fc2ブログ

中国はパリ協定を破棄。米国の努力は辛く無意味なものに(抄訳)

「エネルギー・気候・環境センター」の所長であり、ハーバート・アンド・ジョイス・モーガン・フェローであるダイアナ・フルヒトゴット・ロス氏の記事の抄訳。中国は脱酸素化の道を進むが、慎重に段階的に行く。米国は実現不可能な道を無理矢理突き進む。中国は西洋から、イデオロギーによって動いている国だと描写されることが多いが、脱炭素化については中国は寧ろ健全なプラグマティズムによって軌道修正を図っており、イデオロギーによって破滅的な道を歩んでいるのは米国の方だ。
China Abandons Paris Agreement, Making U.S. Efforts Painful and Pointless



中国は脱炭素路線を行くが段階的に行く

 2023/07/18のブルームバーグと07/19のワシントン・ポストの報道に拠れば、中国の習近平主席は西洋の「実質ゼロ」政策に同調するつもりは無く、この問題に関しては中国は外部の要因に影響されずに独自の方針を貫くことを再確認した。

 この発言はタイミング的には、気候変動特使ジョン・ケリーが対話再開の為に北京を訪問中、アントニー・ブリンケン国務長官が到着した直後、そしてヘンリー・キッシンジャー元元国務長官が訪問する直前に行われた。

 この発言は遅くとも2030年以降には二酸化炭素排出量を削減すると云う2015年の約束とは矛盾している様だが、中国がこの方針を明らかにしたのはこれが最初ではない。

 西洋の制裁によってエネルギー危機が悪化した最中の2022/10/17の報道では、習主席は党大会で、中国は脱炭素化路線に向けて進みはするが、クリーン・エネルギーが確実に代替が可能であると確信するまでは、化石燃料の使用を止めないとの方針を再確認した。彼は「古いものを捨てる前に新しいものを得ると云う原則」に従いつつ、グリーンなイデオロギーよりもエネルギー安全保障を優先することを明らかにした。




米国は実現不可能なグリーン路線を突き進む

 他方、米国の環境保護庁(ESA)はグリーン路線を拡大し、4月には2030年までに新車販売の60%、2032年までに2/3をバッテリー駆動の電気自動車にすることを義務付けるテールパイプ規則案を発表した。そして5月には、殆どの発電所は2040年までに炭素排出量の90%を抑えるか埋めるかしなければならないと云う発電所規則案を発表した。

 これらの規則は米国経済に年間数百億ドルのコストを齎すことになるが、中国が米国の排出量を自国の排出量で置き換えた場合、世界全体の排出量は削減されない。

 ヘリテージ財団の首席統計学者ケヴィン・ダヤラトナに拠れば、仮に米国が全ての化石燃料を廃止したとしても、2100年には摂氏1度の20分の2しか変わらない

 テールパイプ規則により運転コストは上昇し、特に低所得の世帯の負担を重くする。新しい電気自動車(EV)の価格は同等のガソリン車よりも約10,000ドルから25,000ドル高く、長距離の旅行や自宅に充電ポートが無い場合には充電に時間が掛かる為に不便だ。

 米国で販売される自動車の約3/4が中古車だが、EVの場合、バッテリーの状態が不確実で、新品のバッテリーには10,000ドル以上の費用が掛かることも有るので、中古EVを販売するのは困難だ。またEVのバッテリーは寒冷地では性能が20~40%落ちるが、これが2021年末の時点でノースダコタ州で340台、ワイオミング州で510台しか登録されていない理由のひとつだろう。

 EVはガスを排出しない。だがEVは充電する必要が有り、発電するには排出ガスを発生させる必要が有るので、最終的にはやっぱり排出ガスが出ることになる。EPAでさえ規則集で、「一部の地域では発電量の増加により、周囲のSO2、PM2.5、オゾン、または一部の大気有害物質が増加すると予想される」と述べている。

 数百万台のEVを稼働させるには大規模な送電網も新たに必要になるが、再生可能エネルギーでは需要を満たすことは不可能である為、石炭火力発電所に頼らざるを得ない。だが、発電所規則に沿って炭素排出量の90%を抑える様なことはこれまでに行われたことが無く、この技術は「十分に実証された」ものでもない。現状で発電所が完全に規則を満たす為には、閉鎖するしか無い。

 電化が推進される中でもっと電力が必要だと云う時に電力が遮断されれば、多くの停電が起こるだろう。特に電力が必要とされる異常な高温または低温の時に停電になったりすると、多くの人々の命にも関わることになる。

 更に、電気料金の上昇は経済的に悪影響を及ぼすことになる。物価は上昇し、製造業は海外へ移転し、一時解雇や失業者は増加するだろう。これら全てがGDP成長率を低下させ、米国人の生活水準を低下させるだろう。

 EPAの所為で、米国は苦しいばかりで何の意味も無い道を進むことになる。
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

ブログランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ PVアクセスランキング にほんブログ村 人気ブログランキング
良ければクリックをお願いします。
最新記事
カテゴリ
リンク
最新コメント
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR