2024年6月に始まった所得税・住民税の定額減税を巡り、複数の政令指定都市の事務処理で相次いで誤りが判明している。堺市は約2200人、川崎市は9927人、さいたま市は4343人に誤った税額などを記載した納税通知書を発送していた。
3市はいずれも税務情報システムに富士通Japanの「MICJET税務情報」を利用している。堺市では2024年6月6日に住民からの問い合わせで誤記載が発覚し、13日に公表した。堺市の誤記載の発覚を受けて、同じシステムを利用している川崎市やさいたま市でも誤りが発覚した格好だ。
富士通はMICJET税務情報を導入している具体的な自治体数について「回答を控える」として明らかにしていない。「導入している自治体へ個別に連絡をしている」(富士通)という。
3市とも公的年金からの特別徴収が発生する場合を対象に、納税通知書の税額などに記載の誤りがあった。ただし詳細な内容を見ると、堺市とさいたま市は同じ内容の誤記載だったが、川崎市は誤記載の内容に違いがあった。「バージョンが異なったり、カスタマイズをしていたりするために、同じパッケージを利用している全ての市で同じ現象が発生するわけではない模様だ」と川崎市の担当者は話す。
堺市は住民からの通知で発覚
堺市が納税通知書の誤りに気付いたきっかけは、6月6日に市民から受けた数件の問い合わせだった。堺市が確認したところ、公的年金からの仮特別徴収が発生する場合に、定額減税の適用対象ではない人に定額減税分を誤って上乗せして表記するなどしていた。対象者は約2200人だった。
堺市は納税通知書を2024年6月4~5日に発送していた。市民からの問い合わせを受けて、6月7~10日にかけて富士通Japanに対して誤りの原因究明と影響範囲の調査を依頼し、その結果を6月13日に公表した。
政府・与党は2023年12月に2024年度の税制改正大綱をまとめた。これにより定額減税の方向性が固まった。それを受けて堺市は2024年1月中旬に、富士通Japanとの間で税制改正の仕様について協議したという。
定額減税の法改正に対応するためのプログラムは2月以降順次提供を受け、堺市側でのユーザー受け入れテストも翌3月頃から順次進めていった。
一方で富士通Japanからは「定額減税をはじめ、2024年度の税制改正内容を網羅したシステム対応は困難である」と事前に告げられていたという。そこで堺市は手作業での処理も含めて、定額減税などへ対応できるように準備を進めていた。
定額減税に向けたシステムの改修では、富士通Japanから提示のあったテストパターンに加えて、堺市の職員が独自に約20件のテストパターンを用意。職員による手計算とも照合しながら検証していたという。しかし「今回の事象を想定したケースは、いずれのテスト対象にも含まれていなかった」(堺市財政局税務部税務運営課の担当者)。