陽だまりの彼女 レビュー(ネタバレあり)
小学生の奥田浩介(柴崎楽)は家族と共にやってきた江の島で迷子となってしまうが、そこで一匹の子猫を助ける。
しかし子猫は突如逃げ出すと、とある女性のところへと辿り着いた。
交通広告代理店の営業マンである奥田浩介(松本潤)は鉄道好きの冴えない青年。
先輩営業マンである田中進(大倉孝二)と共に向かった新規のクライアントであるランジェリー・メーカー「ララ・オロール」との初の打ち合わせの場で、広報部長・梶尾玲子(とよた真帆)らと挨拶をしている中、遅れて現れた担当の渡来真緒(上野樹里)を目にして浩介はびっくりする。
彼女は浩介の中学時代のクラスメイトだったのだ。
美しく、しかも仕事もバリバリ出来る聡明な女性に成長した真緒に更に驚かされる浩介だが、先輩の田中の目から見ても同僚の新藤春樹(玉山鉄二)と付き合っているように見えた。
浩介の家に昨夜勝手に泊りに来た弟の奥田翔太(菅田将暉)は、兄が恋愛チェックなどをしていた事をからかいながらも、美人に成長した真緒と再会したことを知るとデートに誘うように進める。しかし、相手があの「マーガリン事件」の真緒では難しいかと告げる。
中学1年生の時、浩介(北村匠海)のクラスに転向してきた真緒(葵わかな)は、全く勉強が出来ないことなどからクラスメイトのいじめの標的となってしまった。そうしたある日、いじめっ子の潮田(三浦透子)たちが真緒の髪にマーガリンを塗った事で、大人しかった浩介も我慢出来なくなり止めに入ると、潮田の顔に彼女が持っていたマーガリンを塗り付けてしまった。
この一件は担任が自宅にやってきて家族の知るところとなった。
そして同時に、浩介は「キレると何をするかわからない」と陰口を叩かれ、様々な悪い噂と共に浮いた存在となったが、助けられた真緒はすっかり懐いてくるようになった。
真緒たちと共に仕事を進める浩介は、電車の釣り広告では狙った効果が得られないというクライアントの意見に、大型セットボードを使った広告を使う事を提案する。
だが、真緒の描いたランジェリー姿の女性のイラストは肌の露出も多く、自社の評判を落とすことになると杉原部長(小籔千豊)の反対にあって審査に回してもらえないことになってしまう。
すっかり落ち込む浩介だったが、帰宅途中に目撃した下着姿の大型セットボードに他社では行っているのだと知り、杉原を説得するための同種の写真を撮って回ることにする。
翌朝、一晩中走り回って疲れた浩介が休憩していると、偶然通りかかった真緒が声を掛けてくる。浩介のしている事を知った真緒は、彼と共に写真を撮るために町中を巡る事にした。
そして沢山の写真を撮った浩介は、その写真を手に他社では普通に行っている事であり、会社の品位を落とす事にはならないと審査に通してもらえるように杉原を説得する事に成功する。
中学時代、全く勉強の出来ない真緒に、浩介は初歩から勉強を教え、真緒は遂にテストで100点を取るほどにまで成長する。
二人はイジメをする同級生たちから離れるため、東京の大学へ進学することを誓い、そして公園でファーストキスを交わした。
だが、浩介は引っ越すことになってしまい、真緒は大泣きしてしまうが、浩介はそんな真緒に冷たい態度をとってしまった。
真緒と浩介は二人で江の島へ出かけることになる。
真緒に惚れていた先輩の新藤は真緒をデートに誘おうとするも、デートだからと断られてしまう。しかし真緒の事が気になる新藤は、別の女性を連れて江の島にまでやってきて二人を尾行してしまう。
あちこちを歩いて回った二人は思い出の公園などにやってきた後、とある場所で沢山の猫たちを目にする。
そこに一人の女性がやってきたのを目にした真緒は、浩介に飲み物を買いに行ってもらう。
二人を尾行していた新藤は、真緒がその女性・大下(夏木マリ)と何やら真面目な会話を交わしているのを目撃する。
戻ってきた浩介に真緒は突然自分の実家へ行こうと誘う。
いきなり実家へと連れて行かれた浩介だが、真緒は両親に対して浩介と結婚すると言い出してしまった。突然の事に動揺しながらも、自分もそのつもりである事を告げる浩介。
