インターネット検索大手の米Googleは,米Microsoftが仕掛けている446億ドル規模の米Yahoo!株式の公開買い付けに対する舌戦を激化させ,Microsoftの歴史を振り返れば,Yahoo!買収は「インターネットのためにならない」ことが分かると指摘した。Google会長兼CEOのEric Schmidt氏はMicrosoftのYahoo!買収を声高に批判しており,2008年3月17日に中国で行われた記者会見の席上,懸念を表明したのだ。
「Microsoftがどのような形でYahoo!を買収するにせよ,心配であることは変わらない。MicrosoftとYahoo!のあらゆる行動が一貫してインターネットのオープン化につながればよいのだが,そうならない可能性がある」(Schmidt氏)。
Schmidt氏が中国でインターネットのオープン化に触れる羽目になったとは,奇妙なことだ。皮肉にも,この記者会見とタイミングを合わせたように中国政府は,チベットで起きた反中国暴動のビデオがインターネットで流された週末,Googleのビデオ共有サービス「YouTube」とニュース・サイト「Google News」に対するアクセスを遮断した。Schmidt氏が中国政府のこうした行動を,MicrosoftのYahoo!買収と同じく「インターネットのためにならない」と判断するかどうかは不明だ。ちなみに中国政府は,海外メディアのチベット立ち入りを禁止している。当然だが,現地メディアは政府の管理下にある。
ただし,Schmidt氏がMicrosoftを批判する一方で中国政府の検閲に沈黙する行動は,筋が通っていて矛盾などない。どちらの行動も,Googleの事業にメリットがあるという分かりやすい理由から生じている。Googleにとって残念なのは,中国のインターネット・ユーザー数が米国を上回ったにもかかわらず,いまだ中国への投資を回収できていないことだ。スイスCredit Suisseの推計によると,Googleが2007年に中国で得た収入は7100万ドルに過ぎず,総売上高の1%にも満たなかったという(関連記事:GoogleのQ4決算,大幅増収増益だがアナリスト予測を下回る)。