰で、「赤い錠剤」を飲むまではトランプを毛嫌いしていたが、現在はトランプを支持するかどうか真剣に検討している何百万人もの有権者達にアピールすることが出来る。
彼自身はこう言っている:
「10年前、私はドナルド・トランプについて悪口を言いました。私はアメリカ国民、2016年には大統領に懐疑的だったかも知れない人達、そして現在も懐っているかも知れない人達に、我々は結果を見たと云う点を証明出来ます。」
中国とイランに対するタカ派的立場は予想出来たものだ。中国は米国のシステム的なライヴァルだし、イランは中東地域に於ける米国の覇権を脅かす存在だ。
だがロシアとウクライナについてのヴァンスのプラグマティックな発言は、彼がイデオロギーに凝り固まった戦争屋ではないことを証明している。恐らく彼は中国とイランとの競争もプラグマティックに管理するだろう。
彼が覇権主義者であることは間違い無いが、米国の政治家なら当たり前だ。だが彼はイラクの米海兵隊時代にこの体制について学んだことは決して忘れないだろう。
MAGAの世界観に於ける中国とロシアの役割の解説
ヴァンスの世界観は、米国は軍事的にも対外援助の面でも海外との関わりをよく選ぶべきだと云うもので、トランプのNATO計画の支持者でもある。トランプは欧州のNATO諸国に強制してロシア封じ込めへの関与を強化させ、このブロックを「休眠状態」にする一方で、米国は中国封じ込めに集中する為に「アジアへの軸足変更(回帰)」を行おうと考えている。
トランプはMAGAの主要メンバーなので中国に対しては当然タカ派だ。彼は中国に対しては非常に強硬派であって、2016年当時には数千億ドルに達していた天文学的な貿易赤字のバランス調整を行うと云う理由でそれを正当化した。
当時の彼の問題は、義理の息子ジャレッド・クシュナーの影響を受け過ぎてネオコンの支配下に置かれてしまったことだった。だが息子のドナルド Jr.、スティーヴン・バノン、タッカー・カールソンの助言を受けてヴァンスを副大統領に選んだと報じられているので、恐らく彼はそこから教訓を学んだものと思われる。
トランプとヴァンスは、米国の封じ込めの焦点をロシアから中国に移すと云うヴィジョンを共有している。ロシアに余り圧力を掛け過ぎると、ロシアは止む無く中国に過度に依存することになり、その結果中国の超大国化が加速することになる。中米二重多極体制が確立することは、中国が米国と対等の存在になると云うことなので、それは米国の覇権に対する深刻な挑戦となる。彼等はそうしたシナリオを阻止したいのだ。
その為には、ロシアに対する圧力を或る程度緩和し、ロシアが天然資源の輸出先として、中国ではなくインドや他のグローバル・サウス諸国(特にイスラム諸国)をもっと頼る様に仕向けることだ。ロシア側としては勿論こうした圧力軽減は歓迎すべきものだ。それがウクライナでの妥協を通じてヨーロッパに於ける国家安全保障上の利益の一部が最終的に尊重されることになる場合には尚更だ。
ロシアの大戦略上の利益
ロシアは中国嫌いではないが、不均衡に中国に依存することは避けねばならない。ロシアは戦略的自治を保ちたいと考えている為、対外輸出収入の大部分を単一のパートナーに依存する訳には行かない。これは単純なプラグマティズムであって、ロシアは中国中心のアジア戦略を軌道修正したいと思っている。
プーチンがDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)やヴェトナムを訪問し、インドのモディ首相を歓迎したのも、中国への過度な依存を避けたいからだ。ヴァルダイ国際討論クラブのプログラム・ディレクター、ティモフェイ・ボルダチョフはRTに掲載された「ロシアがアジア戦略を再定義した方法」でこの戦略を説明している。
トランプがヴァンスを副大統領に選んだことはこの点で重要だ。何故なら両者ともウクライナ紛争を迅速に解決したいと思っており、ロシアはそれを受け入れるだろうからだ。
代替メディアの活動家問題
