中国のODM/OEM企業を使えば誰でも「ものづくり」ができる、そんな風に考えていないだろうか。もちろんそれは真実ではない。今回は中国とトルコの工場でものづくりを経験したトーモの東智美代表の経験と感想をお届けする。文化が異なる国で感じた恐怖とは?(日経 xTECH編集部)
こんにちは。東智美です。第3回は、中国とトルコ、国によるものづくりの違いについてお話します。内容はすべて体験談なので、一般論から外れている部分もあるかもしれません。
「こっちのほうがいい」と勝手にデザインをダサく変える中国
中国のOEM/ODM工場を使ったものづくりの強みは、世界の工場として蓄積されたものづくりのノウハウや、必要な材料がほぼ中国内でまかなえることによる開発のスピードです。しかし、ネックになるのは「デザイン力」。いまは劇的に改善されていますが、今から6~7年前、父の会社でモバイル・バッテリーの「cheero(チーロ)」を起ち上げた頃は、デザイン通りのサンプルを作ってもらうことすらずいぶん苦労する状況でした。
強く記憶に残っているのは当時、モバイル・バッテリーを入れる小さな巾着を作ったときの顛末です。シンプルな黒い巾着にロゴマークをプリントした、ちょっとおしゃれな巾着を付属品として作るという企画でした。図面を起こし、工場にそのデータを渡したのですが、1週間ほどで送られてきたサンプルは、似ても似つかない真っ赤な起毛素材のジッパー付きポーチでした。
何ひとつ指示内容が反映されているところがない、巾着ですらないポーチに笑ってしまったのですが、中国の工場に問い合わせたところ「こっちのほうが、高級感があっていいと思う」という回答が返ってきたのです……。