2026-03-31

映画ビニールハウス を見た

何もかもうまくいかない人生物語、62点。

 

息子が少年院で母は認知症自分ビニールハウス暮らし中流階級の(旦那失明ボケ始めていて、奥さんは完全にボケている)家庭にエッセンシャルワーカーで入っている疲れた天海祐希みたいな顔の主人公ボケ被害妄想を爆発させた奥さん罵倒されながらも出所する息子と暮らす家を借りるため一生懸命生きていたがある日、ひょんなことから浴室でもみあいになり奥さんが死んでしまう。今の生活を守るために主人公は死んだ奥さん自分母親すり替えを決行。悲劇歯車が回り始める。

みたいな話。

 

なんかさぁ、人生上手くいかないにもほどがあるよな。

冒頭、主人公自分の頭を自分でバシバシ叩いているシーンから始まる。たぶん主人公はずっと自分を責めてるんだよね。子供少年院自分に心を開いてくれていないし、認知症母親との関係もよくない。仕事では一生懸命世話してる奥さん自分を殺そうとしていると因縁を付けられ、それを聞いた家族からは責められ、自傷カウンセリンググループに参加してそこの参加者に情けを見せたら依存され付きまとわれ、誠意のかけらもない男と肉体関係を持っている。

そりゃあさぁ、やんなっちゃうよな。

主人公だって根っから悪人ってわけじゃないんだよ。今作で起こる悲劇のすべての発端は奥様の死を隠ぺいしたことなんだけどそのシーンで主人公は震える手でスマホに119を押す。で、通話ボタンを押そうとしたその時に息子から電話がかかってきて「俺、母さんと暮らしたい」と告げられる。少年院では冷たい態度だったのに。

ビニールハウス暮らしで何もかもを切り詰めて自分を殺して仕事をしてきたのは全部息子と暮らすためだったんだよね。人生最大の絶望の瞬間に人生最大の希望が降ってきた。そしてその希望がすべての崩壊を招く。人生ってうまくいかない。

ネタバレしていくとこの奥様入替を行った結果、当然目が見えないながらも旦那さんは違和感を抱きはじめる。でも旦那さんは元教授自身自身の知性に立脚した存在だと思っていて、それが認知症で侵されていくアカギの末期みたいになってて、自分の妻を妻と認識できなくなっているんじゃないかという疑心暗鬼を生んでしまう。そうして自分自分で亡くなる前に死にたいアカギと同じ結論に悩みに悩んでなった結果、旦那さんは奥さん(主人公母親)と心中してしまう。人生ってうまくいかない。

でもこれも、すり替えからこの悩みは発生していて旦那さんは施設に入ろうとしていたけど奥さんには拒否されてそれにも絶望していた。だから、仮にすり替えてなくても旦那さんが本当の奥さん心中してた可能性は高いんだよね。主人公母親が殺される寸前に真実を明かそうとし、声を聴いた旦那さんは「別人だ!妻じゃない!」と叫び、でも結局一緒に死のうと言って殺して自殺してしまう。認知症の進行だと思ったのか、別人だとしても妻と死のうとした自分にとってはもう一緒だと思ったのかはわからないけど、結果は同じだったんだなぁって虚しくなる。

グループセラピー出会った疲れ果てた生駒里奈みたいな、たぶんちょっと発達障害の気がある女の子共依存のような関係を持ちかけられるも当然それを支え切れるわけもなく拒否してしまい、彼女不安定になり付き合っているDV彼氏殺害してしまう。そのDV彼氏は実は主人公と肉体関係を持っている男だった、というのはあまりにできすぎてるので正直いらんかったかな。

そして息子は母親には告げずに出所し、悪友たちと遊ぶ場所を探しているところにたまたま主人公ビニールハウス発見しここいいじゃん!と侵入酒盛りを始める。そこにタンスに隠していた奥さん死体を燃やそうと主人公が戻ってくる。住人が帰ってきた!と息子たちは隠れ、それに気づかず主人公ガソリンをまき、火をつける。

燃え盛るビニールハウス呆然と眺める主人公ビニールハウスが焼け落ちた音とともに映画は終わる。

息子がどうなったかは描かれないし、主人公がどういう結末を迎えるのかも描かれない。旦那さんの心中ビニールハウスへの放火は同時進行で行われるので、主人公自分母親が死んだことも知らないし、さらに同時進行でメンヘラ女は肉体関係を持っていた男を殺害している。

ほぼ同時進行で主人公自分自身決断から周囲の人間をすべてを失ってしまう。人生ってうまくいかない。

 

という悲劇まみれの話なんだけど、意外にカラッとしていて編集が非常によい。

ラスト主人公の顔と焼け落ちるビニールハウスの音で物語バサっと終わる話はしたけど、旦那さんが首つって死ぬところも風呂桶を蹴っ飛ばした瞬間に画面がバサっと切り替わるし、メンヘラ彼氏殺害するところもカッターナイフをクビに突き立てたところで画面がバサッと切り替わる。省略の妙味というか、鬱々としたストーリーなんだけど見せ方は意外と露悪的じゃないのがいい。

ただ個人的には主人公が「貧困」のメタファーじゃないけど大きなテーマ従事するためか「なぜそうなってしまったのか」ということがほぼ全く語られないがちょっと気になったかな。何となく想像することはできるけど、なんでビニールハウス暮らしなのか、何で息子は少年院に入っているのか。そういうところがほぼ伏せられているので、なんか「そういう設定」感がぬぐえなくて、リアリティちょっと薄く感じたのはマイナス

 

まぁそんな感じかな。

韓国貧困と言う実際の重い社会的テーマを下敷きに喜劇的なまでの悲劇をしっかり描かれていたと思うのでおもーい韓国ノワール系の映画社会派映画好きな人にはオススメ

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