ウクライナでの代理戦争は容易に制御不能となり第3次世界大戦に突入する可能性が有ることを知りつつ、従ってヴァンスの言う通り出来るだけ早急にこの問題を外交的に終わらせなければならないことを承知しているにも関わらず、AMCの中には依然として彼に不満を抱いている人も居る。
こうした不満を抱いている人の多くは根っからの活動家でイデオローグだ。彼等は一般的には世界平和を望んでおり、特に中国とイランに対する米国の圧力は少ない方が良いと思っているが、彼等はヴァンスが中国とイランに対してタカ派的な立場を取っているので、彼を副大統領として認めることが出来ないでいる。だからこそ彼等はヴァンスが中国やイランに対して第3次世界大戦を引き起こすかも知れないと恐怖を煽っている。
だが彼等は政治的・イデオロギー的な理由から扇動しているだけで、現実のリスクを誇張している。
またトランプが自分の世界観(ロシアに対してはプラグマティックだが中国とイランに対しては敵対的)を共有しない人物を副大統領に選ぶなどと本気で考えていたのであれば、彼等は余りにも世間知らずだ。
トランプの身に何かが起こった時にヴァンスが齎すかも知れないリスクについて、過度の恐怖を煽ったり彼の信用を貶めたりすること無く注意を喚起することは可能だ。
イカサマを暴露する
但しこれらの中には自分達の懸念について誠実ではない人達も含まれている。
MAGA運動について自分なりの解釈で過度に期待していた人達は、トランプがヴァンスを選んだことで期待を打ち砕かれたと感じ、非常に怒っている。
また、MAGAを本気で支持したことは一度も無いが、中国やイランに対する政策等の特定の理由から「便宜的な同盟」を結ぼうとした人達も居る。だがトランプ2.0の政策は彼等の見解と明らかに一致しない為、彼等は意図的にMAGAの信用を貶めようとしている(特にMAGAに対して好意的だった外国人達)。そしてトランプはMAGAを「裏切った」と云うメッセージをソーシャル・メディアを通じて広めている。
だがトランプは外交政策面に於てはMAGAが常に掲げて来たことを遂行しているに過ぎず、その為に後継者への道を切り拓こうとしている。その路線とは、米国の一極覇権の衰退を減速させる為に、米国の主要なライヴァル達に対して「タフ」な態度を取る、と云うものだ。
グローバルなシステム移行に於けるMAGAの役割
トランプとヴァンスは、先ずロシアとの第3次世界大戦のリスクを緩和したいと考えている。これは平和にとっては正に前向きな展開であり、成功すれば人類を核戦争の瀬戸際から引き戻すことになるだろう。
多極化へ向けたグローバルなシステム移行はロシアが特別軍事作戦を開始して移行、前例の無い程加速しており、1990年代の米国覇権一極体制を回復することは最早不可能だ。従ってMAGAの外交政策は一極体制を取り戻すことではなく、この瞬間を責任を持って管理することだ。
米国が現在望み得る最善のシナリオは、創造的な、そして理想的には平和的な手段を通じて、その特権的地位を可能な限り長く維持することだ。旧冷戦後の様な比類の無い優位性を享受することは二度と無いだろうが、だからと云って米国が直ぐに所謂「普通の国」になることは無いだろうし、況してやAMCの多くの人達が予想している様に、近い将来に崩壊する様なことにもならない。。
トランプとヴァンスが政権に就けば、米国は可能な限りその衰退のペースを遅らせ、或る程度の地位を取り戻すことを優先課題とするだろう。
トランプ-ヴァンスとバイデン-ハリスとの違いはこうなる。
・MAGAは国際的には第3次世界大戦を阻止しつつ、国内では社会経済的生活水準を向上させたいと考えている。
・民主党はアメリカ人のことよりも、お仲間であるリベラル・グローバリストのエリート層のことを気に掛けており、それが第3次世界大戦を引き起こすリスクを孕んでいたとしても気にしない。
どんな大統領候補であってもあらゆる活動家を満足させることは出来ないだろうが、比較的に言えば、全体としてはトランプ-ヴァンスの方が、バイデン-ハリスよりも世界平和にとって遙かに好ましい。
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