母の渡来真由子(木内みどり)は祝福するも、元刑事である父の渡来幸三(塩見三省)は憮然とした表情で浩介に真緒の事をどこまで知っているのかと問いかける。
真緒が里子であるという事は、中学時代に噂で聞いていた浩介。そんな彼に、幸三は真緒が『全生活史健忘』であり、自分たちが育てることになった12年前から前の記憶が一切ない事、そしていつまた記憶を失う事になるか判らない危険を孕んでいる事を告げ、浩介の覚悟を問うも、浩介はすぐに答えることが出来なかった。
悩み続けた浩介だが、やがて決意を固めると、二人は翔太の働く引っ越し業者に頼んで新居へ移り結婚してしまう。
そしてその日、電話で真緒の養父母に結婚の報告をした。
真緒をお姫様抱っこして部屋へと連れて行った浩介は、隣家の子供・平岩しゅう君に目撃され、平岩夫人(安藤玉恵)に心配されてしまい慌てて貧血だと取り繕う。
真緒は5匹の金魚を飼い、自分が好きな ビーチ・ボーイズのメンバーの名前を付ける。
公私ともに充実した日々を送るようになった二人。
浩介はふと、小学生の頃に助けたロシアンブルーに似た雑種の猫の事を思い出す。
江の島で迷子になっていた浩介は、海岸の岩場で穴に嵌って出られなくなった猫を助けようとして手を引っかかれてしまうが、持っていたお守りを使って何とか助け出す事に成功する。しかしその猫は、助けた逃げてしまったのだという。
そんな浩介に、真緒は改めて「あなたと結婚してよかった」と語る。
そうしたある日、真緒は家の中で何やら探し回っていた。
浩介は金魚のブライアンがいなくなっている事を疑問に感じるが、真緒は探し物に夢中で跳ねて飛び出してしまったのかもしれないと気のない様子。
と、浩介は床に結婚指輪が落ちていることに気づき、真緒の探し物が結婚指輪だと知る。
指輪を無くしとは言えなかった真緒に微笑む浩介だったが、指輪がぶかぶかになっている事を知る。
浩介は真緒の体を案じるが、真緒は指輪をネックレスに通して、これで落とさないと笑う。
浩介が真緒と外食をしていると、酔っぱらった女性が浩介に声を掛けてくる。
彼女は今や結婚した潮田(森桃子)だった。
綺麗に成長した真緒に気付かない潮田は真緒の悪口を並び立てるが、浩介は怒りを抑えながら真緒を連れて店を去ろうとする。
浩介は敢えて真緒の名前を口にして潮田を驚かせるが、潮田は真緒に今でも裸でうろついているのかと罵声を浴びせる。
そんな彼女に堪忍袋の緒が切れた浩介は、彼女がどう思おうとも自分にとって真緒は一番大切な女性だとタンカを切り、残された潮田は客や店員たちから冷ややかな目で見られることになってしまった。
翌朝、目を覚ました真緒は大量の髪の毛が抜け落ちていた。
その事に驚いた浩介は、彼女がやせ細っている事もあり、病院へと連れて行って精密検査を受けさせるが、検査結果に異常はみられず、ただの過労ではないかというものだった。
ただ、医師は真緒の失った記憶に何かストレスの原因となるものがあるのかもしれないと浩介に注意を促す。
真緒を案じた浩介は、真緒の養父母に相談を持ちかける。
幸三は真緒を拾った時の事を改めて説明する。
まだ刑事だった幸三が真緒を発見した時、彼女は全裸で道を歩いていた。
既に記憶もなく、名前さえ覚えていなかった彼女に、幸三たちは「真緒」という名前を与え、肉親も見つからないため自分たちの里子にしたのだという。
裸で歩いていたという噂は中学の時に聞いていた浩介だが、詳しい話を教えてもらったことに感謝するものの、原因は判らないままとなった。
月日は流れ、12月のある日、帰宅した浩介は自宅に大きなクリスマスツリーが飾りつけられていてビックリする。
そして真緒は二人で旅行に行こうと誘うが、浩介が有給を取れるのは暫く先になりそうだった。
仕事中、真緒は突然体調不良で倒れてしまう。
驚いた新藤が彼女を自宅へと送り届けようとするが、真緒は実家の方が近いからと江の島へと送ってもらう。彼女の実家は藤沢と聞いており、場所が違うことを疑問に思いながら、江の島へと連れて行った。
辛そうに坂道を去っていく真緒を車から見送る新藤は、彼女の座っていた助手席に古いお守りが落ちていることに気づく。
真緒は大下の下を訪れると、相談を持ちかける。
だが大下は自分の力でもどうすることも出来ない。
