国内モバイル3社の2012年度上期の決算が出そろった。今回の決算は、各社が現在直面している競争軸、そして今後の戦略の違いが鮮明に表れた興味深い内容だと感じた。また、9月21日にKDDIとソフトバンクモバイルがLTEサービスを開始したことで、国内の全携帯事業者が“4G”サービスを開始した節目の時期にもなった。

 そこで本記事では、主に各社のサービス戦略面から、今後のモバイル3社の競争のポイントを整理してみたい。

現時点での競争の軸はやはり「iPhoneの有無」、苦戦するドコモ

 まずベースとなる各社の状況を整理しよう。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの上期決算は下記の表の通り。増収増益となったのはソフトバンク。NTTドコモは増収減益、KDDIは減収減益だ。

表●NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2012年度上期決算の主要数値
表●NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの2012年度上期決算の主要数値
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 数字面では、ソフトバンクの営業利益率の高さが際立つ。ドコモの21%を超えて25%に達している。昨年同社は、KDDIとのiPhone 4Sの顧客争奪戦にて約300億円という販促費を費やしたが、「iPhone 5では大きな費用を持ちださなくてもいけるという読みがあり、無茶はしなかった」(ソフトバンクの孫正義社長、関連記事)。このような事情も営業利益を押し上げる要因になったと考えられる。

 iPhone 5と共に開始したLTEサービスでは、パケット定額料を実質値上げしているため、この点も追い風に働くだろう。第2四半期における契約件数の純増数は75万件と勢いは落ちていない。孫社長は、通期の営業利益が7000億円以上、2016年度の営業利益は国内だけでも1兆円を超えると改めて強調した。

 KDDIは上期トータルで減収減益になったものの、実は第1四半期の旧800MHz帯の再編や3M戦略の先行投資の影響が大きかった。第2四半期単独で見ると増収増益に転換している(関連記事)。KDDIの田中孝司社長は「auのモメンタムは完全に回復した」と宣言。第2四半期の解約率は0.65%と業界最低水準になり、9月の番号ポータビリティー(MNP)純増数は9万5300件で、ソフトバンクモバイルの1200件、NTTドコモの-9万5200件と比べて圧勝という結果だった(関連記事)。主要数値を見ると、データARPUが前年同期比310円増となり、他社と比べて大きく伸びている点が目立つ。スマートフォンへのシフトが遅れたことが、今になってプラスに働いていることが分かる。