しっとう?岩田亜矢那

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意味がわかると怖い話2946 「石の薔薇」

2019å¹´11月23æ—¥ 09時58分00秒 | æ„å‘³ãŒã‚ã‹ã‚‹ã¨æ€–いコピペ
「どしょ~。ボール、隣の家に入っちゃった~。」

私の実家の隣には、
大きな塀の続く大きな家があった。
その日、玄関の前でゴムボールで玉つきして遊んでいたのだけれど、
ボールは塀を飛び越えて、隣のお宅に入ってしまった。

「んしょ。んしょ。
うわぁ、広いお庭~。
えと。ボールは~。あった!」

「だぁれ?」

お屋敷の離れだったので、
誰もいない…なんて思ってた私は、
びくんと飛び上がる思いだった。
そろそろと振り返ると、
着物姿のとてもキレイなお姉さんが、お布団から、
起き上がって、私を見ている。

「わ、わ、わたし。」

私は勝手に入ってしまったから、怒られると思い、
びくついた拍子にボールを落としてしまった。

ぽーん。
ぽーん。ぽん。
ころころころ。

「脅かしちゃって、ごめんなさいね。
ボール取りに来たの?」

お姉さんはまるで鈴の音を転がしたような声で、
微笑みながら、話しかけてくる。

「う、うん。」

「あらあら、ボールが…。げほげほげほっ。」

ボールを取るために立ち上がろうとしたお姉さんは、咳き込んでしまった。

「お姉さん大丈夫?」

思わず駆け寄る私。

「ごほっ。ごほっ。大丈夫よ。ごめんなさいね。」

「お姉さん、どこか悪いの?」

若い女性が離れで、1人布団に寝ているのだから、
今ならすぐに何かあるのだとわかるだろうに、当時の私は、幼くそれ故、素直だった。

「えぇ、ちょっと胸にね…。
あっ。大丈夫よ。
伝染るモノではないから。」
お姉さんは、胸元をそっと押さえつつ、悲し気に微笑んだ。

「お姉さん、寂しそう…。ぴなこ遊びに来ても良い?」

「ぴなこちゃん?」

「うんっ。おおしまぴなこ!5æ­³!来年は小学校に行くの♪」

「クスクス。ぴなこちゃんね。」

「違う~。ぴなこ~!
太陽の日に、菜っ葉の菜、子どもの子。で、ぴなこなの~。」

「そっかぁ。お母さんが付けてくれたの?」

「うん。ぴなこ、お母さん大好き!
会いたいよぅ。ぽろっ。
うわぁぁぁん。」

「わわっ。ご、ごめんなさいね。」

「えぐっ。えぐっ。
ぴなこのお母さん、お星さまになって、お空にいるの。
いつでも、見ててくれるから、寂しいないんだもん。
ごしっ。」

「そっかぁ。ぴなこちゃんは、良い子ね。」


『日菜子~。お~い。どこだーい。』
『日菜子ちゃ~ん』

「あっ。お父さんと義母さんが呼んでる。
お姉さん、また来るね。」

「えぇ。待ってるわ。」

あの頃は、
新しいお義母さんに馴染めず、
反抗心からか、隣のお姉さんのところに入り浸るようになった…。



あれは、そう。
秋も深まり、少しずつ冬の気配がしてきた頃だったと思う。

「ぴなこちゃんに、お姉さんの秘密。
見せてあげようか?」

「秘密?良いの?」

「えぇ、ほら。見て。」

お姉さんの左胸。
そこには、白くゴツゴツしていて
所々、血のにじんだような赤い…
薔薇のような大輪の華が咲き誇っていた。


「とても綺麗。
私も欲しいなぁ。」

そう言いながら、手を伸ばし、
触れようとしたその時、
パシッ。

「日菜子ちゃん、ダメよ。
そんなこと願っちゃダメ!」

私は、いきなり叩かれたショックと
お姉さんの怒りに驚いた。

「お姉さんなんか、キライ!」

それから、
お姉さんのところに行かなくなっちゃったんだっけ…。

その年の冬の寒い日に、
隣のお家でお葬式があって…

幼い子供だったとはいえ、お姉さんにひどいことをいったまま、謝る機会を永遠に失なってしまったのだったわ…。


―
ぴちゃん。
ぴちゃん。。

…はっ。
私は、お風呂に浸かったまま、
うたた寝していた。

「どうして子供の頃の夢を…?」

ブルッ。
お湯がぬるくなってしまっていたので、熱いシャワーを浴び、
バスタオルを巻いて、浴室を後にした。

洗面鏡の前に立った時、

「ぴなこちゃん…」

お姉さんの声が聞こえた気がした。

ふと気になって、
お姉さんの薔薇のあった位置と同じ左胸の外側に、そっと触れてみた…。


そこには、ちょうど植物の種のような固さがあった…。