こうなる可能性は判ったうえで、選択したはずだと哀しげに語ると、彼女は年を越せないだろうと宣告する。
真緒と公園で休んでいた浩介は、平岩親子と言葉を交わす。
そして自分たちも将来子供が出来て、あんな風になるのだろうかと真緒に語りかける。
真緒を心配して真緒を追いかけたことで、彼女と大下の会話を目撃してしまった新藤は浩介に、自分が真緒に本気で惚れていたことを告げた。
新藤は何処まで彼女の事を知っているのかと訊ね、真緒が落としたお守りを手渡す。
そこには浩介の名前が書かれていたからだ。
小学生の頃、逃げた猫が持って行った筈のお守りをなぜ真緒が所持していたのか。
疑問を抱いた浩介は真緒を問いただすが、真緒は答えようとしない。
そんな時、隣の部屋から悲鳴が聞こえ、ベランダに出た二人はしょう君がベランダから落ちそうになり、母親が必死に支えている姿を目撃する。
浩介は咄嗟に隔て板を破って母親を助けようとする。真緒も何とか手を伸ばして助けようとするが、助けることが出来ない。
そこで真緒は部屋を飛び出すと、一つ下の部屋を空けてもらう。
しょう君を支える母親の腕も限界に達して、ついにしょう君は落下してしまうが、そこに下の階のベランダから飛び出した真緒がしょう君を抱える。そして空中で一回転して地面に見事着地する。
いよいよ真緒に違和感を抱いた浩介だが、真緒は真実を告げようとはしない。
そして翌朝、自宅には朝食の準備が整えられていたが、真緒の姿がどこにも無かった。
浩介は不安を覚えて真緒を探し回るが見つからず、実家に電話しても養父母は真緒を知らずオレオレ詐欺と誤解される。
更に『ララ・オロール』に真緒が在籍したという記録は消え、新藤も真緒の事を忘れてしまい、浩介たちが『ララ・オロール』と仕事をしたという事さえ無くなっていた。
浩介は最期の頼みとして大下の下を訪ねる。
彼女は多くの猫がのんびり過ごす事を望んでいるのに、真緒だけは大好きになった浩介のところへ行きたいと願った事、そして人間としての最後を迎えた彼女はその存在がどんどんと消えて行き、やがて浩介も真緒の事を忘れるだろうと宣言する。
真緒があの日助けた猫だと確信を得た浩介は、真緒を捜して思い出の海岸へと向かうのだった。
・キャスト
奥田浩介:松本潤
奥田浩介(中学時代):北村匠海
奥田浩介(小学校時代):柴崎楽
渡来真緒:上野樹里
渡来真緒(中学時代):葵わかな
大下:夏木マリ
新藤春樹:玉山鉄二
梶尾玲子:とよた真帆
渡来幸三:塩見三省
渡来真由子:木内みどり
奥田翔太:菅田将暉
奥田祥江:西田尚美
平岩:駿河太郎
平岩:安藤玉恵
田中進:大倉孝二
峯岸ゆり:谷村美月
杉原部長:小籔千豊
潮田:森桃子
潮田(中学時代):三浦透子
区役所職員:田中要次
越谷オサム原作の恋愛小説の映画化作品。
ファンタジー要素を盛り込んだベタベタな恋愛映画。
あらすじは記憶のみを頼りに書いてるので、前後入れ替わっているところもあるかと思いますのでご容赦を。
真緒を人間にした謎の老婆・大下や、真緒に片思いをするプチストーカー・新藤は映画のオリジナルキャラクターのようです。
浩介は冴えない青年という設定で、中学時代の北村匠海はまぁ納得なんだけど、松本はちょっとキャスティングとしてはどうなんだろうかという疑問も。
序盤はそれでも冴えない感じを見せるため、ファッションがダサいんだけど、中盤以降は真緒と付き合ってファッションに気を使うようになったという設定だからなのか、それほどでもなくなってしまった。
鉄道マニアという設定も、江ノ電の時に少し語られるぐらいで、無理に入れる必要はなかったような気もする。
真緒は猫だから、編入当初は全く勉強が出来ず、映画の中では明らかになってないが集団生活も苦手だから、よけいにイジメの対象となったらしい。
上野樹里は天然キャラは似合う感じ。
真実かどうかはさておき、ワガママだったり、先輩にもダメだしするとか、扱いづらいため、露出が減ったという噂があるものの、扱いづらい女優と言われている一方で、今回の撮影中に過去の作品の監督が陣中見舞いにやってきたという話もありますね。
何にしても実力があるのもまた確かで、良い意味でも悪い意味でも天才肌なのかもしれない。
