携帯電話事業者が端末に搭載する必要機能決定し,この意を受けたメーカーがその機能を実装した製品を開発/製造する──。日本の携帯電話は長い間,この“しきたり”に従って作られてきた。
2008年以降,この鎖国状態を打ち破る“黒船”が次々と日本に襲来する。米国のインターネット・サービス大手が開発した端末が日本へ上陸するのだ。
先陣を切るのは,ネットとデバイスの融合を進める米アップルだ。2007年7月に米国で投入した「iPhone」を引っさげ日本に殴り込みをかける。
iPhoneはiPodで培った音楽再生端末としての機能に加えて,全面タッチスクリーンによる斬新な操作性とデザインで,ユーザーの心を一気につかみ,2008年1月15日時点で出荷台数は400万台を超えた。既に米国のほか,英国,フランス,ドイツなどで投入されているが,2008年前半にも日本の携帯電話事業者の端末として登場すると見られている。
グーグルが携帯電話開発を支援
続いてやって来るのが,ネット・サービスの王者,米グーグルだ。2007年11月に発表された携帯電話開発プラットフォーム「Android」を武器に,携帯電話での支配権も狙う。グーグルの計画通りに進めば,2008年後半にはAndroid搭載の携帯電話が登場してくる。
Androidが特徴的なのは,グーグル自体は携帯電話を作らないこと。携帯電話の開発に必要なOS,ミドルウエア,開発ツール,サンプル・プログラムなどソフトウエアだけを提供する。これを無償で公開することで,Android搭載の携帯電話が様々なメーカーから登場するのを促していく。
グーグルとしては,「Androidの端末が広がり,これを使ったインターネットへのアクセスが増えれば,結果として広告などの収入が入る」(モバイルプラットフォームのアンディ・ルービン ディレクタ)という期待がある。
狙うはPCのような携帯電話
iPhoneとAndroidは,市場へのアプローチは異なるが,携帯電話をソフトウエアが自由に動作するプラットフォームと位置付けている点が共通だ。ユーザーはパソコンのようにアプリケーションを自由にインストールして,自分好みの端末に仕立て上げられる(図1)。
図1●将来の携帯電話の姿 今後の携帯電話は,携帯電話とパソコンを融合した世界を目指して発展していく。 [画像のクリックで拡大表示] |
アップルはソフトウエアの開発を促進するため,2008年2月からサードパーティに対してソフトウエア開発キットを提供する。ソフトウエア開発者はこれを使ってiPhone上で動作するソフトウエアを記述する格好だ。
■編集部注 記事執筆時点では,アップルは2008年2月にSDKを発表するとしていた。結局,3月6日に発表した[関連情報] |
作成されたソフトは,アップルのコマース・サイト「iTunes Store」を通じてオンラインで流通させると見られる。アプリケーション販売の道を用意することで開発者のインセンティブを引き出すわけだ。
グーグルの取るスタンスはもっと開放的だ。個人や企業問わずにソフトウエア開発プラットフォームを公開することで,誰でも携帯電話用のプログラム開発を可能にする。これを後押しするため,グーグルはAndroidで動作する優秀なアプリケーションに対して,総額1000万ドル(約11億円)を支払うコンテストを実施している。
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