ベトナムが,政府のITシステムへのオープンソース・ソフトウエア(OSS)採用を推し進めている。そして,そのOSS調達ポリシーの作成は,日本政府の支援事業により行われた。

IT関連部門のサーバーを100%Linuxに

ハノイで2009年2月20日に行われたOSSワークショップで講演するベトナム情報通信省副大臣
ハノイで2009年2月20日に行われたOSSワークショップで講演するベトナム情報通信省副大臣
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ハノイで2009年2月20日に行われたOSSワークショップの模様
ハノイで2009年2月20日に行われたOSSワークショップの模様
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ベトナムにおけるLinuxのマスコットとなっている,民族衣装の笠をかぶったペンギン
ベトナムにおけるLinuxのマスコットとなっている,民族衣装の笠をかぶったペンギン
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 2008年12月,ベトナム情報通信省(MIC)は,政府機関にオープンソース・ソフトウエアの採用を義務付ける行政管理規定を発効した。その内容は(1)2009年9月30日までに政府のIT関連部門のサーバーを100%Linuxで運用することを義務付ける,(2)2009年末までに70%の政府機関でOSS推奨リストに記載されているFirefoxやOpenOffice.orgなどのOSSの使用を義務付ける,(3)これに伴いIT部門スタッフ全員がトレーニングを受けることを義務付ける,(4)少なくとも50%以上の職員は,OSS推奨リストに記載されているOSSに精通しなければならない,(5)2010年12月31日までに政府機関すべてのスタッフは,業務でOSSを利用しなければならない。

 ベトナムは,以前からオープンソース・ソフトウエアの活用に取り組んでいた。ただ従来オープンソース・ソフトウエアの活用を主導していたのはベトナムの科学技術省だった。今回は情報通信省が主導することで,政府機関や地方自治体へOSSの採用を義務付けるところに踏み込んだ。

OSS調達ポリシーを法律として公布へ

 さらに,ベトナム政府ではオープンソース・ソフトウエアの調達ポリシーを法律として交付する予定だ。ポリシーの草稿には,(1)オープンスタンダードを採用したシステムを調達することとし,プロプライエタリ・ソフトウエアと同条件であればOSSを優遇する,(2)既存システムは,次期システムの調達時にオープンスタンダードに従ったシステムに移行する,(3)公的資金によって開発したITシステムに関して,可能であればソースコードに関するすべての権利を取得する,(4)ITシステムの調達や研究開発プロジェクトの実施を通じて,オープンスタンダードに乗っ取ったソフトウエアのベトナム語化を進め,マニュアルなど関連文書もベトナム語で用意するよう努力する,といった方針がうたわれている。

 2009年2月20日には,ベトナム情報通信省などが主催するOSSポリシーのワークショップが開催されている。各省庁や地方自治体のIT局長クラス以上の権限者約150名が参加した。ワークショップ参加者のアンケートでは,92%がOSSポリシーを受け入れ,また74%がOSSポリシーが必要であると認識したと答えたという。

 ベトナム政府がオープンソース・ソフトウエアの採用を進める最大の理由は違法コピー対策だ。ベトナムに限らず多くの新興国は違法コピー・ソフトウエアのまん延という問題を抱えている。すべての違法コピーに対し先進国の物価水準に基づいたソフトウエアのライセンス料を支払うことはできない。高いITコストはデジタル・ディバイドによる情報格差を生む。自由に配布できるオープンソース・ソフトウエアは違法コピーに対する解決策になる可能性がある。

 自国のIT産業を育成する上でも,自由に改変できないクローズドなソフトウエアは,産業と人材の育成にあたっての障壁になる恐れもある。ソースコードが開示されていないソフトウエアを使用することに対する安全保障上の懸念もある。