科学は、世の中の現象を理解したり、問題を解決したりするための道具にすぎない。そんな“常識”に、京都大学大学院総合生存学館(思修館)の山口栄一教授は疑問を呈す。科学を道具扱いしているうちは、日本の科学リテラシーはいつまで経っても上がらず、福島原発事故のような重大事故が繰り返される、と。
科学は、道具ではない。文学や哲学と同様、自分を高めるために学ぶのである。ニュートンやアインシュタインといった偉大な科学者たちも、鬱屈した精神の中で悟りを求めていたからこそ、大きな発見を成し遂げた。我々に求められているのは、結果として得られた法則や定理だけをなぞるのではなく、そこに至るまでの壮絶なプロセス、すなわち「科学者の魂」に触れること。それによって、初めて社会全体に科学リテラシーが根付くのだ。「科学者の魂」を探す旅が始まる。