2008年2月8日にパーツショップに登場した「AMD 780Gチップセット」搭載のマザーボード。AMD 780GはAMD製CPU向けのグラフィックス機能内蔵モデルで、DirectX 10対応や強力な動画再生支援機能を備えるなど、この春の自作PC市場での注目製品の一つだ。日経WinPCでは、AMD 780Gチップセット搭載マザーボードを入手し検証した(関連記事)。今回は、その追加情報として、AMDの新型クアッドコアCPU「Phenom 9000シリーズ」を使った、グラフィックス処理性能の結果をお伝えする。
テストに使用したパーツは以下の通りだ。前回のテストと同じく、比較用に前世代のグラフィックス内蔵チップセット「AMD 690G」搭載ボードを用意している。
【CPU】Athlon 64 X2 5000+ Black Edition(2.6GHz、定格動作)、同6000+(3GHz)、Phenom 9500(2.2GHz)
【マザーボード】M2A-VM HDMI(ASUSTeK Computer、AMD 690G搭載)、TA780G M2+(BIOSTAR、AMD 780G搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】Barracuda 7200.10 320GB(Seagate Technology)
【グラフィックスボード】Radeon HD 3450搭載ボード(Sapphire Technology、メモリー256MB)
【OS】Windows Vista Ultimate 32ビット日本語版
AMD 780G搭載マザーボードのデバイスドライバーは、付属CD-ROMからインストールした。グラフィックスドライバーのバージョンは8.451.0.0。テストに使用したのは、Futuremarkのベンチマークソフト「3DMark06」だ。3DMark06では、ゲームにおける3D画像描画性能を調べられる。前回のテストと同じく、デスクトップ解像度は1280×1024ドット、その他の設定は標準のままだ。
Phenomで描画処理が高速化
グラフ1は、AMD 690G搭載マザーボードとAMD 780G搭載製品それぞれで、Athlon 64 X2 5000+、同6000+とPhenom 9500を取り付けて描画性能を測った結果だ。グラフは、AMD 780G+Athlon 64 X2 5000+の値を100%としたときの相対値になっている。参考として、AMD 780Gのマザーボードに、グラフィックスチップ「Radeon HD 3450」を搭載したボードを取り付けて測定した結果も掲載した。Radeon HD 3450搭載ボードは実勢価格が5000~6000円の、最新モデルとしては最低価格帯にある低価格機向け製品だ。
グラフのうち、「CPU Score」はCPU性能の影響が極めて大きく、デュアルコアのAthlon 64 X2に対し、クアッドのPhenomが1.5倍以上のスコアになるのは不思議ではない。また「3DMark06 Score」(総合スコア)はCPU Scoreも反映されるため、描画処理が全く同じでもCPU性能が向上すると値が高くなる。
描画処理である「SM2.0 Score」「HDR/SM3.0 Score」は、グラフィックス機能の性能が大きく影響する。チップなら内部の作り(アーキテクチャー)や動作周波数で違いが出る。チップセット内蔵のグラフィックス機能なら、機能そのものの違いだけでなく、メインメモリーの速度(内蔵グラフィックスはメインメモリーの一部をグラフィックスメモリーとして利用する)やCPUの処理性能にも影響を受ける。
AMD 690G搭載マザーボードでは、Athlon 64 X2 5000+からPhenom 9500に変えても変化は少ない。描画処理(SM2.0 Score)のスコアは上がるものの、劇的ではない。AMD 780Gにおいて、CPUを5000+から6000+に変えたときも似たようなものだ。CPU Scoreこそ伸びるものの、描画性能はほぼ同じだ。また、描画を単体のグラフィックスチップで処理する、Radeon HD 3450搭載ボード使用時のスコア(SM2.0 Score、HDR/SM3.0 Score)は、Athlon 64 X2 5000+とPhenom 9500の間に大きな違いはない。
ところが、AMD 780Gのグラフィックス機能は、Phenom 9500と組み合わせるとAthlon 64 X2 5000+使用時の2倍以上の処理性能を示す。今どきのグラフィックス機能の絶対的な性能としてはまだ低く、ようやくRadeon HD 3450に届くかどうかといったところだが、この変化は劇的だ。念のため、Phenomでテストした後に再びAthlon 64 X2 5000+に戻してテストし直したが、結果は同じだった。
メモリー構成、HyperTransportの影響は少ない
何が影響しているのかを探るために、BIOSでいくつか設定を変更して測定した。その結果がグラフ2だ。上の3ブロックのグラフはメモリーコントローラーの設定を変えてある。「Unganged」は、Phenomが搭載している2個の64ビット幅のメモリーコントローラーを独立して動かすモード。理屈の上では、細かなデータを連続して転送するときに無駄が少ないはずだ。グラフは、この結果を100%とした相対値で表している。
「Ganged」は、従来のCPUで言うところの、いわゆるデュアルチャンネルメモリーモード。128ビット幅でアクセスする。「シングルチャンネル」は、今回はUngangedモードの状態で「バンクインターリーブ」という機能を無効にして実現した。この中では転送速度が一番低くなる。グラフ中の最後の1ブロックは、CPUとチップセットを結ぶHyperTransportリンクを、Athlon 64 X2シリーズと同じ2GHz(実動作周波数1GHzのDDR)で動かした状態の結果だ。本来ならPhenomは3.6GHz(1.8GHzのDDR)で動作する。
さすがにシングルチャンネルでは性能を落としているが、そのほかの構成では性能はほとんど同じだ。シングルチャンネルでもHyperTransport 2GHzを試したが(グラフは未掲載)、さらに落ち込むようなことはなかった。少なくともこのテスト環境においては、メモリー構成もHyperTransportの速度もPhenomで性能が伸びた大きな要因ではないことが分かる。もちろん、BIOSの設定通りにハードウエアが動いていない(設定が反映されない)可能性もあるのだが、「CPU-Z」などの情報表示ユーティリティーで確認できる範囲では問題なさそうだった。BIOSに設定項目がなかったことから、この性能向上がコア数が多いことによるものか、Phenomで新たに設けられた2MBの3次キャッシュが効いているのかまでは、今回のテストでは突き止められなかった。
■変更履歴 当初掲載したグラフでは、「AMD 780G(Athlon 64 X2 5000+)Radeon HD 3450使用」のスコアの値が間違っておりました(相対値とグラフの長さは正確でした)。お詫びして訂正いたします。現在は正しいスコアのグラフを掲載しています。[2008/02/14 15:55] |