2017/09/28
アイスランドの総選挙が教えてくれること
アイスランドの国会議事堂 アルシング |
日本でもこの秋は、降って湧いたような解散総選挙で慌ただしいばかりですが、去年の10月に総選挙があったばかりのアイスランドでも、突然10月の総選挙が決まりました。
ことの発端は、連立政権の崩壊。昨年の総選挙で各政党の議席数が拮抗し、3党合意でなんとか連立政権を維持していた独立党のベネディクトソン首相のスキャンダルでした。
日本の首相も3月から森友、加計とスキャンダルが続いていますが、アイスランドの首相のスキャンダルは、首相の父親が、児童に対する性犯罪で有罪となった旧友の犯罪歴を抹消するため、推薦状を書いていたこと。それを首相率いる独立党が隠ぺいを図ったことに「明るい未来」が反発し、連立政権から離脱したため、ベネディクトソン政権は崩壊したのです。
そして、総選挙が決まりましたが、これは「首相の専権事項」などで決まったわけではありません。政権崩壊(すなわち国会の議席の過半数を政権が有していない)を受けて、新しい連立政権を組めないかを各政党と協議した末、解散総選挙を皆が選択し、それを大統領に報告して、ようやく10月28日に総選挙をするということが決まりました。また、大統領の助言により、総選挙までは国会を継続し、国会議員の職務を果たすことになりました。
ここまでお読みになって、いかが思われますか?
私はどうしても日本と比べてしまいます。
日本では、首相夫人が名誉校長である小学校への国有地売却に、また首相自身が友人の大学経営に便宜を図ったのではないか、またその問題に関する書類などを財務省など関係省庁が隠蔽しているのではないかと、客観的に見るとたいへん疑わしい事態が続いていますが、連立を組む公明党は問題視することなく、傍観者のような対応を続けています。
森友、加計学園問題で支持率が急落する中、糾弾されていた大臣たちを隠すように行われた内閣改造。憲法に則って野党議員から要求されていた臨時国会の開催は拒み続け、少し世間がこの問題を「忘れたかな」と思った矢先に、「総理の専権」による臨時国会召集冒頭の解散と総選挙。国民の負託を受けた国会議員が議論する国権の最高機関の国会を、なんだと思っているのでしょう?
また、その国会議員も、国民から負託された政策や理念よりも、議員という地位に執着しているとしか言えない言動ばかりです。当選するために、政党を転々とするばかりでなく、党までも出来たり、消えたり。これは議員の資質を問うだけで解決する問題ではなく、小選挙区制、政党助成金、選挙供託金など、選挙をとりまく状況にも問題があるとは思いますが、有権者にとっては、どのような政策を支持して投票していいのかわからない状況です。これで、民主主義、国民主権と言えるのでしょうか?
話をアイスランドに戻します。
さて、10月の総選挙。その一報を聞いた9月19日、私の目には3月に訪問した海賊党の皆さんの顔が浮かびました。次の選挙に備えて、若者や低所得者のための政策案を真剣に話し合っていた海賊党の躍進と、海賊党の創立者のひとりで国会議員のビルギッタさんの首相就任を期待しました。しかし、その数日後、そのビルギッタさんが10月の総選挙には出馬しないと表明したことを知りました。
なぜ出馬しないのか?インタビュー記事によりますと、そもそも初めて2009年に国会議員に当選した時、「国会議員は2期だけ」と表明していたそうです。しかし、2期目の途中で前首相の「パナマ文書」スキャンダルによる辞任、総選挙となり、2期目を全うするためにと3回目の出馬。しかし、次回は4回目の出馬となるので、もう「約束は破れない」と国会から退き、しばらくは、政界で自分の経験してきたことなどを皆と共有するために著作に励みたいとのこと。
この決断は、ビルギッタさんの人気を考えれば、海賊党の支持率にも影響を与えるのではないか、またアイスランドの国民にとっても大きな損失ではないかと思いますが、それがアイスランドの政治家の発言の重みのようです。「2期しかしない」と表明したことは、よほどの理由がない限りは守らなければ、人々の信頼を得ることはできないということでしょう。
政治家の言葉が信じられなくなれば、国民は何を信じて投票すればいいのでしょうか?民主主義の根幹は、政治家と国民の信頼。国民の声を国会に届けるのが国会議員の務めである限り、「この人は信用できない。国会に送り込んでも何を言い出すかわからない。」と思われたら、おしまいなのだということを、ビルギッタさんの姿勢から教えられました。
さて、日本の10月の総選挙。
当選の後、どんな政策を貫く覚悟があるのか・・・信頼できる候補者はいますか?
