2009-10-30 Fri 23:50
2009年10月30日(金)
鹿児島にいる間、「早寝」の義父母に合わせて、宵っ張りの 私も、早めに消灯していた。 休む部屋は別々なので、義父母が寝てからこっそり夜更かし すれば良さそうなものだが、義父母は夜中に何度もトイレに 起きるので、私の部屋から灯が漏れていたり物音がしたりす れば、起きているのがバレるわけなのだ。 私は「早起き」の方は義父母に全然合わせていないので(そ ういうところで頑張らないのが「良い嫁」のコツなのだ…笑)、 夜の10時、11時では、まだ眠くならない。 それで一度、夜中の1時近くまで起きて仕事をしていたら、 「そんなに夜更かししたら体を壊す」と、ものすごく心配され てしまった。 で、早めに消灯して床に就き、枕元には本を読めるようなラン プもないので、真っ暗な中、ケータイでブログ巡りを1~2時 間もするというような“隠れオタク”的な生活をしていたので あった。(まあ、自宅に戻ってきてからも、ブログ巡りは殆ど ケータイでしているのだけど。) そんな風にして、鹿児島にいる間に、この記事を読んだ。 ・「皇室の名宝展に行ってきました」(若だんなの新宿通信) もともと皇室の名宝展はちょっと気になっていたのだけど、こ れを読んだら、どうしても若冲(じゃくちゅう)の「動植綵絵」を 見たくてたまらなくなって、こっちに戻ったら、すぐに見に行こ うと決めていたのである。 (若冲の絵が見られる1期は、11/3まで。) 伊藤若冲なら夫も興味を持ちそうなので誘ってみると 夫 「う~ん、仕事が忙しくて時間が取れないよ」 私 「でも、“動植綵絵(どうしょくさいえ)”の30幅がすごくいいみ たいよ」 夫 「うむ…でも無理。 それに、俺は前に京都に仕事に行った時、 細見美術館で若冲の絵を結構見ているんだ」 それで、私一人で、仕事帰りに上野の東京国立博物館に見に行 くことに。 予習として、「奇想の系譜」(辻惟雄)を読んでから行った。
[ 続きはここから… ]
最後の数日間はきっとものすごい混雑になるだろうからと思い、 昨日の木曜に見に行ったのだが、それでもすごい混雑。 しかも殆どの人が、若冲の「動植綵絵」がお目当てのようで、そ の30幅の前ばかりに、人だかりができている。 でも、本当に見に行って良かった。 もう、「動植綵絵」以前の「旭日鳳凰図」1枚を見た時点で、その 見事さに息を飲んでしまった私だった。 「動植綵絵」30幅の素晴らしさと言ったら、もう筆舌に尽くし難い。 以前に、北斎の肉筆浮世絵の鳳凰図屏風を見た時、身震いする ほど感動したのだったが、それと同じぐらいの感動が、今回は数 多くある。しかも、1枚1枚のサイズが、結構大きい。 1枚だけでも唸って余韻に浸ってしまいそうなほどの見ごたえな のに、こんなに沢山連続して感動するのは、何だか勿体ない気が してしまうほど。 緻密にして大胆。 リアルなのに幻想的。 実物を見てしまうと、パンフレットや画集じゃ、そのすごさが全然 伝わらないということがよくわかる。 そして若冲の絵がすごいのは、拡大すればするほど、その精細さ に驚かされるところだ。 会場の一隅に、作品を部分拡大して解説したパネルがあったのだ が、「雪中鴛鴦図」の一部分を大きく拡大したものなど、そのまま ポスターに欲しいなあ…と思うほど美しかった。 できることなら、すべての絵をこんな風に拡大して細かに観察し たいものだ。 若冲の描く絵は、動物も植物も、擬人的だ。 花などにも、「立ち姿」というか、「表情」がある。 30幅、どれもそれぞれに良いが、私的な好みを言えば、鶏の絵 なら、「南天雄鶏図」と「群鶏図」。 摩訶不可思議な雰囲気の「蓮池遊魚図」も好き。 1枚だけ家に飾るなら、鮮やかな「雪中錦鶏図」がいいかなあ…。 30幅もあると、見る人それぞれで気に入る作品も違うだろう。 