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共同住宅特例基準の改正の歴史

※参考資料
小林 恭一『共同住宅特例基準の50年と特定共同住宅設備省令』2005年
 
●共同住宅特例基準が定期的に改正されてきた理由
・共同住宅特例基準は、共同住宅の構造や設計による防火安全性能を、消防用設備等の設置の要否や設置方法等に反映させたものなので、共同住宅の大規模化、高層化、多様化、住戸の大型化、他用途との複合化などが進むと、特例基準と現状とが大きく乖離してくるため、ほぼ10年ごとに見直しと改正が行われてきた。

1)118号通知:昭和36年(1961)8月

●通知の内容
・以下の適用条件を満たした共同住宅については、戸建て住宅と変わらないと考えて消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、非常警報設備、避難器具等の設置を免除。
〇適用条件
・住戸間区画を耐火構造とすること
・共用部分との間の開口部面積を制限(4㎡以下)すること
・当該開口部には甲種防火戸を設置(開放廊下に面していれば不要)すること
・共用部分を不燃化すること
・3階以上の階にある住戸の床面積を制限(70㎡以下)すること

●前提・背景
・公営住宅等、当時の耐火構造共同住宅のほとんどが、4~5階建てで住戸面積も30~50㎡程度であり、設計のバリエーションも少ない、という状況を前提として作られていた。
・共同住宅の水準がこの程度であって、この基準で設計すると、防火安全性が確保され、消防用設備等の設置・維持のコストも低減できた。

●課題
・高層共同住宅の出現が想定されておらず、上記条件を満足すれば、消防用設備等を全く設置せずに高層共同住宅を建設することが可能になってしまう。
・当時は平均住戸規模が小さかったため、"二方向避難"という概念がなかった。
※住戸規模が小さいと火災の発見も容易で玄関一つしか避難路がなくても、安全な共用廊下に脱出することも困難ではなかった。

2)49号通知、190号通知(運用通知):昭和50年(1975)
 
●背景
・118号通知の時代は、二方向避難や避難路の開放性については配慮されておらず区画性能にのみ重点を置いた基準となっていたが、消防用設備等の設置免除要件が区画性能だけでなく避難性能にも配慮したものとなった。
 
●通知の概要
・主に高層部分においては自動火災報知設備を設置し,低層部分には自動火災報知設備の設置を免除し火災感知器を設置しない非常警報設備を設置することなどで足りるとされた。
・以下の適用条件を満たす"二方向避難・開放型住戸等"であれば、消火器具(10階以下の部分)、屋内消火栓設備、自動火災報知設備(10階以下の部分)等の設置が免除
〇主な適用条件
・主要構造部が耐火構造、住戸等間が開口部のない耐火構造の床or壁で区画
・3階以上の階にある住戸の床面積制限を100㎡(従来は70㎡)以下
・"二方向避難"。バルコニーを避難路として位置づけ、二方向避難及び避難路の開放性についての考え方を整理。
・住戸等の詳細な区画性能の規定。住戸と共用部分の間の開口部の面積を原則2㎡以下("二方向避難・開放型住戸等"の場合は4㎡以下)とする。

●通知が共同住宅の形状に与えた影響
・住棟全体に連続したバルコニー
・連続バルコニーの隣戸との境界に設置する"容易に破壊できる仕切板"
・二戸ずつ連続したバルコニー
・外気に開放された廊下と防風スクリーンや階段

3)170号通知:昭和61年(1986)

●背景
〇49号通知の課題
①片廊下型共同住宅の開放廊下に面する開口部の面積制限の緩和
・住戸面積の増大に伴い共用廊下に面して2居室確保しようとすると、開口部の面積制限と建基法の居室の採光面積制限とがバッティング。
②主たる出入り口の常時閉鎖式甲種防火戸の緩和
・デザインの多様化、車椅子のための引き戸設置の要請などから、網入りガラスなど乙種防火戸を用いることは出来ないかとの意見が強かった。
③3階以上の階にある住戸の床面積制限(100㎡以下)、100㎡区画の緩和
・住戸面積が100㎡を超えるようになると、住戸を100㎡以下ごとに区画する無粋な鉄製の防火戸が住戸内に設置される例が増えていた。
④光庭に面する開口部の制限の緩和
 