いなければ、誰がマシか、もしくは消去法でもいいから投票する。
そして、長期的には、信頼できる政治家を育てていく・・・民主主義の第1歩を、私たち国民が踏み出していかなければと思います。
++ 参考サイト ++
■アイスランド首相、11月に解散総選挙へ
https://www.nna.jp/news/show/1663075
■Elections Confirmed for October 28th
http://icelandreview.com/news/2017/09/18/elections-confirmed-october-28th
■Iceland's "Pirate' Politician Won't Run After Government Collapses In Pedophilia Scandal
Birgitta Jónsdóttir became Iceland’s most famous parliamentarian after challenging the U.S. with WikiLeaks in 2010.
http://www.huffingtonpost.com/entry/iceland-birgitta_us_59be9811e4b02da0e142af1e?x8n
++ 関連ブログ ++
■アイスランドで見つけたもの
http://flowersandbombs.blogspot.jp/2017/07/
2017年3月海賊党本部で ビルギッタさんと |
2017/09/06
また巡ってくる9月11日。。。
また9月11日が巡ってきます。
2001年9月11日の「同時多発テロ事件」から16年となります。今思い返しても、あの日を起点とした「対テロ戦争」が、これほど世界を暴力の連鎖に巻き込むことになろうとは・・・と悔やむばかりです。
何かをせずにいられず始めた「花と爆弾」のチャリティ活動。毎年のように9月にピースライブや上映会などのイベントで募金をお願いしてきましたが、今年は私のアイスランド報告会などでお寄せ頂いた募金などをそれに充てさせていただきます。
2005年のピースライブより |
もしかして、「今年もチャリティ・イベントで募金しようと思っていたのに」と思ってくださっていた方がいらっしゃれば、よろしければ、「花と爆弾」が支援させてもらっている下記のアフガン・イラク支援団体にご寄付いただければ、たいへん嬉しく思います。
ペシャワール会
アフガニスタンの土漠に水路を建設し緑の大地を復活させた中村哲医師を支える会。
カレーズの会
アフガニスタン医師の兄弟を中心に展開するカンダハルでの医療活動などを支援する会。
日本イラク医療支援ネットワーク
白血病や小児ガンなどに苦しむイラクの子どもたちを長年支援する会。イラストがかわいい「チョコ募金」でご存知の方も多いでしょう。
イラク支援ボランティア
高遠菜穂子さん。大きな団体が気がつきにくいニーズを探っての貴重な活動をイラクで続けられています。
イラクの子どもを救う会
フリー・ジャーナリストの 西谷文和さんの会。現地での貴重な情報を私たちに届けてくれると同時に、現地に食料や水、毛布や薬などを届ける活動をされています。
JVCイラク基金
長年、イラクの子どもたちの医療や教育への活動を続けているプロジェクト。現在はキルクークを中心にコミュニティの信頼関係を築く活動に熱心に取り組まれています。
また、「花と爆弾」では、福島第一原発事故の影響を受ける子どもたちのための支援もさせてもらっています。
福島の子どもを招きたい!明石プロジェクト
まつもと子ども留学基金
新しくなった「花と爆弾」のカバー |
微力ではありますが、これからも様々な機会を通して、希望の連鎖をつないでいく努力を続けたいと思います。
小橋かおる
花と爆弾-もう、戦争の暴力はやめようよ-