そんな彼女の演じる真緒は人間ではなかったわけだけど、真緒に秘密がある、というのは予告の時点から明らかになっていたものの、幽霊か何かと思っていたら、まさかの猫。
真緒=浩介が助けた猫、という設定は結構序盤から感じさせるものの、まさかそこまでファンタジーな設定はないだろうとか思っていたら、ホントに猫だった。
印象的なのは衰弱していく中で、しょう君が痛そうだと心配して、それに痛いことさえ嬉しいと応えた場面かな。
真緒は浩介に会うために人間になって、彼の通う中学へ編入したのに、大学生になって東京へ出てから捜さなかったのかな。
東京は巨大だから捜すのが難しかったのか。大学生の頃なら、色々な大学を訪ね歩くという方法もあるけど、東京の大学=東京と名前の付く大学という発想の子では、どちらにしても見つけるのは不可能か。
そのしょう君はいつもベランダから体を乗り出していて、いつか落ちそうなフラグを立て続けた結果、見事に落下したわけだが。
下の階の住人はあれだけ上で騒いで、外でも騒ぎになってるのに全く気付いてなかったな。彼が早くに気づいていれば、もっと楽に助けられたかもしれないんだが。
後、浩介は威勢よく隔て板を割って飛び込んだわり、やってるのは声を掛けるだけ……もっと上手く助けることが出来たように見えたんだけど。
真緒が救出後はご近所さんが心配するのは子供だけ。普通に考えたら、あそこから飛び降りたら、うまく着地しても骨折する可能性が高いから、真緒の方も心配するはずなんだけど何故かおっちゃんが一瞥しただけ。
新藤は真緒に片思いするモテ男なんだけど、途中で真緒のプチストーカー化。
尾行するのにわざわざ後輩とデートにする必要性があったのだろうか。一人の方が良かったと思うんだが、江の島まで出かけるのに、男一人というのはモテ男としてのプライドが許さなかったのかな。見つかった時とかの事を考慮したんだろうか。
そんな彼も真緒に対する思いは真剣だったのに、あっさりと真緒の事を忘れてしまってましたね。まぁ、両親ですら忘れている時点では仕方ないのかもしれないが。
真緒がいない状態で仕事をしていた事になっているのかと思いきや、『ララ・オロール』との仕事そのものが無かったことになっていたのはびっくりだわ。仕事自体は上司が依頼したものなんだから、真緒がいなくなっても無かった事にする必要のあるものではないように思えたんだが、色々と齟齬が出やすいからかな。
大人になっても中学時代のイジメを引きづってる潮田って人間として器が小さすぎる。
この頃のイジメって、むしろ被害者の方は覚えているけど、加害者の方はあまり罪悪感も無くて過去のものになっているケースが多いんだけどな。
よほど浩介にマーガリンを塗られた事が嫌だったのか。自分がやっている事なのに、やられたら簡単に泣き出すとか首謀者の割にヘタレだし。
つか、浩介のマーガリン事件で教師がわざわざ自宅に来ていたけど、そもそもは真緒にマーガリンを塗ったのは潮田であり、気付いていたかどうかは判らないがイジメを放置している担任に大きな問題があるんじゃ……
少なくとも、この事件でイジメがあったことは発覚している筈なんだし。
しかも二人の会話からすると、その後も二人に対していじめが継続されてるし。
エピローグでは真緒を忘れた両親が猫を飼い始めたという事で、その猫が真緒の生まれ変わりかと思わせたものの、関係なかったらしい。
真緒に似た猫が出てきて、最後にはその猫を抱えて真緒が再び人間になって現れる、というところで物語は終わりましたが、あの真緒がこの世界でどういう存在なのかは不明のまま。
原作では両親が買っている猫が、指輪付のネックレスを付けていて、主人公はその猫に「ブライアンを食べただろう」と語りかける形で終わるらしいです。
オチとしては映画版の方がハッピーエンドという印象ですが、原作版の方は泣ける感じの切ない終わり。原作既読者なら評価は別れるかな。
松潤主演という事で、当然のように観客は大部分が女性。もしくは女性に連れてこられたカップルという感じでした。
個人的評価:65点
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