NTT東西が公衆交換電話網からIP網に移行した後も、電話機から加入者線、NTT局側のメタル収容装置までの通信はこれまでと変わらない。IPに切り替わるのは、NTT東西がIP網の入り口に設置する「変換装置」からだ。
呼制御信号をサーバー経由で伝送
変換装置はVoIP(Voice over Internet Protocol)ゲートウエイの役割を果たしている。ここでのVoIPゲートウエイとは、電話で必要な2種類の信号をIP網で運べる形式に変換する機器のことだ。
変換する信号の1つは「呼制御信号」である。電話の発信から切断までの一連の流れを「呼」といい、これを制御する信号を指す。もう1つは、通話の音声を運ぶための「音声信号」だ。
IP網へ移行した後の固定電話サービスである「メタルIP電話」の利用者が、光ファイバー回線向けのIP電話サービス「ひかり電話」の利用者に電話をかける場合の流れを見てみよう。
メタルIP電話で電話をかける人が電話番号を入力すると、電話機から呼制御信号がNTT局のメタル収容装置に流れる。メタル収容装置がこの信号を変換装置に転送する。
変換装置は呼制御信号を受け取ると、この信号をSIPサーバーが処理できるIPパケットに変換する。続いてSIPサーバーに、変換したIPパケットを宛先まで届けるように要求する。
SIPサーバーは要求に応じ、「収容ルーター」などを経由して宛先のひかり電話用ゲートウエイにIPパケットを送信する。ひかり電話用ゲートウエイはこのIPパケットを回線交換方式の呼制御信号に戻し、着信側の電話機を届ける。このやりとりによって着信側の電話機で着信音が鳴る。
音声信号のIPパケットは直接送信
相手が受話器を取って通話が始まると、今度は音声信号がネットワークを流れる。この音声信号も変換装置がIP網で伝送できる形式に変換する。具体的には、G.711という音声符号化方式でデジタル化した音声信号をIPパケットにして送信する。
音声信号のIPパケットはSIPサーバーを経由せず、変換装置とひかり電話用ゲートウエイが直接やりとりする。パケットを受け取ったひかり電話用ゲートウエイは、元の音声信号に戻して電話機に送る。