〇海外の事例における火災報知設備等の設置の効果
・火災発生時の死者の発生率がアメリカ・カナダ・イギリスなどと比べて高くなっていたが、その原因として煙感知器の設置が義務付けされていない点が推察された。

●通知の概要
・49号通知の課題の解決と住宅用火災警報設備の設置促進を図ることを企図。
・住環境が向上し,さらなる住戸の大規模化,構造・形態の多様化により特例基準を適用できる建築構造の幅を広げた。
・すべての住戸が二方向避難・開放型住戸であり、各住戸に住戸用自火報が設置されていれば、49号通知の4つの課題に係る制限を大幅に緩和する一方、それらの条件のいずれかを満たさないものについては原則として49号通知の適用範囲として残すこととされた。
 
●49号通知と170号通知の併用
①高級指向はホームセキュリティシステム(住戸用自火報を含む)を設置し、170号通知適用
・49号通知の4つの課題が、住戸規模が大きいか、ファサードに凝り内部の設備を充実して差別化を図ろうとする高級マンション指向の共同住宅に主として見られるものであり、そのような共同住宅には火災センサーを含む"ホームセキュリティ"のシステムが設置されることが多かった。
 
②低価格指向は49号通知を適用
・住戸規模が比較的小さく庶民的な共同住宅を安価に建設しようとするなら49号通知の適用を受ければよい。

●住戸用自火報とホームセキュリティ
〇通常の自動火災報知設備
・火災の発生を出来るだけ早く他の部分にいる人達に知らせ、関係者に初期消火、消防への通報、避難誘導などの自衛消防活動を開始させるとともに、一般の人達に避難(準備)行動を開始させることを意図して設けられている。

〇共同住宅の場合に求められる対応
・防火区画に高い性能を持たせ、安全な避難路が確保された共同住宅については、"住戸内で発生した火災の情報をできるだけ早く他の住戸に伝える"という役割の比重は比較的小さくて済む。
・広い住戸の場合は、むしろ、住戸内で火災が発生したことをその住戸内の住人に知らせることに力点を置くべきだと考えられる。
・昭和50年代の半ば(1980年頃)くらいから、火災センサー、ガス漏れセンサー、防犯センサー、風呂の満水センサーなどの各種情報システムとドアホンの機能などをドッキングした住宅(住戸)内情報システムが、"ホームセキュリティ"システムとして一般化し、新築のマンション等に普通に設置されるようになっていた。

〇住戸用自火報
・共同住宅の区画性能や避難性能、階数などに応じて火災警報の伝達範囲や警報音の鳴動範囲等を整理することにより、"ホームセキュリティシステム"を"自動火災報知設備"の体系の中に位置づけたものであった。

4)220号通知:平成7年(1995年)
 
●背景
〇住宅用火災警報器の設置等の住宅防火対策を強力に推進
・共同住宅特例基準により自動火災報知設備の設置を免除していることは矛盾しているのではないか?
〇高層共同住宅が急増
・消則13条1項(現2項)に基づきスプリンクラー設備の設置を免除するのは危険ではないか?

●通知の概要
①49号通知と170号通知を一本化し、一つの基準として整理し直した
②火災の早期発見と初期消火に係る、自動火災報知設備、消火器及びスプリンクラー設備については"設置"を原則とし、"設置免除"は例外とした。
③スプリンクラー設備については、本通知により、二方向避難・開放型住戸で内装制限がなされている場合に限り、設置免除を認めることとした。
④住戸内感知器の戸外からの遠隔試験への対応
・プライベート空間であることや女性の社会進出などで住戸内不在が目立ち始め法定点検の実施状況が悪化していた。
・住戸の外に設置されたドアホン(遠隔試験機能付中継器)に外部試験器を接続し作動点検が行える擬似発報方式が法令上認められた。

●特例基準の採用状況
・220号通知では、②のように、自動火災報知設備、消火器及びスプリンクラー設備については"設置"を原則とし"設置免除"は例外とされたため、設計・施工者の立場から見ると、共同住宅特例基準に従って共同住宅を造ることのコストメリットが少なくなってしまった。
その結果、かつて共同住宅の大部分を占めていた特例基準適用住宅は相当少なくなり、スプリンクラー設備の設置免除を意図した高層共同住宅を中心に適用されるようになった。

テーマ : 不動産投資
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田舎暮らしをめざしている40過ぎの独身男性です。
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