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 「異能」ともいえる際立った能力や実績を持ち、まわりから一目置かれるエンジニアを1カ月に一人ずつ取り上げ、インタビューを掲載する。今月取り上げるのは、テスト駆動開発(TDD)の日本での第一人者として知られる和田卓人氏。JavaScriptのテストフレームワーク「power-assert」の作者でもある。最終回である今回は、power-assertの開発やテストに対する考え方などを聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経 xTECH/日経NETWORK

前回から続く)

 自社製品を開発しようとワークフローエディターを自作して得たJavaScriptのスキルセットは、ぼくの大きな財産になりました。ワークフローエディターはかなり複雑なソフトウエアなので、テストコードなしでは開発は困難です。そこでJavaScriptのテストについてもいろいろ調べてみました。しかし、JavaScriptのテストの仕組みは当時はまだ全然発達しておらず、ほぼ手探り状態でした。

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 2011年にはJavaScriptのテストの講演を始めており、JavaScriptのコミュニティにも出入りするようになっていました。2011年3月には「Shibuya.js」というJavaScriptのイベントに呼んでもらい、「jsテスト放浪記」というタイトルでJavaScriptのテストについての講演をしています。

 JavaScriptのテストの仕組みにはスタンダードがなかったので、当時はいろいろ試していました。ワークフローエディターを作っていた頃は、jQuery(注:JavaScriptをシンプルに記述できるようにするライブラリ)のテストの仕組みを使っていました。後にQUnitと呼ばれるようになるものです。

 そのうちJavaScriptのテストの知見がたまってきて、JavaScript業界でのアウトプットが増え始めました。それまでぼくのキャリアの中心になっていたJavaやRubyに比べ、JavaScriptはテストの文化やテストの書き方を含め、テストに対する取り組みはかなり遅れていました。裏返すと、ぼく自身が影響力を発揮する余地があったのです。