ミュージアムショップも大混雑で、「動植綵絵」関連のグッズが飛 ぶように売れていた。 「動植綵絵」と比べると、他の作品はどうしてもかすんでしまう 観はあったが、皇室の名宝展では、若冲作品以外にも、さすが 皇室と思うような、珍しい面白いものがあった。 例えば、「萬国絵図屏風」(安土桃山~の作品だが、世界地図に ポルトガルやパリの町の風景や、世界各地の民俗衣装なども組 み合わせて書かれている)とか、「春郊鷹狩・秋庭観楓図壁掛」 (一見絵のようだが、大正期に川島織物が寄進した巨大な織物) とか。 まあ、とにかく見る価値は充分。 興味を持たれた方は、残り数日のうちに、大混雑覚悟で、若冲の 「動植綵絵」だけでもご覧になったらよいかと思う。 あるいは、これだけ若冲人気が高ければ、また展示される機会も あるだろうから、その時にはぜひ逃さずに。 私も今後は、近場で若冲作品の展示がある際は見に行こう。 そう言えば、若だんなさんもすっかり若冲にハマっておいでのよ うで、「皇室の名宝展」だけでなく、その後、京都でのお仕事の ついでに、滋賀は信楽の「MIHOミュージアム」の「若冲ワンダー ランド」にまでお出かけになったご様子。(「ミホミュージアムなう」。 詳細エントリのアップが楽しみ♪) なお、「若冲ワンダーランド」の方は、12/13まで。 《追記》 ※若だんなさんが、MIHOミュージアムのことを書かれ、 その後さらに、書きそびれた感想を追記記事にしていら っしゃった。 ・若冲ワンダーランドの感想を追加します それを読んで、私も、書き忘れていた感想を、自身の メモとして、追記しておくことにした。 若冲の絵は、細部の技巧も圧倒的だけど、本当にすごいの は、「着想」と「構図」だろうと私は思っのだった。 だから、古くない、「新しい」のだ。 「動植綵絵」は(もちろん彼の作品の中でも最高峰のものに 違いないが)、多分、どの時代の、どの文化圏へ持って行っ ても、評価されるんじゃないだろうか。 何のため、誰のためでもなく、この30幅を、若冲は、己のた め、己の興味と能力をとことん追求するために描いたのだと 思う。 おそらく、狂気じみた執念と、秘かな自己陶酔を伴って。 「動植綵絵」が総国寺に寄進された時、京市民の間で評判 になったそうだが、若冲のねらいは、現世での評判だけでは なかったろう。 きっと、後の世の人にも見せて、価値を問いた いと思っていたに違いない。 200年余の時を超えて、今の私たちに「どうだ?」と迫ってく るような、その、矜持、気概、気迫…。 そんな画家の魂に、私は涙が出そうになったのだった。 |
-ありがとうございます-
ご紹介にトラバまでありがとうございます。
もう、若沖すばらしいですよね。 しかも、あの30幅が同時に見られるのは、なんと3度目だそうです。 相国寺で一度勢揃いしたのと、東京では83年ぶりだったかな。 2000年に京都でやった若沖展でも15幅ずつ。 だから、あれを見損なうのは一生の損です。 K木さんは惜しいことしたと思うな。 MIHOの話はまた書きます。 -わたしも「心奪われ」たいです-
こんにちは。
「身震いするほど感動」とか「心奪われる」という経験を最後にしたのはいつだったかなあ、と考えてしまいました。しかも、考えても思い出せず。 来月、小旅行を予定しているのですが、「心奪われるものをさがす旅」でテーマ決定です。 -ほんと、心奪われたい。-
毎日、ぼんやりしているので
