今回は、台湾からイベントの報告を2つお届けします。1つ目は、「COSCUP 2011 in Taipei」。台湾における最大のオープンソースソフトウエア系イベントです。2日間にわたり、4トラックで約60セッションを開催。BoF(Birds of a Feather)やLT(Lightning Talk)もあり、台湾最大の名にふさわしい内容となっています(写真1)。
セッションは、「Device Tree on ARM」などの組み込み系、「HTML5」などのWeb系、「Titanium Mobile」やAndroidなどのモバイル系と一通り、最新かつ話題のセッションが開かれました。
筆者が注目したセッションの1つは「A virtual storage appliance based on GlusterFS and OpenStack」。オープンソースの分散ファイルシステム「GlusterFS」と、まだ地雷だらけと言われるクラウド基盤ソフト「OpenStack」で仮想ストレージアプライアンスを作る内容です。OpenStackをうまく利用したソリューションで、台湾にもソフトウエア技術者が育ってきているなと感じられました。
セッションの雰囲気は、日本のイベントに近く、参加者はまじめに聞いていました。こういう雰囲気は世界的に見ても珍しいモノです。一般的には、地理的に離れた場所から集まるため、互いのコミュニケーションが重視されることが多いのです。セッションそっちのけで会話しています。台湾は日本に近い島国で、開発者が顔を合わせやすい環境にあるため、似た雰囲気なのでしょう。
日本のイベントとの最大の違いは、海外からの招待セッションが多い点です。4分の1程度が海外の講演者となっています。講演者向けに台湾観光ツアーまで予定されているほどです。
理由の1つは「まだ、台湾内でソフトウエア系のエース級人材が育っていない」こと。ハードウエア系は、ASUSTeK Computer社をはじめマザーボード事業などを通して育っていますが、ソフトウエア系は発展途上。実は他のイベントでもほとんど同じメンバーが講演しているのです。
加えて、島国で国内消費や経済が期待できないため「最初から海外思考」という理由もあります。米Intel社のマザーボード事業から生まれたASUSTeK Computer社や米Microsoft社のWindows Mobile事業から生まれたHTC社など、うまく外部の血を取り入れて世界と戦ってきた経緯があり、イベントにもそれが表れているわけです。
続いて、もう1つのすばらしいイベント、台湾版コミックマーケット(コミケ)を紹介しましょう。アニメ、マンガ、小説、ゲームなどの世界を用いた同人誌即売会で、台湾では「Fancy Frontier(FF)」と呼ばれています(写真2)。台湾では、日本のコンテンツが大人気で、テレビには日本のアニメ専用チャンネルがあり、書店では日本のマンガが売られています。翻訳本のタイムラグは1カ月未満という早さです。
参加サークル1000個、参加者数6万人と日本のコミケに比べれば、小規模ですが、パワーは変わりありません。各サークルのブースには渾身の同人漫画からお手製ぬいぐるみ、フィギュア、ステッカーなどの造形物まで用意されています。
唯一日本と違うのが、台湾大学で開催されている点。台湾大学は台湾の最高学府で、日本統治時代は帝大の1つだったところです。このFFも、COSCUPと同じ構図で、アニメやマンガなどのコンテンツ(ソフトウエア)作成能力はまだ発展途上にあるが、積極的に海外の血を取り入れて発展していこうとしています。