ブレーン・ストーミングとの組み合わせでマインドマップを利用することも推奨したい。マインドマップは非常に有効なビジネスツールとして,最近特に注目を集めている。実際に利用している読者も多いと思う。簡単に説明すると,紙(ソフトウエア利用の場合は画面)の真ん中に「セントラル・イメージ」と呼ばれるキーワードやイラストを置き,そのセントラル・イメージから放射状にキーワードやイメージを連想してつなげていく,というのが基本的な作り方だ。
この放射状に伸ばしていく最初の枝を「メインブランチ」と呼ぶ。メインブランチからどんどん伸びていく枝を「サブブランチ」という。セントラル・イメージからメインブランチ,サブブランチと放射状に枝(=発想)が伸びることで,完成形は脳のシナプスのような形態となる(図5)。
このシナプスのような放射状形態が通常の個条書きよりも関連性を捉えやすいといわれている。マインドマップに関する詳細に関しては,インターネットなどで調べるか,書籍なども多数販売されているので,そちらを参照いただきたい。また筆者の経験からいうと,マインドマップをきちんとマスターするのであれば,自己流ではなくセミナーを受講することをお薦めする。マインドマップにはいくつか細かなルールがあり,自己流だとついそれらを無視してしまうことがあるからだ。なぜそれらのルールがあるのかをきちんと理解しておくと,後々の活用の「伸びしろ」が違ってくる。
ブレーン・ストーミングの問題点整理に活用
話を戻すと,筆者はこのマインドマップをブレーン・ストーミングの問題点整理の段階で活用している。先にブレーン・ストーミングの手法の一つとしてKJ法を紹介したが,このKJ法と組み合わせて使うことで,エンドユーザーの現行システムへの不満や新システムへの期待の取りまとめに大きく役立つのである。
KJ法はバランスド・スコア・カード(BSC)でも利用されることが多い。重要成功要因(CSF)を洗い出す時に使われる。ブレーン・ストーミング参加者から多数の意見を出してもらい,それらをKJ法で整理していく。通常,最初の意見は現象としての問題点であることが多い。それを真に解決すべき問題点や成功するために必須の要因などに集約していく過程で,KJ法は非常に有効な方法である。
しかし,ユーザー要望の洗い出しでは,あまり整理し過ぎて問題点を抽象化してしまっては意味がない。むしろ,それぞれのユーザー要求が明確になるよう,具体化する作業が必要となってくる。つまり,BSCでCSFを洗い出すときのやり方と途中までは同じだが,ある時点からは,むしろ逆の作業となるのだ。その具体化の段階でマインドマップを利用するのである。
以下に手順を簡単に説明する。
(1)付せん紙を使って参加者に自由に思いついたユーザー要望を書いてもらう。
(2)セッション・リーダーがKJ法のルールに従って,付せん紙に書かれたユーザー要望を整理し,要求の種類に分類してグループ化を行う(図6,ここまではKJ法のやり方)。
(3)グループの名称をメインブランチとして,マインドマップを書く。
(4)各グループに分類された個々のユーザー要望をサブブランチとして書いていく。そのとき,関連する内容や親子関係,兄弟関係になるようなユーザー要望があれば,サブブランチで分岐したり,連続させたりして整理していく。
(5)ある程度整理されたマインドマップを基に再度ブレーン・ストーミング参加者と検討を行い,整理の仕方が正しいか確認する。マインドマップを見ることで,漏れていた問題点に気がついたり,新たな発想が生まれることがあるので,それらを付け加えていく(図7)。
(6)マインドマップのメインブランチを大項目,その下のサブブランチを中項目,それ以下のブランチを小項目として,表形式に転記する(図8)。
(7)小項目のキーワードを文章化して,ユーザー要望を他者が読んでも理解できる状態に具体化する。必ずエンドユーザーのレビューを受けること。可能であればエンドユーザー自身に文書化してもらうとなおよい。
(8)小項目の文章化が完了した状態が,個々のユーザー要望がまとまった状態である。