松下電器産業が2006年11月13日に発表した電力線通信(PLC;power line communication)向けのアダプター「BL-PA100シリーズ」。発売は12月9日とまだ先だが、その実力を検証すべく、いち早く評価機を入手した。最も気になる実環境でのスピードはどれほどか? 筆者の自宅に持ち込んで実験した、最新のテスト結果と使用感をご報告する。
まずは、PLCについておさらいしておこう。PLCとは、自宅の壁裏に張り巡らせてある電力線を家庭内LANのインフラとして活用してしまう新技術。通信させたい2カ所以上のコンセントに専用アダプターの電源コードを差し込むことで、電力線がLANケーブルのように働く。アダプター間を電力線でつないだ通信回線が家庭内に出現するわけだ。つまり、一般的な家庭なら新しい配線が不要ということが大きなメリットになる。アダプターにはLAN端子が備わっているので、ここにパソコンなどをLANケーブルでつないで使う。
1LDKのマンションで実効速度を測定
さて、実際のテストは築後3年を経たマンションの1室(1LDK)で実施した。東側の部屋にあるコンセントに1台のPLCアダプターを接続、西側の部屋のコンセントにもう1台のPLCアダプターを接続。両コンセント間の距離は直線にして約20mである。それぞれのコンセントは別系統の電力線につながっているため、配電盤を経由して折り返して通信する格好になる。実験は、条件を変えて3回ずつ実施。各PLCアダプターのLAN端子にノートパソコンを直結し、1台からもう1台のパソコンへ100MBのファイルを転送するのにかかった時間を測定。その平均値から実効速度を求める。
この実験に先立ち、PLCアダプターが持つ最大能力を測ってみた。電源タップを一つ用意し、ここに2台のPLCアダプターを接続するという好条件である。結果は、31.2Mbps。松下電器産業によると、PLCの理論上の最大速度は190Mbpsで、実環境で期待できるのは最大55Mbps(TCP接続時)だという。残念ながら、うたい文句には大幅に届かない結果だった。
実際に電力線にPLCアダプターを接続した結果は、東側の部屋から西側の部屋へファイル転送した場合で30.8Mbps。電力線が介在しても、PLCアダプターは最大能力を発揮できている。2台とも東側の部屋のコンセントに接続し、コンセント内で折り返し通信させてみたが、この場合も31.2Mbpsで転送できた。
PLCアダプターはノイズの影響を受けやすい
実験はこれだけでは終わらない。電力線にはそもそも常に電力が流れ続けており、電灯や電気製品の使い方次第でその状態は刻々と変わる。となれば、PLCアダプター間の通信は、電力線の状態に左右される可能性が大きい。つまり、電灯や電気製品を使うとノイズが電力線に混入し、これが実効速度低下の要因になるはず。そこで、PLCアダプターの接続の仕方を変えたり電気製品を別のコンセントに挿すなどし、ノイズの及ぼす影響を検証した。