ミセス・かんちがいさんのこの記事を拝見しなかったら、 展覧会の存在すら知らないで過ごしたと思います。 この記事、もう何度も読んでいるんですが 心のなかの「劇的体験センサー」が稼働して、 「見たかったあ」と思い続けています。 さおりさん同様、心奪われたい。 息をのみたかったです。 若だんなat新宿さんの記事も拝見しました。 ミホミュージアムもこれまた関西にいるのに知らなかったです! ここなら、がんばれば行けそう 展覧会といえば、珍しく娘が興味をもったので 11月1日に「だまし絵展」に行ったのですが、 70分待ちで、もうえっらい大変な騒ぎでした。 美術展初体験というお子さん連れも多いとかで 有名作品の前では、5重6重の人の列。 みんなそれぞれ「だまし要素」を探すのに時間がかかり、 それを子どもや恋人に解説するのにも時間がかかり、 さらには、それを相手が理解するのにも時間がかかり・・ 心を奪われる余裕はなかったものの 体力は思いっきり奪われました(-_-;) --
>若だんなさん
サイエンスアゴラ、お疲れさまでした^^(←遅っ!) 3回にわたるMIHOミュージアムの記事のアップ、 楽しませて頂きました。 トラックバックも、ありがとうございました。 前回、東京国立博物館に行ったのは、去年の大琳派展 の時でしたが、その時も、若だんなさんの記事に刺激さ れて行ったのだったけなあ…と、思い出しました。 今回も、若だんなさんの記事のおかげで、行く気になっ て、見てきて、本当に良かった! 大感謝です。 ブログでツイッターのログなども拝見しましたが、まだ まだ若冲ネタ、尾を引いておりますね^^ リンク先も、読んできました。 MIHOミュージアムの館長、辻惟雄さんは、私が若冲 を見に行く前に読んだ「奇想の系譜」の著者でもあり ますよ。 若冲は作品も多いし、最近の新たな発見もあって、 ハマると長く楽しめそうですね。 それにしても、今は若冲ブームというんですか、若冲 ファンが多くてびっくりです^^ 《若だんなさんへのレスの追記(笑)》 若冲ワンダーランドの感想の追加も、今朝(11/7) 拝読しました^^ そう、若冲は「実に現代的」なのよね。 私も、書きそびれていた感想があったので、追記しま した。(この記事の末尾への追記ですが。) 若冲ワンダーランドのは、彩色画でなく、水墨画が 中心だったんですね。 「若冲は、殺到する注文に対しては、こうした即興 的な水墨画を描いて与え、その代として米一斗を 受け取るのが常で、米斗庵あるいは米斗翁という 彼の号は、このことに由来するとされる。肩ひじ 張らないで描かれたものだけに、ここには晩年の 若冲の天真なユーモリストとしての素顔が、よく あらわれている」(『奇想の系譜』より) だそうです。 水墨画もまた面白そうです。 >Yさおりさん 私は、物事にやたら感動する性分なので、私の感動は ちょっと安っぽいかもしれません(^^;) でも、「絵」を見て、涙が出そうなほど感激したのは、 今回の若冲と、以前の北斎との、2回だけかな。 50年生きてきても、まだまだ自分の知らない、自分の 想像を越えた素晴らしいものが、世の中には沢山ある なあと、感じることはしょっちゅうです。 音楽でも、自然の景色でも、文学作品などでも。 年齢のおかげで、良さがわかるようになったものもあ るし。 Yさおりさんも、まだまだこれから、素敵なものと いっぱい出会うのではないでしょうか。 旅行で、「心奪われるもの」と出会えるといいですね^^ そう言えば私、飛行機の窓から見る雲海が大好きで、 雲海を見るたびに、「こんな素晴らしいものを見たら、 もう死んでもいい!」って思うくらいに感動してます。 (いや、死んでもいいと思うのは、その時だけなんで、 まだ死にたくないですけど…(^^;) そうそう、出張所のサイトの記事、素敵♪ 今後も楽しみにしています^^ >Carinaさん あはは、「体力は思いっきり奪われました(-_-;)」って いうオチが、Carinaさんらしい^^ 「劇的体験センサーが稼働」ってのも、いいなあ。 私はCarinaさんの斬新な表現に、日々、感じ入ってますよ。 女性雑誌論議は、盛り上がりましたね~^^ 「40代向け雑誌は、困ったちゃん!?」の考察が鋭くて、 至極納得。 