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中国の人口動態危機:農民達は発言権を持つべきだ(要点と補足)

以前のレビューでも紹介したが、The Unknown Cultural Revolution と云う名著の著者、中国出身のハン・ドンピン氏が、一人っ子政策が生んだ中国の人口問題について書いているので、多少補足しつつ要点を纏めてみた。中国の一人っ子政策は後世の人々が呆れ返る様な世紀の愚策と呼ぶべき代物であって、これは米国が中国に仕掛けた社会的時限爆弾の様なものだと思うが、ポスト毛沢東時代の中国共産党が文化革命路線の成果を台無しにして草の根の声を無視する様な反革命的所業に走らなければ、この様な過ちは避けられたかも知れない。中国程巨大な隣人の過ちはアジア全体に広範囲な影響を齎すだろうから、日本人も呑気に傍観してはいられない。日本も中国も、問題自体を回避するのは最早手遅れだが、衝撃を緩和する為の努力なら今からでも多少は出来る。
China’s demographic crisis: The farmers should have a say



 中国は常に世界で最も人口の多い国のひとつだった。曾ては世界の総人口の1/4〜1/3を占めていたが、政府が1980年に強制的な家族計画を実施して以来、世界人口に占める割合は約18% にまで縮小した。

 一人っ子政策は近年解除されたが、2015年後半に二人っ子政策が発表された後でも出生率は低下し続けているとの予測が為されている。国の出生数は年間500万人に減少する可能性が有る一方で、死亡者数は最高で2,500万人に達する可能性が有る。これによる急激な人口減少を止めたければ、産児制限を緩和するだけでは不十分だと考えられる。

 出生率が低下しているのは日本、ドイツ、韓国、シンガポール、イタリアも同じだが、それらは中国と違って段階的で自然なプロセスによるものだ(この点では私は日本人の一人として異論が有る。団塊世代の次に分厚い人口層であった団塊ジュニア世代を襲った「就職氷河期」は、正に経済的ジェノサイドと呼ぶべきだ。自然な減少であれば、団塊ジュニアを親に持つ団塊三世の分厚い層が出来ている筈だが、人口統計を見れば判る通り、そんな層は登場しなかった。日本の少子化は大規模な経済政策の失敗によって加速させられたのだ)。

 人口圧力の脅威に最も曝されるのは、富裕国のエリート層と貧困国の富裕層だ。米国は1960〜70年代にインドに60億ドルを寄付し、大規模な断種プログラムを支援したが、にも関わらずインドの人口は増え続けた。米国は恐らく中国に対しても同様の人口削減政策を実施したかったのだが、1949〜1972年は米中関係が緊張していた為、中国の人口政策に影響を与えることは出来なかった。中国内部でもマルサス主義と非難された経済学者が計画出産を提唱したことも有ったが、これは毛沢東によって却下された(この似非科学の支持者は一人っ子政策時代になってから「名誉回復」された)。

 1979年、(スターリンを否定したフルシチョフの様に)毛沢東の遺産の多くを否定することで自分の路線の正当性を強化しようとしていた鄧小平は、米国を訪問し、米国のエリート層の新マルサス主義者達から、極端な避妊措置の案を吹き込まれた。米国と中国の関係を改善する為に中国の出生率を下げると云う米国の要求に、鄧小平は喜んで応じた。が、問題なのは、彼が中国の農村の生活の実態をまるで理解していなかったことだ。

 中国に於ける都市部と農村の格差は、門戸開放時代から始まった訳ではなく、中華人民共和国建国の遙か前から大きな問題だった。人口の少ない都市部の人々は、無料の教育、無料の医療、年金等の社会的利益が得られた一方で、中国の人口の圧倒的大多数を占める農村の住民には、そうした恩恵は一切無縁のものだった。その状況を改善する為に大いに貢献したのが人民公社(コミューン)だ。人民公社は西洋では「折角地主達から取り上げて小作農達に分け与えた農地を、CPCは自分達が支配する為にまた取り上げた」と悪意を持って解釈されることが多いが、これは日本で言えば互助会を発展させた様な形式の組織で、高度な自治が実施され、農村の住民に無料または安価な教育や医療を広範囲に提供する一方で、農民が互いに助け合う仕組みを作ることで、自然災害や病気や怪我、老齢や多産(扶養家族の多さ)と云った諸問題に、個々の世帯が直接立ち向かわなくても済むようにしたものだ。

