フランス外相は愚かにも中国にロシアを非難するよう要求したが、どうにかならなかったのか(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/04/01、フランスのステファン・セジュルヌ新外相は中国の王毅外相に向かってロシアを非難せよと要求した。この外交的失態はフランスの外交の急激な変質を示している。
France Knows Better Than For Its Foreign Minister To Demand That China Condemns Russia
フランス新外相の愚かな発言
2024/04/01、フランスのステファン・セジュルヌ新外相は北京で中国の王毅外相と会談を行った際、「我々は中国がロシアに対して非常に明確なメッセージを送ることをはっきりと期待しています」と要述べた。つまり西洋に同調してロシアを非難せよと要求した訳だ。
この発言を背景を説明しておくとこうだ。
・恐らくロシアが計画しているであろう攻勢に先立って、ウクライナ紛争のエスカレーションは避けられない。
・スイスは和平交渉を提案しているが、具体的な目処はまだ立っていない。
・中国の習近平国家主席は恐らく5月初旬(ロシアの反撃も和平交渉もまだ起こっていない時点)にフランスを訪問すると予想されている。
フランス外交の変質
フランスは自国の外相に、中国にロシアを非難するよう要求させることが如何に愚かなことであるかを知っていても良かった筈だ。だがこの外交上の失態は、近年のフランス外交が如何に変質してしまったかを如実に示している。
ヴァルダイ討論クラブは03/28に、何故この様な失態が起こったのかを解明してくれる、一読に値する洞察力に富んだ報告書を発表した。タイトルは「国益を作り上げる:外交訓練は如何に主権に影響を与えるか」。
Crafting National Interests: How Diplomatic Training Impacts Sovereignty
この研究に拠ると、「或る国の外交人材育成の影響を受けた外交団の有効性は、国際関係システムに於ける立場に基付いて、異なる形で現れる。」
フランスは国家認識論と外交訓練に対する機能的アプローチを特徴とする「国際関係教育の深い伝統」を持っていると評価されている。
「だが、エリゼ宮が導入した改革の最中、フランスでは外交職が危機に瀕している。この変化により、フランスの学派はよりグローバルな機能的アプローチに向かう可能性が有るが、これにより国際関係研究に於ける国の伝統が弱体化する可能性が有る。」
つまりフランス外交は自国の国益ではなく、自国の国益を後回しにしてグローバルな利益を優先する傾向が強まっていると云うことだ。セジュルヌ新外相はこれまで外交経験が無かったので、この傾向の顕著な事例となっている。彼はグローバルな利益を代表しているが、この領域での基本的な知識を欠いている。
プロの外交官達は無力化されている
確かに、広範な専門知識を持っていると見做されているフランスの常任外交官僚のメンバー達は居なくなった訳ではなく、依然として自国の国益を促進してはいるが、彼等はその非専門家のボスが北京を訪れている間、彼に影響を与えることが出来なかった。
フランス外相が中国に対してロシアを非難するよう要求することが、況してやそれを公の場で口にすることが如何に愚かなことなのか、キャリア外交官達は十分承知していた筈だ。これは非常に恥ずべきことであり、フランス全体にとっての不名誉となる。
現実的に言って、中国はロシアを非難しない。中国はウクライナ紛争に関して原則中立政策を実践していて、同じく中立の立場を貫いているインドと、グローバル・サウスのリーダーシップを競い合うことを想定している。対立を続ける両国はどちらも、ロシアを相手に近付けることを望んでいない。況してやグローバル・サウス諸国の目から見て自国の評判を落とす様な真似は出来ない(グローバル・サウス諸国の一部は国連でロシアに反対票を投じたが、それは西洋から圧力を受けてのことだった)。ロシアを非難することは、中国の国益にもインドの国益にもそぐわないのだ。
また、中国は自他共に認める大国だが、国際システムに於ては超大国として機能している。従ってフランスの要求に従ってロシアを非難することは、中国が自国より遙かに弱い国の要求に応じたと云うメッセージを世界中に送ることになる。これはその数千年の歴史の殆どを通じて自らを世界の中心であると見做して来た誇り高き文明国家にとって全く受けれ入れ難いことだ。
この事件から得られる観察は、フランス外交はヴァルダイ討論クラブの評価よりも更に急速に変化していると云うことだ。