私もいろいろ考えて、コメントしようとも思ったのですが それだけで記事が1つ書けそうなくらい長くなりそうだっ たので(何たって、新雑誌の企画とか、タイトル、通称ま で…と際限なく妄想が進んだもんだから…笑)、そのまま 失礼してしまいました。 尼さんになる話も、もう 「面白すぎるぞ、Carinaどん!」 (↑なぜか、「どん」付け…(^^;) と思いながら、拍手だけして読み逃げでした。 そうそう、本題の若冲ですが、ぜひ機会を作ってご覧 下さいまし。 (特に「動植綵絵」を見る機会があれば、何がなんでも!) 私も、いずれ、京都を拠点に、MIHOミュージアム+細見 美術館という「若冲追っかけの旅」を実現させたいと思 っております^^ -今頃しつこくすみません。-
昨日、MIHO MUSEUMに行ってきました!そして今、ミセス・かんちがいさんが「動植綵絵」30幅をご覧になったことに、ものすごくジェラシー(笑)激しくジェラシー。昨晩から「もっと知りたい 伊藤若冲」を何度も何度も見て、「どこが天才なのか」を頭のなかでいろんな言葉で分析して、自分なりに納得したり、添削したりしています(笑)ああ、でも30幅を前にしたときの感動たるやほんとにどれだけか!!
ミセス・かんちがいさんが記事にかいていらっしゃるように、若冲自身「1000年後の人々に理解される」という言い方をしているようです。 200年余の時を超えて、今の私たちに「どうだ?」と迫ってく るような、その、矜持、気概、気迫…。 そんな画家の魂に、私は涙が出そうになったのだった。 というミセス・かんちがいさんの文意が今はよくわかります。MIHO MUSEUMの作品でもそれが伝わりました。 次は、石峯寺の仏像を見て彼の晩年の世界に浸りたいと思っています。 新しい記事も拝見してコメントしたいこともあるのに、すみません!でも、どうしても伝えたくて!ミセス・かんちがいさんの記事に触れてよかったです(^O^)/ -わ~、Carinaさんもハマりましたね(^_^)-
>Carinaさん
ああ、MIHOミュージアムにいらしたのですね。 Carinaさんが若冲を見て下さったこと、すごく嬉しいです! 「動植綵絵」のことで「激しくジェラシー」って(笑)、 そんな感覚も嬉しい。 実際、「嫉妬されるに値する“感動体験”」でしたからね^^ 「もっと知りたい 伊藤若冲」、良さそうですね。 (早速、アマゾンのショッピングカートに入れちゃった!) >「どこが天才なのか」を頭のなかでいろんな言葉で分析 して、自分なりに納得したり、添削したりしています(笑) って言うのを読んで、私はCarinaさんの秘密を垣間見たよ うな気がしました。 Carinaさんの表現力…というか、意表を突きつつ核心を突く ような言葉選びに、私はいつも本当に感嘆していて (コピーライティングのお仕事もなさっていたというプロフ ィールに最近気づいて激しく納得したのですが)、 なんで、Carinaさんは、あんなに縦横無尽・自由闊達に、 言葉を組み合わせられるのだろう?(私なんかには絶対マネ できない…)、やはり発想力の違いなんだろうな…とは思っ ていたのですが、若冲が絵にこだわったように、Carinaさん は言葉にこだわっているのだな…と、天才は能力だけじゃなく 努力もしてるんだな…と、(Carinaさんを、若冲と並べて語 るのも変かもしれませんが(^^;)、思ったことでした。 |
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だいぶ時間が経ってしまいましたが、今日は会場も暇なので、
サイエンスアゴラ会場でブログを書いてます。
ミホミュージアムなう
と書い...
2009-11-02 Mon 12:09 若だんなの新宿通信
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