 鄧は1979年にこの人民公社を解体した。これは農村の社会保障制度が丸ごと消滅することを意味していた(正に新自由主義だ)。アトム化されて自分達自身以外に頼るものが無くなった各世帯は、「老後に備えて子供を育てる(养儿防老)」と云う何千年も続いて来た中国の伝統に立ち戻るしか、自分達の生活を保障する術が無くなってしまった。従って一人っ子政策の厳しいペナルティにも関わらず、中国の農村では一人以上の子供を持ちたがる世帯が多かった。文革期に離陸を始めていた農村経済が鄧の農村改革によって大きく後退したこともまたこれに拍車を掛けた。

 毛沢東が唱導した文化革命によって、農村にはボトムアップによる高度な自治の制度が築かれつつあったが、鄧はこの流れも逆転させて、トップダウンの文化を復活させた。そして農民の意思に反する一人っ子政策を実行する為に、「ひとつ失敗すると全て失敗する」というルールを考え出した。地方の当局者が一人っ子政策を適切に実施出来なければ、即クビになるのだ。その為に地方の役人達は自分達の地位を維持する為に中絶や不妊手術を強要し、その為にはあらゆる手段を講じた。或る地域では、役人は中絶を拒否した夫婦に対して、水道と電気の供給を停止し、家具や家電製品を撤去し、家を取り壊すことまでした。

 子供を守る為に、農民は隠れたり、故郷を離れたりした。逃亡した夫婦が逮捕出来なかった場合には夫婦の両親が逮捕された。基本的な国策を実施するという名目で、多くの地方の役人が国の法律を無視して自国民の人生を破壊し、農村生活を耐え難いものにした。「国民が権力者を監視する」と云う文化革命による政治文化の改革は大きく後退し、当局者による腐敗と不正が復活し、更に悪化した。

 中国共産党は「人民に奉仕する」ことをその目的として来たが、一人っ子政策によって、政府と農民との関係は完全に破壊された。農民達は、CPCの当局者は国民党の当局者よりもっと悪いと考える様になり、長年に亘って築き上げられて来た党に対する国民の信頼は損なわれてしまった。元々CPCが抗日戦と国共内戦を戦い抜けたのは農民達の手厚い支持のお陰だったのだが、党は彼等の信頼を裏切ったのだ。その後習近平国家主席が、犯罪や汚職の撲滅、貧困の緩和等に尽力していなければ、CPCの未来は暗いものになっていただろう。

 繰り返すが新マルサス主義は似非科学だ。中国の家族計画政策は、科学ではなく当時の政治家達の主観的な判断に基付いて実施されたものだった。そればかりか、この政策は30年以上も変更されること無く、農民達や草の根組織の意見が聞かれることも無かった。中国が人口危機に直面したのは最近になってからで、政府は規制を緩和し、2人っ子政策、その後3人っ子政策の実施を決定したが、これだけでは人口動態危機を変えるのには不十分だとの指摘が人口学者達から為されている。

 中国には約10億人の農民が居る。中国の人口の大半は農民や村と密接な関係に在り、都市生活者の多くも村で育った。この様に大きな人口問題を真に解決するには、農民達や草の根組織の意見を聞くことが必要だ。これは単に政治局が会議を開いて3人っ子政策を決定する様な簡単な話では済まない。農民達や草の根組織が意見を述べ、解決策を提案する十分な機会を持たなくてはならない。中国政府には草の根レヴェル会議を行って大衆を動員して共に問題を解決すると云う伝統が存在する。習近平は常々「大衆路線」の堅持を語って来た。今こそ、それを実行に移す時だ。
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ふたりっ子政策にするべきでしたね。

 子どもが二人なら、次世代の人口も維持され問題が起きなかったはずです。
 確かに一人っ子にすれば急激に人口が減少しますし、計画出産を勧めても農村部ではなかなか浸透しない事はアフリカでも証明済みです。普通は聞く耳を持たないでしょう。
 資源や生産力に限界があり、飢饉などの天災もありますから、本当は世界の人口は少ない方が良いのです。縄文時代の貝塚からは、非常に大きなハマグリの殻が多く、小さいハマグリは取っていなかったとされています。人口が少なければ、少ない資源を大切に十分利用できます。贅沢を言わずに自給自足に近い形で再生可能な農業中心社会を造れば、大気汚染や様々な汚染も減るでしょう。
 人口を減らせば資源の不足、物資の不足が起きにくいのは事実ですし、農業がが機械化されれば、以前のように大勢の人手は不要になりますから、計画出産は実施すべきです。資本主義社会は生産性の全くない電子マネーのような空虚で無価値、有害な経済が常態化しています。食料と資源の確保という点では、中国の人口減少策が強硬過ぎた政策であったとしても、長期的には妥当な政策だったと考えます。昔の中国は貧しかったですから、もし、何もしていなければ、人口爆発が起き、取り返しのつかない事態になったでしょう。
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川流桃桜

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