フランスの外交訓練に対する国家的アプローチからグローバルなアプローチへの移行は、エマニュエル・マクロン大統領が7年前に就任する前から始まっていたが、マクロンの下で加速し、最早フランスには「外交」と呼べるものが認められない程になっている。
France Knows Better Than For Its Foreign Minister To Demand That China Condemns Russia
フランス新外相の愚かな発言
2024/04/01、フランスのステファン・セジュルヌ新外相は北京で中国の王毅外相と会談を行った際、「我々は中国がロシアに対して非常に明確なメッセージを送ることをはっきりと期待しています」と要述べた。つまり西洋に同調してロシアを非難せよと要求した訳だ。
この発言を背景を説明しておくとこうだ。
・恐らくロシアが計画しているであろう攻勢に先立って、ウクライナ紛争のエスカレーションは避けられない。
・スイスは和平交渉を提案しているが、具体的な目処はまだ立っていない。
・中国の習近平国家主席は恐らく5月初旬(ロシアの反撃も和平交渉もまだ起こっていない時点)にフランスを訪問すると予想されている。
フランス外交の変質
フランスは自国の外相に、中国にロシアを非難するよう要求させることが如何に愚かなことであるかを知っていても良かった筈だ。だがこの外交上の失態は、近年のフランス外交が如何に変質してしまったかを如実に示している。
ヴァルダイ討論クラブは03/28に、何故この様な失態が起こったのかを解明してくれる、一読に値する洞察力に富んだ報告書を発表した。タイトルは「国益を作り上げる:外交訓練は如何に主権に影響を与えるか」。
Crafting National Interests: How Diplomatic Training Impacts Sovereignty
この研究に拠ると、「或る国の外交人材育成の影響を受けた外交団の有効性は、国際関係システムに於ける立場に基付いて、異なる形で現れる。」
フランスは国家認識論と外交訓練に対する機能的アプローチを特徴とする「国際関係教育の深い伝統」を持っていると評価されている。
「だが、エリゼ宮が導入した改革の最中、フランスでは外交職が危機に瀕している。この変化により、フランスの学派はよりグローバルな機能的アプローチに向かう可能性が有るが、これにより国際関係研究に於ける国の伝統が弱体化する可能性が有る。」
つまりフランス外交は自国の国益ではなく、自国の国益を後回しにしてグローバルな利益を優先する傾向が強まっていると云うことだ。セジュルヌ新外相はこれまで外交経験が無かったので、この傾向の顕著な事例となっている。彼はグローバルな利益を代表しているが、この領域での基本的な知識を欠いている。
プロの外交官達は無力化されている
確かに、広範な専門知識を持っていると見做されているフランスの常任外交官僚のメンバー達は居なくなった訳ではなく、依然として自国の国益を促進してはいるが、彼等はその非専門家のボスが北京を訪れている間、彼に影響を与えることが出来なかった。
フランス外相が中国に対してロシアを非難するよう要求することが、況してやそれを公の場で口にすることが如何に愚かなことなのか、キャリア外交官達は十分承知していた筈だ。これは非常に恥ずべきことであり、フランス全体にとっての不名誉となる。
現実的に言って、中国はロシアを非難しない。中国はウクライナ紛争に関して原則中立政策を実践していて、同じく中立の立場を貫いているインドと、グローバル・サウスのリーダーシップを競い合うことを想定している。対立を続ける両国はどちらも、ロシアを相手に近付けることを望んでいない。況してやグローバル・サウス諸国の目から見て自国の評判を落とす様な真似は出来ない(グローバル・サウス諸国の一部は国連でロシアに反対票を投じたが、それは西洋から圧力を受けてのことだった)。ロシアを非難することは、中国の国益にもインドの国益にもそぐわないのだ。
また、中国は自他共に認める大国だが、国際システムに於ては超大国として機能している。従ってフランスの要求に従ってロシアを非難することは、中国が自国より遙かに弱い国の要求に応じたと云うメッセージを世界中に送ることになる。これはその数千年の歴史の殆どを通じて自らを世界の中心であると見做して来た誇り高き文明国家にとって全く受けれ入れ難いことだ。
この事件から得られる観察は、フランス外交はヴァルダイ討論クラブの評価よりも更に急速に変化していると云うことだ。
フランスの外交訓練に対する国家的アプローチからグローバルなアプローチへの移行は、エマニュエル・マクロン大統領が7年前に就任する前から始まっていたが、マクロンの下で加速し、最早フランスには「外交」と呼べるものが認められない程になっている。
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